免責規定(約款)の有効性~消費者契約法,公序良俗違反~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 利用者側がバックアップしていれば,データは復元できたはずです。
  バックアップしていなかったのだから,ストレートに損害賠償請求は認められないのではないですか。
  サービスの種類で違いはありますか。


誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ

↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 約款上「バックアップをしなかったことによって被った損害」は免責と規定されています。
  しかし,この約款は無効と考えられます。
  また,「ビズ2」は特殊性を考慮する必要があります。


【約款の免責規定の有効性(ファーストサーバ事件)】
利用者側がバックアップしていれば,データは復元できたはずです。バックアップしていなかったのだから,ストレートに損害賠償請求は認められないのではないですか。

→約款上「バックアップをしなかったことによって被った損害」は免責と規定されています。しかし,この約款は無効と考えられます。

約款16条1項で,契約者はバックアップをすることを義務付けられ,同上3項で,バックアップ不備による損害について,ファーストサーバ社は免責されると規定されています(後掲)。
この規定をストレートに受け取ると,「バックアップを履行していれば」→「データが消失しても」→「データは復元できる=(喪失しない)」ということになります。
結果的に,ファーストサーバ社はデータ消失の責任を負わない,ということに形式的にはなりそうです。
しかし,この約款は,解釈上,無効と判断される可能性が高いです。
というのは,約款の形式として,ファーストサーバ社側の過失・故意の有無に関係なく,全面的に賠償責任を排除しているからです。
そうすると,著しくバランスを欠く→公序良俗違反(民法90条),と考えられるのです。
もちろん,絶対的な解釈ではないです。
ただ,他業種のケースですが,「バランスを欠く免責規定」が同様の解釈論で無効とされた裁判例があります(後掲)。
当該約款は無効と判断される可能性が高いということになります。

<ファーストサーバ社の約款>
第16条(データ等の保管およびバックアップ)
1 契約者は、本サービスが本質的に情報の喪失、改変、破壊等の危険が内在するインターネット通信網を介したサービスであることを理解した上で、サーバ上において利用、作成、保管記録等するファイル、データ、プログラム及び電子メールデータ等の全て(以下「契約者保有データ」といいます。)を自らの責任において利用し、保管管理し、且つ、バックアップをするものとします。
2 当社は、システム保安上の理由等により、契約者保有データを一時的にバックアップする場合があります。ただし、当該バックアップは、契約者データの保全を目的とするものではなく、当社が契約者からの当該バックアップデータの提供要求に応じる場合であっても、当社は、当該データの完全性等を含め何らの保証をしません。
3 契約者が契約者保有データをバックアップしなかったことによって被った損害について、当社は損害賠償責任を含め何らの責任を負わないものとします。

[最高裁判所第2小法廷平成13年(受)第1061号損害賠償請求事件平成15年2月28日]
本件特則は、宿泊客が、本件ホテルに持ち込みフロントに預けなかった物品、現金及び貴重品について、ホテル側にその種類及び価額の明告をしなかった場合には、ホテル側が物品等の種類及び価額に応じた注意を払うことを期待するのが酷であり、かつ、時として損害賠償額が巨額に上ることがあり得ることなどを考慮して設けられたものと解される。このような本件特則の趣旨にかんがみても、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合に、本件特則により、被上告人の損害賠償義務の範囲が制限されるとすることは、著しく衡平を害するものであって、当事者の通常の意思に合致しないというべきである。したがって、本件特則は、ホテル側に故意又は重大な過失がある場合には適用されないと解するのか相当である。

【サービスのタイプによる「過失」の解釈(ファーストサーバ事件)】
利用者がバックアップをする義務,については,サービスのタイプによって違いがあるのではないでしょうか。

→「外部サーバーへのデータ保存」が含まれるタイプ(ビズ2)では,「利用者のバックアップ義務」は希薄でしょう。

レンタルサーバーの契約にも種類(タイプ)があります。
データの保管,バックアップを強化することが契約内容となっている場合は,反射的に,利用者サイドでのバックアップ義務,という意味が薄くなります。
利用者側がバックアップを含めたメンテナンスをしない(少なくする)ことを前提としているサービスだからです。
具体的には「ビズ2」というサービスが,これに該当します。
このサービスについては,パンフレット上,「外部サーバへのデータ保存」が記載されています。
そして,この「パンフレット上の表記」は,契約内容を構成することになります(約款1条4号)。
このサービス利用者については,結果的に「バックアップ義務がない→バックアップ不備による免責規定はバランスを欠く→無効(公序良俗)」という判断となることが確実と言えましょう。

<「ビズ2」のパンフレットの記載>
「さらに人為的なデータ損失があった場合にそなえ、日に1回、外部サーバーにデータを保存していますので、お客様によるデータの誤消去があった場合にも、前日の状態に戻すことが可能です」

<ファーストサーバ社の約款>
第1条(約款の適用)
(略)
4. 当社のウェブページ等において当社が公開するまたは個別に通知若しくは提供等する本サービスの機能説明、利用方法に関する説明、注意事項及び制限事項等(以下「説明書等」といいます。)は、本約款の一部を構成するものとし、本サービスの利用に適用されます。

★明日に続く!★

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ

↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

労働・企業法務に関するすべてのQ&Aはこちら
個別的ご相談,助成金申請に関するお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030