留置権による不動産競売~抵当権は残るor消される?~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 不動産についても留置権は成立しますか。
  競売をした時に,抵当権はどうなるのでしょうか。


誤解ありがち度 5(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 不動産でも留置権は成立します。
  競売もできます。
  ただし,抵当権は引受説,消除説の両方があります。


【不動産についての留置権】
不動産についても留置権は成立するのでしょうか。

→不動産にも留置権は成立します。

典型例は,不動産の売買契約が締結されたが,買主が代金を支払わない,というケースでしょう。
この場合,売主としては,「代金を払うまで不動産を渡さない」という主張をすることができます。

【留置権に基づく不動産の競売】
不動産について,留置権による競売はできるのでしょうか。

→不動産についても,留置権に基づく競売は可能です。

民事執行法195条において,特に動産・不動産が区別されているわけではありません。
動産と同様に,留置権に基づく競売,は適用されます。

【留置権に基づく不動産の競売における引受説/消除説】
不動産について,留置権に基づく競売を行いたいと思います。
ただし,抵当権が付いています。
抵当権の負担はどのように扱われるのでしょうか。

→抵当権は抹消=配当が行われる,という見解と,抵当権は存続する,という2つの見解があります。

留置権に基づく競売は,本来タイプの「競売」ではありません。
本来の,典型的な競売は,「売却し,代金を担保権者に優先的に弁済する」という担保機能が目的となったものです。
しかし,留置権は「優先弁済」が目的ではなく,心理的プレッシャー,だけが目的です。
そこで,対象不動産に抵当権が付いている場合,2つの見解が存在します。
<留置権に基づく競売における抵当権の扱いの説>
1 引受説(←裁判例後掲)
抵当権はそのまま存続する,という見解です。
留置権に基づく競売は,通常の競売とは異なるので,抵当権は無視する,という考えです。
2 消除説(←東京地裁の運用)
抵当権を残した状態で買い受ける,ということは現実的にハードルが高いです。
このように,引受説の,現実的な不都合性を重視し,通常の競売同様に,担保権は消滅する(=配当される)べきであるという考えです。

少なくとも,現時点の東京地裁執行センターの運用では,原則として「2」の見解が取られています。

[東京地方裁判所昭和60年(ヲ)第125号執行異議申立事件昭和60年5月17日]
そこで、本件執行異議申立ての当否について検討するに、留置権者は目的物を晋置する権能を認められているに過ぎず、留置物から生ずる果実(民法二九七条)を除いては優先弁済権を有しない。留置権の本来の目的は、担保目的物を換価して被担保債権の弁済に充てる一般の担保権とは異なり、債権の弁済があるまで目的物を留置することによって弁済を心理的に強制することにあるものと解される。したがって留置権者に競売申立権が認められるとしても、それは債 の弁済期が到来しても支払がないときに、目的物の留置を続ける煩を避けて換金することを認めたに過ぎず、その実質は、目的物の 価のみを行うことを目的とするいわゆる形式的競売そのものではないが、これに極めて類似するものということができる。民事執行法が留置権の実行としての競売を認めながら、これを担保権の実行としての競売の規定である一九〇条に規定せず、形式的競売を規定した同一の条文である一九五条に「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。」と規定したのもその趣旨と解される。
 そうであるとすれば、留置権の実行としての競売も形式的競売と同様、債権の弁済を目的としている担保権の実行としての競売の手続である配当要求に関する規定は、その性質上適用の余地がないものといわなければならない。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

労働・企業法務に関するすべてのQ&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
個別的ご相談,助成金申請に関するお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030