日照権ということで何か言えないのでしょうか。
先日設置した太陽光発電パネルにも影響ありそうです。
古くて新しい問題です。
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 「受忍限度」を越えれば違法,という考え方です。
「受忍限度」は建築差止用と損害賠償請求用でダブルスタンダードです。
太陽光発電への被害は,明確な基準がありません。従来の基準の流用が相場。
抜本的な予防・解決手段は「日照地役権」!
【日照権】
我が家の南側は空き地で日当たり良好なのです。
しかし,高層マンション建設の計画があるそうです。
迷惑を被るので何か言えないのでしょうか。
→日照権の侵害に該当すれば,建築の差止や損害賠償請求が可能です。
「日照権」というのは,法律・条文に明記されていませんが,多くの判例で認められています。
具体的な状況によって「日照権が侵害されている」と認められれば,建築が「侵害行為」として違法になります。
その場合は,建築自体を差し止める請求や損害賠償請求が可能となります。
最近は,太陽光発電システムを導入する建物が増えています。
日照確保の要請は従来の枠組みを超えてきています。
【日照権の法的根拠】
日照権は,条文に書いてないのに認められるのですか。
→法的な根拠としては,物権的請求権,人格権などという解釈になりましょう。
多くの裁判例では,この「法的根拠」を説明しているものも,一切説明していないものもあります。
というのは,この「法的根拠」は,結論として建築差し止め・損害賠償請求を認めるかどうか,という結論に直結しません。
そこで,あまり議論の対象にならないのです。
法的根拠を整理しておきます。
<日照権の法的根拠>
1 物権的請求権説
日照を居住する権利,というものが「土地(や建物)の所有権の一環」として含まれる,という解釈です。
2 人格権説
これ自体が条文に規定(明記)されていない権利です。
しかし,存在することは当然の前提とされています。
人格権の内容としては,裁判例で,次のように説明されています。
<大阪高等裁判所昭和50年11月27日(抜粋)>
「個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なもので,その総体を人格権という」
3 不法行為説
日照妨害という行為が違法性のある行為である,という解釈です。
そして,民法709条の不法行為を適用する,という説です。
この説では,「不法行為には『差止』という制度がない」というところが弱点です(民法722条,417条→金銭賠償のみ)。
4 環境権説,日照権説
ダイレクトに,環境権や日照権という新しい権利を認める考え方です。
環境権とは,「健康で快適な生活を維持する環境を享受する権利」という概要です。
また,もっと具体的に特定し,「日照を享受する権利」として「日照権」として認める考え方もあります。
この説については,根拠が不十分で,明確な「権利」とは言いにくい,という弱点があります。
裁判例の中で法的根拠を挙げるものは,概ね,物権的請求権説(1),人格権説(2)を採用しています(裁判例後掲)。
なお,太陽光発電が阻害され,発電→売電に被害が生じた,ということも今後は権利侵害の重要な内容としてクローズアップしてくると思われます。
[大阪地方裁判所堺支部平成5年(ワ)第954号建物一部撤去等請求事件平成8年12月18日]
およそ居住のための土地、建物については、十分な日照等快適な生活条件を確保することも所有権の重要な内容の一つであり、人格権の一内容として右の土地建物に居住生活する者は、健康で快適な生活環境を確保する権利を有するものというべきである。したがって、居住のための土地、建物所有者は日照等の生活環境等に対する違法な侵害行為により被った損害について不法行為に基づき損害賠償を求めることができるのはもちろんのこと、所有権または人格権に基づきその排除を求めることができるものというべきである。
【日照権侵害の判断基準(受忍限度論)】
どの程度日当たりが悪くなったら建築差し止めや損害賠償を請求できるのですか。
→「受忍限度」を超えた場合に,違法性が認められ,各請求が認められます。
隣地に僅かでも日陰ができたら違法,ということはありません。
では,違法となる程度ですが,「受忍限度論」という理論があります。
次のようなものです。
<受忍限度論>
権利の制限の程度が「社会生活上一般に受任すべき限度を超えた場合」に違法となる
簡単に言えば,「常識を超えた場合に違法となる」というものです。
[最高裁判所第3小法廷昭和43年(オ)第32号損害賠償事件昭和47年6月27日(抜粋)]
南側家屋の建築が北側家屋の日照、通風を妨げた場合は、もとより、それだけでただちに不法行為が成立するものではない。しかし、すべて権利の行使は、その態様ないし結果において、社会観念上妥当と認められる範囲内でのみこれをなすことを要するのであつて、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによつて生じた損害が、社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度を越えたと認められるときは、その権利の行使は、社会観念上妥当な範囲を逸脱したものというべく、いわゆる権利の濫用にわたるものであつて、違法性を帯び「不法行為の責任を生ぜしめるものといわなければならない。
【受忍限度の判断基準】
どの程度,日照に影響がある場合に受忍限度を超えた,と認められるのでしょうか。
→加害建物の建築基準法違反の有無,地域性,日照阻害の程度,が重要な要素です。
実際に,日照阻害の受忍限度,を考える際には,多くの事情が考慮に含まれます。
大きな分類は次のとおりに整理されます。
<日照阻害の受忍限度判断要素>
1 加害建物の建築基準法違反の有無
実際には,建築基準法に適合している場合には,違法性が認められることは極端に少ないです。
2 地域性
都市計画法上の用途地域が主なものです。
典型例は,住居地域の方が,商業地域よりも日照が重視される→日照権侵害が認められやすい,というものです。
実際の土地利用状況も関係してきます。
3 日照阻害の程度
具体的な数値的データとしては,建築基準法で用いられるものを流用することが多いです。
<用いられる日照条件>
・冬至日の午前8時から午後4時における,被害建物南側開口部付近の日照状況(日影時間)
・春分・秋分時の日照状況(他の条件は同上)
また,地盤面より1.5メートル,など一定の高さを日影時間の基準とすることもあります。
4 その他
・加害,被害回避の可能性
加害建物側,被害建物側で,日照阻害を少なくする手段があるかどうか,ということです。
・加害,被害建物の用途
<具体例(一例)>
・加害建物が公共的な建物で建設の必要性が高い
・被害建物が幼稚園・病院であり,日照確保の必要性が高い
・加害建物と被害建物の先後関係
・加害建物建築に至る交渉経緯
加害側と被害側との説明・交渉(意見交換)→設計変更を行った,など,双方がどの程度相手方への配慮を行っているか,ということも重要な要素です。
【違法性段階説】
加害建物が建築基準法に違反していない場合,建築差止も損害賠償も認められないことが多いのでしょうか。
→建築差し止めは棄却されつつ,損害賠償請求が認められるケースもあります。
建築差止については,建築中止→建築物撤去,ということを強制するものです。
当然,影響が非常に大きくなるのが通常です。
そこで,建築差止は,特に違法性が高い場合に限って認める,という傾向があります。
その一方,損害賠償請求は,その程度を金額で調整できます。
加害建物サイドでは,建築差止がされず,建築→運用(営業)ができる前提であれば,なおさら,一定額の負担を負うことも受け入れやすいという側面もあります。
裁判例においても,「建築差し止めは棄却+損害賠償請求認容」というものが結構あります(後掲)。
[東京地方裁判所平成3年(ワ)第7291号損害賠償請求事件平成7年2月3日(抜粋)]
そうすると、現段階において原告らによる被告建物の一部撤去請求を根拠づけるだけの受忍限度を超える侵害状態があるということはできない。
しかし、被告建物建築時における原告第一建物二階南西側和室に対する日照阻害の程度は(是正工事により多少改善されたものの)受忍限度を超えるものであったというべきであり、被告関口らには、三階建て建物を建てる認識があった以上、右のような日照阻害が生じることについて少なくとも過失があったといえる。
(略)
そして、受忍限度を超える部分が原告第一建物の一部であることや被告関口らが是正工事を行っていること及び前述のような原告側の事情を考慮すれば、本件の日照阻害による原告らの精神的損害は、原告一人につき一五万円が相当である。
[東京高等裁判所平成14年(ネ)第897号、平成14年(ネ)第2600号損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件平成14年11月18日(抜粋)]
以上の諸事情を考慮すると,被控訴人建物によって控訴人らが受ける日照被害は社会通念上受忍限度を超えるものと認められるものの,受忍限度の逸脱の程度が著しいものとまではいえず,被控訴人らに対し被控訴人建物の一部撤去を求めることは,過剰な負担を強いることとなるので許されないというべきであり,控訴人らの受ける日照被害に対する救済は金銭賠償によって償われるのが相当である。
【紛争解決手段】
日照権が侵害されていて,話し合いでは折り合いがつかない場合,どういった方法がありますか。
→建築紛争調整,建築確認に対する審査請求,仮処分,調停,訴訟,などのメニューがあります。
建築問題プロパーの手段として,裁判所以外の解決手段もあります。
当然,裁判所を利用した手続きもあります。
<日照権侵害の解決手段>
1 建築紛争調整
都道府県において,「建築紛争の調整」などの名称の手続きを設けています。
「あっせん」や「調停」と呼ばれることもあります。
当然,裁判のように強制的な判断を下す,ということはありません。
専門家が介在して話し合いをするので,対立が熾烈でなければ,この手続きで解決に至ることもあります。
2 建築確認に対する審査請求
建築確認自体にミスがあったという場合は,審査請求によって,建築確認の撤回を要請する方法もあります(建築基準法94条)。
3 仮処分
建築禁止の仮処分などです。
暫定的な証拠・主張で,工事自体を止めてしまうものです。
一定の保証金が必要です。
また,事後的に,本案訴訟での請求が認められなかった場合は,逆に損害賠償請求を受ける可能性もあります。
仮処分申請は慎重に検討すべきです。
4 民事調停
裁判所で,調停委員を介して話し合いをする手段です。
裁判所によっては,専門委員として,建築のプロ(建築士・土地家屋調査士など)か話し合いに関与してくれることもあります。
5 訴訟
最終手段として,裁判所に強制的な判断を求めるものです。
建築が始まっているなど,急を要する程度によっては,積極的・スピーディーに提訴することも多いです。
[建築基準法]
(不服申立て)
第九十四条 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第三条第二項 に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあつては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第六条第一項(第八十七条第一項、第八十七条の二又は第八十八条第一項若しくは第二項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる。
(略)
【太陽光発電と日照権】
太陽光発電システムを購入,設置しました。
その後,南側に高層マンションが建設される予定です。
購入費用を売電で回収する予定が崩れます。
どうしたら良いでしょうか。
→日照権侵害として建築差止や損害賠償請求を検討すべきです。また,状況によっては太陽光発電システムの販売業者に対する賠償請求も考えられます。
今後,問題が増えてくると予想される分野です。
従来の,「日当たりの良い場所で過ごしたい」という人間の本能的な欲求という枠組みを超えた問題です。
太陽光発電システムの保有者としては,日照が確保されるという期待が大前提です。
一方で加害建物の建築主としても,土地利用の一環,つまり所有権の一環として建物を建築する権利を持っています。
結局は,「日照を確保する期待・権利をどこまで認めるべきか」という理論になります。
現時点では裁判例の蓄積などはないです。
敢えて言えば,従来の日照権侵害の判断の枠組みを流用・踏襲するという流れになると予想されます。
別の視点で,太陽光システムを販売した業者としては,一定のリスクを説明する義務が認められましょう。
つまり「太陽光発電が永続し,売電により資金を回収する」という期待に対し,「この回収が不能となるリスクが具体的にこのような場合として挙げられる」という説明をすべきであるということです。
このような紛争が想定されるので,理想としては,建築基準法(やその施行令)の改正により,明文のルール化を進めることが望まれます。
【日照地役権による日照権の明確化】
法律改正など以外で,当事者間で日照の確保を明確にしておく予防策はないのですか。
→南側の土地所有者との間でルールを設定し,地役権として登記しておくと万全です。
理想としては,日照を阻害する可能性のある土地の所有者との間で,「建築の高さ制限」などを約束しておく方法があります。
さらにパーフェクトを極めるのであれば,その「約束」を合意書だけではなく,登記しておくと良いでしょう。
「建築物の高さ上限」を地役権として登記しておけば,仮に南側土地(承役地)所有者が,相続・売買などで変わっても「ルール」はそのまま存続します。
日照を確保した土地(要役地)の所有者が変わっても同様です。
登記していない場合,当事者(所有者)が変わると「ルールも排除される」という可能性があります。
[民法]
(地役権の内容)
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
【日照地役権の具体的設定例】
南側の土地所有者と「日照地役権」を設定する場合,どのような内容にすると良いのですか。
→建築物の高さ制限や,土地のうち一定の部分への建築を禁止する,というような内容です。対価として定期的な「地役権補償料」を伴うことが通例です。
当事者間の約束・合意ですので,自由度は高いです。
<地役権設定の例>
・単純な「高さ制限」
・土地の一部への工作物設置禁止
例えば北側5メートルには建物その他を一切建築しない,など
登記の方も,システムがきちんと対応しています。
土地の一部だけに制限を課する場合には,別紙として図面を登記に含めることも可能となっています。
このような特別扱いは地役権だけです。
地上権などは「一物一権主義」により,別紙の図面で一部を特定,という扱いはできません。
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