削除したメールを再現して証拠化~鑑定や準文書提出命令~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 削除してしまったメールを証拠にしたいです。
  できますか。
  また,相手のパソコンに入っているメールを証拠に使うのはダメですか。


誤解ありがち度 5(5段階)
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2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 「鑑定」により,削除済みメールの再現・解析が可能です。
  相手方の手持ちのPC(HDD)について「準文書提出命令」が効きます。


【メールを証拠にする具体的方法】
メールを証拠にする場合,具体的にどのようにするのでしょうか。

→メール内容・ヘッダー情報を印刷して「書証」として証拠調べ請求を行うのが原則です。「検証」を用いる場合もあります。

通常は,メール内容・ヘッダー情報を印刷した紙を「書証」として提出します。
正確に言えば「証拠調べ請求」「書証の申出」ということになります(民事訴訟法219条)。
仮に「成立の真正を争われた」という場合,つまり「自分で作った文章を印刷しただけだ」と主張された場合,受信メールの入っているパソコンを法廷で裁判官に見てもらう方法もあります。
これは「検証」と呼ぶ方法です(民事訴訟法232条)。
中間的な方法として,メールをデータとしてCD-ROM等の記録媒体に入れて,その記録媒体を提出する方法も考えられます。
これを「準書証」とか「準文書」とか呼びます(民事訴訟法231条)。
しかし,準書証としての扱いは,「再生(再現)容易」であることが前提と考えられています。
「メールの内容」については,再生容易,ではないとして,認められないことが多いです。
記録媒体としても,ブルーレイディスクやUSBメモリについては,ますます「再生容易」ではないとされるでしょう。
同様に,メール情報の記録されているHDD(ハードディスク)そのもの,を提出しようとしても「再生容易」ではないとして認められないでしょう。
裁判所は技術革新については遅い役所なのです。

[民事訴訟法]
(書証の申出)
第二百十九条  書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。

(文書に準ずる物件への準用)
第二百三十一条  この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。

(検証の目的の提示等)
第二百三十二条  第二百十九条、第二百二十三条、第二百二十四条、第二百二十六条及び第二百二十七条の規定は、検証の目的の提示又は送付について準用する。

【「鑑定」による削除したメールの再現】
重要なメールを削除してしまいました。
多分,HDDを解析すれば再現できるはずです。
ヘッダー情報も再現できるはずです。
有力な情報が取れると思うのですが,証拠になりませんか。

→「鑑定」により証拠にすることもできるでしょう。

HDDに特殊な処理を行い,再現すれば,「重要・貴重な情報が出てくる」という場面もあります。
このような場合,「印刷して書面として証拠にする」という方法が使えません。
「特殊な専門技術を用いた専門機関によるHDDの分析」という工程が含まれるからです。
この場合は,「鑑定」を申し出る,という方法によって,証拠にすることが可能です(民事訴訟法212条~)。
具体的な「鑑定人」,つまりHDDの解析を行う業者は,裁判所が指定することになります(民事訴訟法213条)。

[民事訴訟法]
(鑑定義務)
第二百十二条  鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。
2  第百九十六条又は第二百一条第四項の規定により証言又は宣誓を拒むことができる者と同一の地位にある者及び同条第二項に規定する者は、鑑定人となることができない。

(鑑定人の指定)
第二百十三条  鑑定人は、受訴裁判所、受命裁判官又は受託裁判官が指定する。

【準文書提出命令+鑑定,によって相手方PCのメールを証拠化】
非常に重要なメールでのやりとりを証拠にしたいです。
しかし私のパソコンには入っていません。
相手の持っているパソコンに入っているはずです。
相手からパソコンを提出させることはできませんか。
多分,メールは削除されていると思うのですが大丈夫でしょうか。

→準文書提出命令+鑑定,という合わせ技で証拠として使う方法があります。

専門業者が解析する,という前提であれば,メール情報の記録されたHDDも証拠調べの対象となります。
そして,このHDDそのものを相手方が持っている場合でも,証拠にする方法があるのです。
それが,準文書の提出命令です(民事訴訟法219条~,231条)。
これにより,相手方よりHDDの提出を強制した上で,専門業者が解析作業を行う,ということが可能となるのです。
なお,HDDは,そのものを準文書として「書証」にすることは困難です。
理由は「再現の困難性」です。
しかし,「鑑定」前提であれば,再現・解析は専門業者が行います。
「再現の困難性」には該当しません。
そこで,「準文書」として扱うことが可能となるのです。

[民事訴訟法]
(書証の申出)
第二百十九条  書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない。

(文書提出義務)
第二百二十条  次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一(略)

(文書提出命令の申立て)
第二百二十一条  文書提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一(略)

(文書に準ずる物件への準用)
第二百三十一条  この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する。

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