退職する時にまとめて請求すれば良いでしょうか。
落とし穴がある!のですが,さらに例外的運用も!
誤解ありがち度 4(5段階)
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A 消滅時効に注意!です。
2年と3年があります。交渉により「援用」を避けるケースも。
【残業代の消滅時効】
残業代が払われていません。
しかしなかなか言い出しにくいです。
退職する時にまとめて請求するということで問題ないでしょうか。
→時効で残業代請求権が消滅することに注意するべきです。
残業代は「賃金」の一種として,消滅時効は2年となっています。
ただし,事情によっては,不法行為として3年という解釈が成り立つこともあります。
この「時効期間」をしっかりと意識する必要があります。
【労働基準法】
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
【民法】
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
【消滅時効の起算点】
残業代の時効が2年だとすると,2年前のちょうど今日(の日付)の分の残業代以降が生きている,ということですか。
→「支給日」で考えます。
消滅時効の起算点(カウントスタート)は,「請求できる時(日)」です。
残業代は,通常は,給与と一緒に支給されるルールになっています。
つまり,給与の支給日,ということになります。
「2年」を前提として例を示します。
請求日から2年前の時点をAとします。
Aよりも後に支給日があるものすべてが「生きている」(=消滅時効が完成していない)
ということになります。
【時効期間が3年となる場合】
どのような場合に時効期間が2年から3年に延びるのでしょうか。
→従業員の要請を無視して,会社側が残業時間の管理制度自体を整えない,などの異常事態にある場合などは不法行為と認められます。
消滅時効制度の趣旨として,「請求できるのにしなかった」ということにより「保護を与えない」という効果が生じることになっています。
逆に言えば,「努力はしていたのに,応じてもらえなかった」という場合は,適用されない,ということになります。
ただし,賃金の消滅時効は条文として明文で規定されているので,これが適用されない,というのは異常性が特に高い場合のみ,と言えます。
2年間の消滅時効が適用されなかった裁判例(後掲)では,「従業員の勤務時間を把握する義務を会社側が怠った」というところが重視されています。
法律的には,「賃金請求権」ではなく,「不法行為による損害賠償請求権」として扱うことにより,「2年間の消滅時効」の適用を避けています。
結果的に,消滅時効の期間は3年間となります(民法724条)。
【広島高等裁判所平成19年(ネ)第172号時間外勤務手当等請求控訴事件平成19年9月4日;杉本商事事件(抜粋)】
同営業所の管理者は,控訴人を含む部下職員の勤務時間を把握し,時間外勤務については労働基準法所定の割増賃金請求手続を行わせるべき義務に違反したと認められる。控訴人の勤務形態が変則的であるため,管理者において控訴人の勤務時間を確認することが困難であったとか,控訴人が業務とはいえない私的な居残りをしばしば行っていたといった事情は認められない。また,被控訴人代表者においても,広島営業所に所属する従業員の出退勤時刻を把握する手段を整備して時間外勤務の有無を現場管理者が確認できるようにするとともに,時間外勤務がある場合には,その請求が円滑に行われるような制度を整えるべき義務を怠ったと評することができる。広島営業所の管理者及び被控訴人代表者の上記の義務違反が職務上のものであることは明らかである。したがって,控訴人は,不法行為を理由として平成15年7月15日から平成16年7月14日までの間における未払時間外勤務手当相当分を不法行為を原因として被控訴人に請求することができるというべきである。
被控訴人は,前記(2)認定の時間外勤務手当については,仮に存在しても,本件提訴が平成18年7月14日であることからすれば,労働基準法115条によって2年の消滅時効が完成している旨の主張をする。しかしながら,本件は,不法行為に基づく損害賠償請求であって,その成立要件,時効消滅期間も異なるから,その主張は失当である。
【消滅時効の中断】
時効で残業代が消えて行くのは止めようがないのでしょうか。
→労働審判,調停,訴訟などで中断されます。通知を送るだけでも一定期間は進行が止まります。
消滅時効の進行が止まる制度を「中断」と呼んでいます。
中断事由は民法147条に定められています。
1号「請求」
訴訟提訴,労働審判申立,調停申立など,裁判所を利用した公的な手続きのことです。
口頭や書面で「支払うよう請求します」と通知をしても,「請求」には該当しません。
2号「差押え、仮差押え又は仮処分」
差押・仮差押の申立です。残業代請求については「仮処分」はありません。
3号「承認」
これは債務者,つまり会社側が「残業代請求権(債務)があることを認める」と表示することです。
具体的には,書面に書いてもらうことがあります。
交渉の一環として途中で賃金債務承認書,を調印することがあります。
なお,本人や代理人から内容証明郵便で,残業代請求の「通知書」を出すことがよく行われます。
これは,法的には「催告」と呼ばれ,6か月間だけ,消滅時効が完成しない,という効果があります(民法153条)。
具体的には,消滅時効にかかりそうな状態で弁護士が受任した場合,まず最初に急いでこの通知書を発送します。
これにより,その後交渉し,6か月経過までの間に労働審判申立などをすれば通知書の時点から時効は進んでいなかったことになります。
「通知書を受け取っていない」と会社側に主張されることがないように,記録(証拠)が残る内容証明郵便を使うのが通例です。
【民法】
(時効の中断事由)
第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認
(催告)
第百五十三条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
【援用と交渉】
2年や3年以上前の分の残業代が払われることはないのでしょうか。
→交渉により,任意に支給されることはあります。
まず,前提として,消滅時効は「援用」しないと適用されません(民法145条)。
つまり,会社側が「10年分の残業代をすべて払います」というのは自由なのです。
ただ,ストレートに自ら進んで消滅時効完成分まで支払う,ということはまずありません。
あるとすれば,交渉により,「提訴や審判申立をしない」とか「(労働基準法違反などについて)労働基準監督署への通告をしない」という会社側の要望と引き換えに「消滅時効の援用をしない」という合意に至ることが典型例です。
ただし,実務上,現実的には,消滅時効は援用するのが大原則です。
「敢えて援用しない」というのは数としては少ないです。
【民法】
(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
【在職中の残業代請求】
急いで,在職中に残業代請求をするケースはあるのでしょうか。
→法的には制限されません。現実にそのようなケースもあります。
法的には請求権を行使することは在籍の有無とは関係ありません。
後は,職場環境,雰囲気,気持ちの問題です。
確かに,一般的には,一緒に仕事をしている環境上,「残業代請求」は過激な感じかもしれません。
しかし,そのやり方次第で影響は大きく違います。
従業員在籍中に代理人として弁護士が残業代を請求したケースにおいて,弁護士から経営者に丁寧に制度を説明した結果,経営者が「誤解」に気付き,円満に解決したということもありました。
むしろ,その件がきっかけとなり,会社全体でコンプライアンス(法令順守)を徹底することに発展し,多くのリスクを早期に発見・解消できた,というケースもあります。
現在は,「権利意識」「順法精神」が尊重されています。
一昔前の「非常識」が必ずしも「非常識」ではなくなっていると感じることがよくあります。
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