扶養的財産分与,慰謝料とのコンフリクト~離婚協議書は明確に~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 離婚して財産分与をもらうことになります。
  どうやって計算するのでしょうか。
  慰謝料との違いも教えて下さい。


ちょっとした工夫を怠ると,さらにトラブルが拡大します!

誤解ありがち度 3(5段階)
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1 一般の方でもご存じの方が多い
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A 夫婦共有財産を2で割る,というのが根本。
  実際には,将来の扶養を加算することもあります。
  慰謝料は本来は別ですがごっちゃのことも。


【財産分与の対象財産】
離婚の時には,財産をどうやって分けるのか知りたいです。
どんな財産を分けるのでしょうか。

→財産分与の対象になる財産は,結婚時から離婚時までに取得した財産全てです。

財産分与の対象は,夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産です(民法768条)。
「夫婦共有財産」と呼んでいます。
不動産や預金,株式などの有価証券,車や家財道具の動産,年金や退職金などの将来財産も対象になります。
しかし,結婚前から持っていた財産は各自独自の財産として,財産分与の対象にはならないので注意が必要です。
これを「特有財産」と呼んでいます。
なお,以上は「財産分与」の主要な趣旨である「清算的財産分与」と呼ばれるものです。
これ以外に「扶養的財産分与」「慰謝料的財産分与」も加算要素とする場合もあります。

【民法】
(財産分与)
第七百六十八条  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2  前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3  前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

【分与割合】
私は今まで働いたことがなくずっと専業主婦でした。それでも財産分与を請求できますか。

→できます。

個々の事情によって変わりますが専業主婦の方でも財産分与請求は可能です。
給与収入は夫だけ,という場合でも,妻はそれを陰で支えていた,つまり「内助の功」が半分程度ある,と考えられているのです。
結局,専業主婦でも共働きでも50%で分けられることが多いです。

【退職金の財産分与】
離婚をした場合,夫(相手方)は将来退職後,多額の退職金や年金を得ます。
私(妻)は収入が乏しくなります。
不公平です。夫の得た年金の一部を払ってもらうことはできないのでしょうか。

→結論としては可能です。

現在は,年金分割という制度により,年金を元夫だけが受け取る不公平は解消されています。
しかし,「退職金分割」という制度はありません。
これについては,退職予定時期が間近であれば,退職金として想定される金額を計算してその2分の1が財産分与として認められることがあります。
また,退職時期がやや遠いという場合には,「退職時に退職金の2分の1を払う」という将来の義務が認められるケースもあります。
なお,年金分割制度導入前は,裁判所が年金のうち元妻に分配する金額を算定した裁判例もありました(横浜地方裁判所平成9年1月22日)。  

【住宅ローンの処理方法】
夫名義の住宅はどのように財産分与で分けるのでしょうか。

→評価額から住宅ローン残額を差し引いた残額を2で割るのが典型的な方法です。

どちらも住まなくなって売却する場合は,このような方法で計算するのが公平です。
しかし,実際には,どちらかが住み続けることもあります。
この場合,次のような事情によって財産分与の方法,計算方法は変わってきます。
<住宅の財産分与で考慮される事項>
・住宅にどちらが居住するか/売却するか
・住宅ローンの残額,債務者・連帯保証人
・購入時の頭金
 →夫婦以外の者(実家)が援助した額・結婚以前の貯蓄から支払った額

【弁護士を付けるメリット】
財産分与の交渉で弁護士を付けると有利なことはありますか。

→不動産など,「評価」で大きく違う財産,特有財産と混在している場合などは弁護士が交渉するメリットが大きいでしょう。

確かに,財産分与は「夫婦共有財産を折半する」という構造です。
これ自体は単純明快です。弁護士の関与は不要とも思えます。
しかし,実際にはこのように単純には行かないことが多いです。
次のような財産については,その評価方法・財産分与の計算方法が画一的ではありません。
より有利な評価方法,計算方法を使って主張できる弁護士が付いた方が有利になると思われます。
逆に言えば,弁護士が付かない場合,不利な内容でも「不当」と分からずに応じてしまうことがあると思います。
<見解によって違いが出る財産>
・評価額が画一的ではない財産
 →不動産・高級車などの高価な財産
・夫婦の貢献度の割合が不明瞭な財産
 →退職金(既払い)
・夫婦の共有財産として扱うべきかどうか曖昧な財産など
 →妻の支援の結果夫が取得した弁護士や医師などの資格
 →将来受け取ると予想される退職金

【扶養的財産分与】
財産分与では,これからの生活の保障分の上乗せなどは考慮されないのですか。

→事情によっては,「扶養的財産分与」として加算することもあります。

結婚時に退職し,「キャリアーウーマン」の道を閉ざされている,というケースも多いです。
そのような場合に,離婚後,「従前の収入に戻れない」という不利益部分に着目し,これも広い意味での「清算」として財産分与に含める考え方もあります。

【扶養的財産分与の判断基準】
どのような場合に「扶養的財産分与」が認められるのでしょうか。

本来は「扶養」の義務は婚姻期間中に限定されます。
これを「離婚後」まで延長する,という特別扱いですから,認められるのは限定的です。

<扶養的財産分与の判断基準>
・年齢,健康状態,資産等による離婚後の生活の見通し
 例えば医療費を継続的に要する,などの事情です。
・再就職の可能性
 技能・資格や健康状態などが関係します。
・再婚の可能性
 年齢や健康状態などが関係します。
・分与する側の経済的余裕

【扶養的財産分与が認められる例】
どのようなケースで扶養的財産分与が認められているのでしょうか。

→元妻の経済的自立に大きな困難がある場合です。

典型的な例を示します。
<扶養的財産分与が認められたケース>
・長年専業主婦であった
・高齢・病気により,就職が難しい
・幼い子供を母親だけで養育している
・清算的財産分与や慰謝料が少額である
・元夫は経済的に余裕がある

【扶養的財産分与の金額】
扶養的財産分与が認められると,どの程度上乗せになるのでしょうか。

→明確な基準はありません。婚姻費用分担金に準じた算定方法が参考とされます。期間も3年程度,が平均的です。

元々,扶養的財産分与というものが,例外的な性格です。
婚姻期間中の「夫婦間の扶養」については,婚姻費用分担金と呼ばれ,しっかりした「基準」ができています。
扶養的財産分与に,敢えて最も近いものを言えば,この婚姻費用分担金ということになりましょう。
婚姻費用分担金の算定方法が参考になります。
ただし,算定においては「一生分」ということはなく,「自立の準備期間として最小限」ということになります。
これも個々の事情によって異なりますが,平均的には3年程度とされています。
具体的支払方法としても,「3年分を計算して上乗せする」ということは少なく,1か月分の金額を,1か月ごとに払っていく,ということが多いです。

【財産分与と慰謝料の関係】
財産分与をもらった後でも,別途に慰謝料をもらえますか。

→可能です。ただし,財産分与の趣旨によっては認められないこともあります。

一般的には,財産分与と慰謝料は別個のものです。
しかし,財産分与の趣旨として「慰謝料」を含めることもあります。
実際に,弁護士などの専門家を介さずに,当事者同士で「離婚協議書」を調印したケースでは,書面上の「財産分与」という文言の趣旨が不明確なことが多いです。
片方は「(清算的)財産分与」として捉えていて,もう一方は「慰謝料」の意味で捉えている,ということはよくあります。
慰謝料の趣旨の財産分与,のことを「慰謝料的財産分与」と呼んでいます。
結局は,「財産分与がどのような趣旨のものであったか」ということが問題となります。
逆に「財産分与には慰謝料(的財産分与)を含んでいない」という場合は,別途慰謝料請求をすることができる,ということになります(判例後掲)。

【最高裁判所第2小法廷昭和43年(オ)第142号慰藉料請求事件昭和46年7月23日(抜粋)】
離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、相手方の有毒な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。もつとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方におけるいつさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有毒の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべきである。そして、財産分与として、右のように損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合には、さらに請求者が相手方の不法行為を理由に離婚そのものによる慰藉料の支払を請求したときに、その額を定めるにあたつては、右の趣旨において財産分与がなされている事情をも斟酌しなければならないのであり、このような財産分与によつて請求者の精神的苦痛がすべて慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて慰藉料の請求を認容することはできないものと解すべきである。しかし、財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するには足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一事によつて慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられないものと解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和二六年(オ)四六九号同三一年二月二一日第三小法廷判決、民集一〇巻二号一二四頁)は、財産分与を請求しうる立場にあることは離婚による慰藉料の請求を妨げるものではないとの趣旨を示したにすぎないものと解されるから、前記の見解は右判例に牴触しない。

【慰謝料的財産分与の判断基準】
財産分与の中に慰謝料が含まれているかどうかはどのように判断されるのでしょうか。

→財産分与を合意するに至る経緯や,金額・支払方法のバランスが重要です。

本来,最初から離婚協議書の財産分与の項に,「慰謝料を含む」「含まない」を明記しておくべきです。
これも含めて,判断基準をまとめると次のとおりです。

<財産分与に慰謝料が含まれているかどうかの判断基準>
・離婚協議書の表現
 「財産分与には慰謝料は含まれない」と明記してあれば問題なしです。
・財産分与の金額や支払方法 と (元)夫婦それぞれの経済力
 慰謝料も含んでいるとみるには少ないと言える→慰謝料は含まれない方向
・財産分与の合意に至る経緯
 (例)
  ・財産分与の協議中は,「破綻の責任」には一切触れていなかった
  ・財産分与の協議後に不貞などの「有責行為」が発覚した
   →慰謝料は含まれない方向

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