建物を友人に売っても良いのでしょうか。
抵当権やその他の担保に入れることはどうでしょうか。
誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る
↓ランキングはこうなってます↓
↓ このブログが1位かも!? ↓


↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑
A 借地権の無断譲渡に当たります。
借地契約を解除されるおそれがあります。
担保権設定は「占有移転」(引渡し)タイプだと無断譲渡と同じことになります。
【建物譲渡と借地権無断譲渡】
借地の上に私が所有者となっている建物があります。
知人にこの建物を売っても良いのでしょうか。
→地主の承諾なく譲渡すると,借地契約は解除され,明渡請求を受けます。
「借地上の建物」と「借地権」は一体として扱われます。
「借地権」は「建物」の従たる権利としてセットで移転するということです(民法87条類推)。
「借地権」の内容が賃貸借契約であれば,「無断譲渡」として,解除されることになります(民法612条)。
(借地権の内容は,ほとんどのケースで賃貸借契約です)
賃貸借契約が解除されれば,譲渡人・譲受人のいずれも,「土地を不法占有している」状態となります。
地主から明渡請求を受けることになります。
[民法]
(主物及び従物)
第八十七条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
2 従物は、主物の処分に従う。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
【抵当権設定と借地権無断譲渡】
借地上の建物の所有者です。
地主に承諾を得ないと,建物に抵当権を設定できないのでしょうか。
→設定自体は問題ありません。ただ,抵当権実行(=競売)による買受人はそのままでは「無断譲渡」の状態となります。
まず,抵当権の設定は「譲渡」(=所有権の移転)ではありません。
次に,「無断譲渡」の条文である民法612条2項を見ると「第三者に賃借物の使用又は収益をさせたとき」と書いてあります。
つまり,占有も移転した(第三者に引き渡した)時,に初めて解除される状態になる,というわけです。
抵当権の設定,についてちょっと考えてみると分かりますが,占有者=居住者,には変化がありません。
現に,滞納なく借入金の返済が完了した時は抵当権は消滅します(抹消されます)。
いずれにしましても,抵当権の設定自体では「無断譲渡」とは言えません。
地主の承諾がなくても特に問題はありません。
(実務では「地主の承諾がないと担保として認めない」という金融機関が多いですが)
しかし,仮に借入金の返済が滞納となり,金融機関が抵当権を実行してきた場合は話が違ってきます。
買受人,つまり新たな所有者に所有権が移転することになります。
裁判所主催のオークション経由ですが,一種の譲渡(=所有権移転)です。
そこで,そのままでは「無断譲渡」となってしまいます。
[最高裁判所第3小法廷昭和39年(オ)第1033号建物収去土地明渡請求事件昭和40年5月4日]
土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が該建物の所有権を取得した場合には、民法六一二条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である(原審は、択一的に、転貸関係の発生をも推定しており、この見解は当審の執らないところであるが、この点の帰結のいかんは、判決の結論に影響を及ぼすものではない。)。けだし、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となつて一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。したがつて、賃貸人たる土地所有者が右賃借権の移転を承諾しないとしても、すでに賃借権を競落人に移転した従前の建物所有者は、土地所有者に代位して競落人に対する敷地の明渡しを請求することができないものといわなければならない。
【質権設定と借地権無断譲渡】
借地上の建物の所有者です。
地主に承諾を得ないと,建物に質権を設定することはできないのでしょうか。
→無断譲渡,に当たると考えられます。
動産を質に入れる,ということはすぐにイメージが浮かぶ状況です。
しかし,「不動産を質に入れる」ということについては,ちょっと馴染みが薄いと思います。
民法で,きちんと規定されています。
不動産そのものを引渡し,占有を移転すること,が必要なのです(民法344条,345条)。
権利証だけ質屋に持って行って預ける,という簡単なことではないのです。
まとめます。
1 所有権は移転していない
あくまで担保権の設定なので,所有権は変更なしです。
この点だけ見ると「譲渡ではない」と言えそうです。
2 占有は移転している
「占有はそのまま」だと「質権設定」になりません。
結局,「譲渡」にも近いけど,「譲渡(自体)」ではない,という状態です。
この点,下級審裁判例ですが,「無断譲渡」として扱う判断がなされた例があります(後掲)。
[民法]
(質権の設定)
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
(質権設定者による代理占有の禁止)
第三百四十五条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
[東京地方裁判所昭和47年(ワ)第2949号、昭和48年(ワ)第3727号、昭和48年(ワ)第9589号建物収去土地明渡請求事件昭和50年11月27日]
右の事実によれば、本件旧建物は落合喜義の所有であったが、本件建物完成と同時に、同人の本間武雄に対する金一、三〇〇万円の旧債権および金一〇〇万円の工事費立替金債権ならびに由里完二郎に対する金二〇〇万円の工事費立替金債権の支払の担保として、右本間、由里の両名に現実に引渡され、右両名は落合喜義に対する各債権の弁済を受け終るまで本件建物の使用収益をする権利を有すること(本件建物の使用収益をすることは、右両名にとって債権回収の唯一の手段であり、その権利の眼目である)が認められ、落合喜義は、右両名との間に本件建物につき、不動産質権を設定したものというべきである。
思うに、担保権者が担保物の現実の引渡を受ける場合には、担保権者は、建物賃借人等の債権的利用者とは違い、担保物を物権的権原によって占有、支配しているものというべきであるから、借地上の建物に質権を設定することは、敷地賃借権につき「賃借物ノ使用又ハ収益ヲ為サシメタ」ものということになり、敷地賃借権の譲渡転貸に該当することになる。
本件についてこれを見るに、原告の主張は措辞適切を欠くきらいがあるが、要するに落合喜義が本間武雄らに本件建物の占有管理処分権限を委ねたのは、民法六一二条二項の「賃借物ノ使用又ハ収益ヲ為サシメタ」ものに該るというにあると解されるところ、前述のとおり、落合喜義は原告ら先代白川喜代に無断で、本件建物を本間らに質入れしたものと認められるから、原告らは、右法条に基づき、本件土地の賃貸借契約を解除することができるものというべきである。
【譲渡担保と借地権無断譲渡】
借地上の建物の所有者です。
地主に承諾を得ないと,建物に譲渡担保を設定することはできないのでしょうか。
→通常の譲渡担保ならば「無断譲渡」にはなりません。建物を引き渡す,タイプだと「無断譲渡」に当たります。
いくつかの考え方がありますが,確立された最高裁判例(後掲)の結論は,条文のルールに機械的に当てはめたものです。
譲渡担保の法的性質は,所有権的構成,担保権的構成があります。
ここでは深く踏み込みません。
とにかく,「形式的」には,「所有権移転」です。「譲渡」なので。
そうすると,あとは占有移転(引渡し)があれば,「無断譲渡」が完成するということになります(民法612条2項)。
そこで,「譲渡担保」というだけでは決められず,占有移転(引渡し)があるかないかで「無断譲渡」に当たるかどうかを判断します。
<まとめ>
占有移転(引渡し)あり→無断譲渡に当たる
占有移転(引渡し)なし→無断譲渡に当たらない
<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら
<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害
↓ランキングはこうなってます↓
↓ このブログが1位かも!? ↓


↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑
不動産に関するすべてのQ&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
弁護士による不動産の法律相談
個別的ご相談等のお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030