止めることはできないのでしょうか。
「想定内」と言われることが多いのです・・・
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 眺望・景観は基本的に保護されません。
しかし,購入時の説明に反している場合は責任が認められましょう。
【眺望権】
見晴らしの良い高層マンションを買って,居住しています。
近くに別の高層マンションが建築される予定になっています。
眺めが悪くなるので何とか止めたいです。
止められますか。
→差止などの請求は特殊な事情がない限りできません。
眺望の権利・眺望の利益,というものは法的にはほとんど認められていません。
「日照権」の方がまだ認められやすいです。
確かにマンションは個人の貴重な財産です。
購入した時に「眺望」を重視していたことと思います。
しかし,だからといって,別の土地の所有者を拘束・制限することは通常はできません。
眺望権・眺望の利益が主張された裁判例はいくつかありますが,ストレートに「眺望権」を認めたものは皆無です。
【眺望地役権】
どのような場合に,眺望を阻害する建物の建築を止めることができるのでしょうか。
→眺望地役権の設定を行った場合が分かりやすい例です。
一定の広さのエリアを同一業者が開発しているケースにおいて,「眺望地役権」が活用されることがあります。
これは,高層マンションからの「眺め」に関係する範囲,つまり,前面の一定範囲の土地について,「nメートル以上の建築物は建てない」というルールを設定する方法です。
ただ,このルール(約束)は,そのままでは
「作った人(デベロッパー)には適用されるが,第三者(土地の購入者)には適用されない」
ということになります。
そこで,「眺望地役権の登記」を行うことにより,第三者にもこのルールが適用されることになります。
当然ですが,このルール(地役権)があれば,これに違反する建築を差し止めることができます。
裏を返せば,このようなルールがない以上,「眺望が悪くなる」リスクを常に抱えている,ということです。
【民法】
(地役権の内容)
第二百八十条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
【不動産登記法(抜粋)】
(地役権の登記の登記事項等)
第80条
承役地(民法第285条第1項に規定する承役地をいう。以下この条において同じ。)についてする地役権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
【購入時の説明義務違反による損害賠償・売買契約解除】
マンション購入時に,周囲に高層マンションが建築されることはない,と説明を受けていました。
その後,高層マンションが建築されることになりました。
分かっていたら買っていませんでした。
何か責任追及はできないのですか。
→説明義務違反,として損害賠償や売買契約自体の解除が認められるケースもあります。
「眺望」自体は法的に保護されないとしても,売買時における不当な説明自体は保護されません。
説明義務違反による売主や仲介業者の責任が主張された裁判例はいくつもあります。
<後掲裁判例>
売買契約解除が認められた裁判例→福岡地方裁判所平成18年2月2日
説明義務違反が認められなかった裁判例→大阪地方裁判所平成20年6月25日
結果としては,「眺望が確保されることを強調(セールス)したか」「眺望が阻害される可能性を説明したか」という事情によって判断が分かれています。
実際のトラブル事例では,そもそも,そのような説明・セールストークが証拠として残っているかどうかが非常に重要です。
よく登場する証拠としては,録音・メール・FAX・パンフレット,などがあります。
裏を返せば,これらがない場合は,立証の面で非常に困難が生じます。
【福岡地方裁判所平成17年(ワ)第121号、平成17年(ワ)第496号違約金請求本訴事件、手付金返還等請求反訴事件平成18年2月2日(抜粋)】
2 原告の債務不履行責任について
建築前にマンションを販売する場合においては,購入希望者は現物を見ることができないのであるから,売主は,購入希望者に対し,販売物件に関する重要な事項について可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があり,とりわけ,居室からの眺望をセールスポイントとしているマンションにおいては,眺望に関係する情報は重要な事項ということができるから,可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があるというべきである。そして,この説明義務が履行されなかった場合に,説明義務が履行されていれば買主において契約を締結しなかったであろうと認められるときには,買主は売主の説明義務違反(債務不履行)を理由に当該売買契約を解除することができると解すべきである。
これを本件についてみると,原告は,本件マンションの販売の際,海側の眺望をセールスポイントとして販売活動をしており,被告もこの点が気に入って5階と眺望の差異がないことを確認して301号室の購入を検討していたのであるから,原告は,被告に対し,眺望に関し,可能な限り正確な情報を提供して説明すべき義務があったというべきである。そして,上記認定の事実(前記争いのない事実等(5))によれば,301号室にとって,本件電柱及び送電線による眺望の阻害は小さくないのであるから,原告は,本件電柱及び送電線が301号室の眺望に影響を与えることを具体的に説明すべき義務があったというべきであり,原告がこの説明義務を怠ったのは売主の債務不履行に当たるというべきである。
そして,本件電柱及び送電線による眺望阻害の程度,被告は眺望を重視し,301号室と501号室のいずれかにするか決定する際,丙山から眺望には変わりがないとの説明を受けたので301号室に決めたものであることなどからすると,原告が上記説明義務を履行していれば,被告は501号室を購入して301号室を購入しなかったことが認められるから,被告は本件売買契約を解除することができるというべきである。
【大阪地方裁判所平成18年(ワ)第3755号損害賠償請求事件平成20年6月25日(抜粋)】
超高層マンションの高層階を購入した者からの眺望権主張が否定さる
したがって,眺望利益は,特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値をもち,このような眺望利益の亨受を一つの重要な目的としてその場所に建物が建築された場合のように,当該建物の所有者ないし占有者によるその建物からの眺望利益の亨受が社会観念上からも独自の利益として承認せられるべき重要性を有するものと認められる場合に限って,法的に保護される権利となるものと考えられる。
(略)
以下に,被告近鉄不動産が上記のような真実に反する説明を行って本件売買契約を締結した(その結果,原告らにおいて,将来的にも良好な眺望が保証されるものと誤信して本件売買契約を締結した)という事実が存するか否かを検討する。
(略)
以上のとおり,被告近鉄不動産において,本件売買契約締結に先立ち,本件敷地に中高層建築物が建築されて眺望に変化が生じる可能性があることを十分に説明していた事実が認められる。被告近鉄不動産において,本件敷地に原告らの眺望を阻害するような高層マンションが建つ可能性を説明せず,逆に,将来的にもそうした事態は生じないであろうと保証し,あるいはそのような信頼を与えるかのような言動を用いて本件売買契約を締結した(その結果,原告らにおいて,将来的にも良好な眺望が保証されるものと誤信して本件売買契約を締結した)という事実は認められない。
そうすると,上記のような被告近鉄不動産の説明義務違反ないし虚偽説明を前提として,被告らが原告らの眺望利益を違法に侵害した旨の原告らの主張は,その余の点を検討するまでもなく,失当である。
【国立マンション訴訟】
個人の住居ではなく,町並みとして,眺めの良かった場所に大きな建築物ができることにより悪化してしまう場合,止めることはできませんか。
→建築の差止はほぼ認められません。
国立マンション訴訟という有名な判例(後掲)があります。
建築の差止や損害賠償請求がすべて否定されています。
個人の所有住宅の場合よりも,「景観・眺望」の保護が低くなっていると言えます。
個人としての権利が侵害されているわけではなく,1地域全体の問題であるため,広い範囲での建築規制・開発計画という行政の判断が優先されるという考えが根底にあるのです。
【最高裁判所第1小法廷平成17年(受)第364号建築物撤去等請求事件平成18年3月30日】
良好な景観に近接する地域内に居住し,その恵沢を日常的に享受している者は,良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり,これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は,法律上保護に値するものと解するのが相当である。
もっとも,この景観利益の内容は,景観の性質,態様等によって異なり得るものであるし,社会の変化に伴って変化する可能性のあるものでもあるところ,現時点においては,私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものとは認められず,景観利益を超えて「景観権」という権利性を有するものを認めることはできない。
(略)
ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには,少なくとも,その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり,公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど,侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められると解するのが相当である。
(略)
以上の諸点に照らすと,本件建物の建築は,行為の態様その他の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものとは認め難く,上告人らの景観利益を違法に侵害する行為に当たるということはできない。
【東京高等裁判所平成15年(ネ)第478号建築物撤去等請求控訴事件平成16年10月27日(上記の原審;抜粋)】
4 景観被害について
(1)当裁判所の判断の要旨
良好な景観は,我が国の国土や地域の豊かな生活環境等を形成し,国民及び地域住民全体に対して多大の恩恵を与える共通の資産であり,それが現在及び将来にわたって整備,保全されるべきことはいうまでもないところであって,この良好な景観は適切な行政施策によって十分に保護されなければならない。しかし,翻って個々の国民又は個々の地域住民が,独自に私法上の個別具体的な権利・利益としてこのような良好な景観を享受するものと解することはできない。もっとも,特定の場所からの眺望が格別に重要な価値を有し,その眺望利益の享受が社会通念上客観的に生活利益として承認されるべきものと認められる場合には,法的保護の対象になり得るものというべきであるが,1審原告らが主張する大学通りについての景観権ないし景観利益は,このような特定の場所から大学通りを眺望する利益をいうものではなく,1審原告らが大学通りの景観について個別具体的な権利・利益を有する旨主張しているものと解されるところ,1審原告らにこのような権利・利益があるものとは認められないから,本件建物による1審原告らの景観被害を認めることはできない。
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