私は以前から父と同居していました。
退去しなくてはならないのでしょうか。
兄弟で取り決めをした後に第三者が登場した場合はどうでしょうか。
イレギュラー状態に突入します。予防策を!
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 遺産分割完了までは「使用貸借」と考えられます。
予防策は,遺言・信託・賃貸借です。
持分を購入した第三者も「共有者間の合意」に拘束されます。
【相続直後の共有不動産に使用貸借関係適用】
相続に関係する共有のケースで明渡や金銭請求が認められないという具体的な例はありますか。
→判例上,相続直後の共有不動産について,使用貸借契約を認めたものがあります。
この判例(後掲)では,共有者間に,使用貸借契約を認めました。
その結果,明渡請求は認められず,また,使用料(賃料・家賃)といった金銭の請求も認められませんでした。
事前には,書面でも口頭でも「使用貸借契約」というものは締結されていませんでした。
それなのに使用貸借契約を認めた理由(前提)や無償使用を認めた範囲などは次のようなものです。
<使用貸借契約を認めた理由(前提)>
・相続開始前は被相続人の単独所有であった
・相続人の1人が,以前より被相続人と対象不動産に同居していた
<無償使用を認めた範囲>
・少なくとも,遺産分割協議が完了するまで
[最高裁判所第3小法廷平成5年(オ)第1946号土地建物共有物分割等請求事件平成8年12月17日(抜粋)]
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。
[民法]
第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
【相続後の不動産使用方法のトラブル防止策】
相続後に,兄弟(相続人)の間で,不動産の使用についてトラブルになるのを防ぐ方法はありますか。
→遺言や信託契約で移転先や使用方法(権限)を明記しておくことが,トラブル防止策の典型です。
<相続後の共有不動産トラブル防止策>
1 遺言により遺贈・分割方法の指定をしておく
2 信託により,相続後の不動産管理方法を規定しておく
3 生前に居住者との間で賃貸借契約を締結しておく
相続後に使用(居住)させる者に遺贈する,とか,相続させるということを遺言で書いておけば,そのとおりになります。
つまり,共有となり,共有者間で意見がバラバラになる,ということを避けられます。
ただし,遺留分の侵害があると,結局は減殺請求を行使されるリスクを残してしまいます。
また,信託契約を用いて,相続後の管理方法・居住者を決めておくこともできます。
さらに,生前より,居住者(推定相続人)との間で賃貸借契約を締結しておけば,相続後も,賃貸借契約は終了せず,居住を継続することが実現できます。
無償の使用貸借契約は相続により終了しますが,賃貸借契約は賃貸人の相続の際,終了せず,相続人に承継されるのです。
【使用方法の合意の承継】
共有者である兄(A)と話し合いをして,「私が建物を使用する(居住する)。対価は月額10万円」と決めました。
その後,Aが不動産の共有持分を第三者(B)に売却しました。
Bは「以前の約束は聞いてない。退去してくれ。退去しないなら月額20万円を払ってくれ」と私に要求しています。
兄との約束はもう無効なのでしょうか。
→共有者間の使用方法の設定は,その後共有者となった者との間でも有効です。
確かに,共有持分を購入したBにとっては,仮に「使用方法の合意」について知らなかったら不意打ちになります。
登記上明示されていれば別ですが,「使用方法の合意」は登記できません。
この点,「共有物不分割特約」は登記できるのとは対照的です(民法256条,不動産登記法59条6号)。
しかし一方で,元々の共有者からすれば,一旦合意した内容が,持分譲渡により簡単に覆されることも不合理です。
そこで,裁判例(後掲)においては,共有者間の合意内容は持分購入者(特定承継人)にも引き継がれると判断しました。
なお,理由の1つとして,条文上「共有者間の債権」は引き継がれるとされていることを挙げています(民法254条)。
結果的に,Bも,共有者間で以前合意した内容に拘束されます。
具体的には,Bは退去請求をできず,また,「10万円」以上の使用料の請求もできません。
なお,Bにとって,このような拘束が想定外である,という場合には,売却したAが「騙した」ことになります。
この場合は,BはAに対し,詐欺による売買契約の取消の主張や損害賠償請求を行うことができると思われます。
[民法]
(共有物についての債権)
第二百五十四条 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
[不動産登記法]
(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条 権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
(略)
六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法 (明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項 ただし書(同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条 の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同法第九百七条第三項 の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め
(略)
[東京高等裁判所昭和56年(ネ)第1699号所有権移転登記請求控訴事件昭和57年11月17日(抜粋)]
しかして、右のごとき共有者間の共有物に関する使用収益、管理又は費用の分担についての定めは、その共有者の特定承継人に対しても当然承継されるものと解すべきものである。けだし、共有物の使用収益、管理又は費用の分担に関する定めは、共有関係と相分離しえないものであり、共有者は、自己が持つていた以上の権利を譲り渡すことができず、譲受人も、譲渡人が受けていたと同じ制限を受ける権利を取得するのが当然であるからである。民法二五四条は、右の当然の事理を前提とし、更に具体的に発生した債権についても特定承継人に承継されることを規定しているのである。もし右述のように解しないと、共有者間の特約により負担を負う共有者の一人が、持分を譲渡することにより一方的にいつでもその特約を破棄したと同等の効果を生じさせうることになり、その不当であることはいうをまたないところである。なお右特約については公示方法がないので、持分の譲受人が不測の損害を受け、取引の安全を害することがないとはいえないが、これは譲渡人の瑕疵担保責任、あるいは、共有者となつた譲受人による共有解消の問題として考慮すれば足りるものというべきである。
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