Q 私有地の運転でも無免許運転は成立するのですか。
誤解ありがち度 3(5段階)
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A 「誰でも入れる駐車場」は,無免許運転成立の可能性大。
「一定の人しか入れない場所」は,無免許運転は成立しません。
【私有地での無免許運転】
私有地では免許がなくても自動車を運転して良いのでしょうか。
→土地所有者が個人であっても,実際の状況として「一般交通の用に供する」状態であれば,「無免許運転」は適用されます。
無免許運転に関するルールは道路交通法に規定されています。
無免許運転の対象は無免許での「運転」です(道交法64条)。
一見,意味のない文章のようですが,別の箇所に「中身」が書いてあります。
道交法で言う「運転」とは,「道路において」とされています(道交法2条17号)。
では「道路」とは,私有地も入るのかどうか,ということについては2条1号に規定されています。
ここには,「道路」として,まず,道路法や道路運送法における道路や自動車道が規定されています。
要は公道のことです。
さらに「道路」の2パターン目として,「一般交通の用に供するその他の場所」が規定されています。
つまり,私有地であっても,その使われ方,現況によっては「道路」として扱われます。
「道路」と認められた場合は,その場所で無免許で運転すると,無免許運転が成立します。
「道路」に該当しなければ,無免許運転や酒気帯び運転,スピード違反など,道交法のルール自体が適用されないことになります。
谷田部のテストコースなどは「道交法の範囲外」の典型例です。
[道路交通法]
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 道路 道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項 に規定する道路、道路運送法 (昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項 に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。
(略)
十七 運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いることをいう。
第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項又は同条第三項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
【「道路」の判断に関する裁判例】
「一般交通の用に供するその他の場所」とは具体的にどのような場所のことを指すのでしょうか。
→飲食店の駐車場が「道路」とされた裁判例があります。月極め駐車場は否定されています。
自動車を運転した場所が「道路」に該当するか否かについて判断された,比較的新しい裁判例(引用は後掲)を示します。
1 ラーメン店の駐車場(における無免許運転)
「道路」と認められ,有罪(無免許運転成立)とされました。
2 月極め駐車場(における飲酒運転)
「道路」ではないと認められ,無罪(飲酒運転不成立)とされました。
[大阪高等裁判所平成14年(う)第974号道路交通法違反被告事件平成14年10月23日]
本件駐車場は,本件各店舗を訪れる客の利用する駐車場として供され,本件駐車場中央部分は,同各店舗を訪れ,自車を本件駐車場に停め,又は停めようとする客ら及びその自動車の通行に供されており,これらの客及びその自動車が同所を通行するに当たって何らの制約はなく,かつ,現にこれらの客及びその自動車が自由に通行していたことが認められる。道路交通法2条1項1号にいう一般交通の用に供するその他の場所とは,不特定多数の人や車両が自由に通行できる場所として供され,現に不特定多数の人や車両が自由に通行している場所を意味すると解されるところ,本件各店舗を訪れ,自車を本件駐車場に停め,又は停めようとする者及びその自動車は,だれでも本件駐車場中央部分を通行することができ,現に通行していたのであるから,同所は不特定多数の人や車両が自由に通行する場所として供され,現に不特定多数の人や車両が自由に通行していたものというべきである。したがって,同所は道路に当たると解するべきである。
[東京高等裁判所平成14年(う)第1582号道路交通法違反被告事件平成14年10月21日]
(1)の点については,駐車区画以外の部分は,車両が通行できるものの,いずれも行き止まりとなって,通り抜けができない構造になっており,道路としての形態を備えているとまではいい難い。(2)の点についても,契約者が車両を出し入れする駐車場であることから,施錠をしないのは当然であり,そのことから直ちに一般人に開放されているなどとはいえず,駐車場経営者が賃貸借契約もしていない付近住民に対して本件駐車場を自由に使用することを許すなどとは考え難い。また,本件駐車場は私人が経営する比較的小規模な駐車場であって,その北側以外は畑や塀に囲まれて通り抜けもできないから,本件駐車場とは無関係な車両や人が自由に頻繁に立ち入るなどということはおよそ想定できないし,そのような事実も認められないことは前述のとおりである。関係証拠によれば,被告人も駐車場に駐車中の車両を検分するため,その駐車区画を貸借している修理工場の者に車の鍵を借りて本件駐車場に入ったにすぎない。単に不特定の車両や人の通行が可能であるというのではなく,現実に不特定多数の車両や人が自由に通行しているという客観的事実が認められなければ,「一般交通の用に供する」場所とはいえないところ,原判決は,立入禁止の表示や施錠がなく,自由に立ち入ることができることや被告人が現に通行した事実等だけから,本件駐車場の駐車区画以外の通路部分全体が「現に不特定多数の人または車両によって継続的,反復的に利用されているという客観的な状況にあり,かつ,その状況が相当程度の公開性を有している」などと説示しているが,論理的にも飛躍があり,正当でない。(3)の点については,本件駐車場のうち市道と接する北西角付近のわずかな部分だけは,車両が馬入れからはみ出して通行したり,人が横切ったりするというにすぎず,そのことから,本件駐車場全体が一般の通行の用に供されていると見るのは相当でない。
【「道路」の判断基準】
私有地(駐車場)で,無免許運転になる場所とならない場所はどうやって区別できるのでしょうか。
→不特定多数の者が自由に通行(利用)できるか否か,で判断します。
裁判例においては,「道路」(道交法2条1号「一般交通の用に供するその他の場所」)の判断に,次のような基準を用いています。
<「道路」の判断基準>
「不特定多数の者が自由に通行(利用)」できる状態かどうか
<具体的な目安>
邸宅の庭→住人以外は入らない場所→「道路」に該当しない
飲食店の駐車場→不特定多数の客が利用→「道路」に該当する
月極め駐車場→一定範囲の者(契約者)だけが利用→「道路」に該当しない
ただし,「実際の利用状況」で決まることになります。
ですから,「店の駐車場」などの形式的な用途のみで決まるわけではありません。
別の角度から見れば,「公道の延長」と言える性格なのか,「個人宅の庭」に近い性格なのか,という判断であるとも言えます。
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