法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表 -5ページ目

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 建物譲渡特約付借地の契約があります。
  契約期間中に,建物+借地権,が,第三者に売却されました。
  地主と新たな建物所有者,はどんな関係になるのでしょうか。


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A 建物譲渡について地主名義での仮登記がなされていない場合は,
  第三者が「普通借地」を持つ状態となってしまいます。


【建物譲渡特約付借地;期間中の建物売買→対抗関係】
Q建物譲渡特約付借地の契約があります。
契約期間中に,建物+借地権,が,第三者に売却されました。
地主と新たな建物所有者,はどんな関係になるのでしょうか。

A建物譲渡について地主名義での仮登記がなされていない場合は,第三者が「普通借地」を持つ状態となってしまいます。

建物譲渡特約付借地の契約締結当初から,建物について地主への譲渡の仮登記を行っているかいないかで,大きく結論が変わります。

1 地主への建物譲渡仮登記未了の場合
「第三者への建物+借地権の譲渡」が優先,「地主への建物譲渡」は劣後,となります(民法177条)。
ここで「第三者への借地権譲渡」については,建物譲渡特約なしのノーマル状態,となります。
この特約は契約締結をした当事者間の合意→原則的には第三者へは影響しない,という,合意の原則論が理由です。
そうすると,普通借地,つまり,法定更新の適用のある,半永久的な借地という扱いになります。
ただし,このような前提から,逆に「借地権譲渡を承諾しない」という地主の対抗策が有効です。
地主が借地権譲渡に承諾しない場合,代わりに裁判所が許可を出す,という制度があります。
この代諾許可の裁判でも,裁判所は「賃貸人(地主)に不利な事情」が大きいと判断し,許可を認めない可能性が高いです(借地借家法19条1項;文献後掲)。
結果的に,地主が「半永久的な借地」を負担することにはほとんどならないと思われます。

以上は理論的な帰結です。
実際に建物が譲渡される場合は,「建物譲渡特約付借地の当事者たる地位」もセットで譲渡されることになりましょう。
つまり,特約も含めて借地契約内容が,建物の新所有者にも承継される,という前提です。
この場合は,地主も承諾しやすいでしょう。
仮に承諾しない→裁判所の代諾許可,となった場合でも,「賃貸人(地主)に不利な事情」がそれほど大きくはない,と判断され,許可が認められる可能性が高いです。
結果的に,以前の特約含めた契約内容が建物の新所有者にも承継されます。

なお,土地賃貸借ではなく,地上権の場合は,「譲渡について地主の承諾は不要」です。
「承諾しないことによる対抗策」は取れません。

2 地主への建物譲渡仮登記がなされている場合
「地主への建物譲渡」が優先,「第三者への建物+借地権の譲渡」が劣後,ということになります(民法177条)。
正確には,優先される内容は「地主への建物譲渡+借地権譲渡(消滅)」となります(借地借家法10条1項)。
借地権の譲渡は,建物譲渡に随伴すると考えられるからです。
結局,当初の建物譲渡特約付借地の契約どおりに,期間満了時に建物の買い取り+借地終了,が実現する,ということになります。

[民法]
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

[借地借家法]
(借地権の対抗力等)
第十条  借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
2~4(略)

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条  借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
3~7(略)

[コンメンタール借地借家法(第3版)187頁]
借地権設定者は建物譲渡に関する自己の順位を保全するために仮登記を経由しておくことになろう。これを怠って,借地権者から第三者に建物が譲渡されて登記され,借地権も第三者に移転すると,その借地権は建物譲渡特約の付かない普通借地権,一般定期借地権または23条1項所定の事業用定期借地権として扱われることになる。もっとも,その借地権が地上権ではなく賃借権である場合には,借地権設定者は賃借権譲渡への承諾を与えなければよいし,また,19条により借地権者が承諾に代わる許可の裁判を求めても,「賃貸人に不利となるおそれ」のある場合として,許可がされないことが予想されるから,借地権設定者の実害は大きくないといえるかもしれない(ただ,14条により予定より早期に建物を買い取らなければならなくなるという不利益は残るのであり,仮登記をしておくにこしたことはないであろう)。
なお,借地権者として,建物および借地権の第三者への譲渡をスムーズに運ぶためには,借地権とともに建物譲渡人たる地位も当該第三者に譲渡することが必要になろう。その場合には,借地権設定者が仮登記を経由しているか否かにかかわらず,借地権設定者は後日予約完結権を行使してその第三者から建物を買い取り,借地権を消滅させることができるから,借地権設定者の承諾またはこれに代わる裁判所の許可が得やすくなるであろう。

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Q 建物譲渡特約付借地契約を締結する場合に気をつけることはありますか。

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A 建物譲渡について,最初から仮登記を行っておくとリスクを抑えられます。

【建物譲渡特約付借地;仮登記による保護】
Q建物譲渡特約付借地契約を締結する場合に気をつけることはありますか。

A建物譲渡について,最初から仮登記を行っておくとリスクを抑えられます。

建物譲渡特約付借地契約は,一般的借地同様に,期間が30年以上とされています(借地借家法3条)。
このように長期間ですから,満了までの間に「想定外のイベント」が生じることがあります。

<想定外のイベントの例>
・建物が第三者に賃貸され,第三者が占有(入居)している
・建物(+借地権)が第三者に譲渡(売買,交換,贈与)され,移転する
 →具体例=借地人が売却する
・建物(+借地権)が第三者から差押を受け,競売が行われる
 →具体例=借地人の債権者が差押を申し立てる

このような場合,その後の法律関係が複雑になります。
建物賃貸借がその後も継続するか否か,新たな建物所有者が借地契約の内容を承継するか否か,という問題が生じるのです。

いずれの問題点についてもリスクを低減する方法があります。
それは,建物譲渡について,当初から仮登記を行っておく,という方法です。
※別項目にて説明します。

<建物への仮登記の種類;例>
・2号仮登記(不動産登記法105条2号)
 ・始期付所有権移転仮登記
 ・売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記

[借地借家法]
(借地権の存続期間)
第三条  借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

(建物譲渡特約付借地権)
第二十四条  借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2  前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3  第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

[不動産登記法]
(仮登記)
第百五条  仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一  第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二  第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

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Q 建物譲渡特約付借地権を設定する場合に,「存続期間」と「建物譲渡時期」は同じではないのでしょうか。

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A 「(借地契約の)存続期間」と「建物譲渡時期」は別です。
  同じ,ということも,別の設定とする,ということも可能です。


【建物譲渡特約付借地;契約内容;工夫】
Q建物譲渡特約付借地権を設定する場合に,「存続期間」と「建物譲渡時期」は同じではないのでしょうか。

A「(借地契約の)存続期間」と「建物譲渡時期」は別です。
同じ,ということも,別の設定とする,ということも可能です。

借地借家法上,「存続期間」と「建物譲渡時期」の関係については,特に規定がありません。
単純に,「建物譲渡時期」は「設定後30年経過以降の時点」ということが規定されているだけです(借地借家法24条1項;文献後掲)。
次に簡単な例を示しておきます。

<存続期間と建物譲渡時期の組み合わせ例>
1 存続期間 > 建物譲渡時期
・借地権存続期間 40年
・建物譲渡時期  30年後
  →「30年経過後で地主が意思表示をした時」もOK
2 存続期間 < 建物譲渡時期
・借地権存続期間 30年
・建物譲渡時期  40年後
  →「40年経過後で地主が意思表示をした時」もOK

「時期」+「地主や借地人が意思表示をした時点」という設定も可能です。
この方法によれば,当事者が自身の経済状態,生活状況,社会情勢などにより,リアルタイムで判断できます。
実例として,国土交通省が紹介しているものに「つくば方式」というものがあります。
↓に示しておきます。

<「つくば方式」の借地形態;国土交通省による紹介>
・一般定期借地60年
・建物譲渡特約30年経過後

借地か借家のいずれかによって,60年間は同一建物に居住できることが確約されている
良質住宅を安価に供給できることにつながる


[借地借家法]
(建物譲渡特約付借地権)
第二十四条  借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2  前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3  第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。


[澤野順彦 論点借地借家法 青林書院 151頁]
建物の譲渡される時期は,借地権設定後30年以上経過していれば,いつでもよい。借地権の存続期間と必ずしも合致する必要はない。借地権の存続期間を50年と定めて,建物譲渡の時期は30年以上経過後,借地権設定者が譲受けの意思を表示した時とする旨の定めももちろん有効である。
存続期間を30年と定め,または存続期間については何ら定めず,建物譲渡の時期のみを例えば借地権設定後40年と定めることも可能である。前者の場合,30年経過すると期間満了となる。この場合も普通借地権については更新に関する規定(法4~6など)が適用されるから,借地権設定者に正当事由が認められない限り借地契約は更新され,建物譲渡は更新後の期間になされることになる。

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