受益権指定権者~臨機応変な”遺言”(代用信託)~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 信託で「受益権の承継先を指定しないで指定権者を決める」というのがよく分かりません。
  どのような制度ですか。


昨日の話しの続きですね。

誤解ありがち度 4(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 「受益権指定権者」で,信託契約書作成後,臨機応変に「変更」できるシステムが作れます。

例によって,便宜的に,小さなQに小分けにします。

【受益者指定権を用いた信託】
将来の相続ではなく,もっと臨機応変に対応できる方法はありませんか。

→受益者指定権者,を設定した信託であれば,柔軟な対応が可能です。

「受益者指定権者」を信託契約(信託行為)で定めておけば,その者の判断で,受益者を別の人に動かせる(指定できる)ことになります。

【受益者指定権利用の具体例】
どのような形で受益者指定権を活用すると良いでしょうか。

→会社経営者で言えば,後継者候補に受益権を与えておき,将来仮に事業を承継しない状況に変わった場合に,受益権を取り戻す,という方法が典型例の1つです。

仮に,株式そのものを生前贈与した場合,後から状況が変わっても「強制的に取り戻す」ことはできません。
<事情の変化の例>
・事業を承継しない方向性に変わった
・(子が)親の面倒をみなくなった(関係が悪化した)
・連絡が取りにくくなった

このような場合に,一旦渡した受益権(株式や議決権)を,「受益者指定権者」の判断1つで取り戻すことができます。

【受益者指定権者利用の注意点】

→贈与税の課税という大きな落とし穴があります。他にも想定しておくべきことはいくつかあります。

1 贈与税の課税
指定権者の「指定」により,受益権の所在が変わると,税務上「贈与」として扱われます。
民法上は,オールマイティーに受益権の所在を変えられるという利便性に注目しがちです。
しかし,課税上は非常に高額な負担となることもあります。
要注意です。
結局,そこまで「気軽」には使えません。
本当に緊急措置として,一旦渡した財産を引き上げる,という場合に限定して使うという考えでいたほうが良いでしょう。

2 「受益権を失った」ことの通知
指定権者の「指定」により,従前の受益者は受益権を失います。
そして,この際,受託者は,「元の受益者」に対して「受益権を失った」ことを通知する義務があります(信託法89条4号)。
当然と言えば当然です。
しかし,このような局面は多少なりとも「対立的」であるはずです。
「通知義務の不履行」などでクレームを受ける可能性があります。
そこで,信託契約において「受益権を失った者に対する通知は不要」という旨を規定しておくとベターでしょう。
勿論,実際には何らかの手段で知らせることにはなるでしょう。

3 「受益権指定権者」の相続
受益権指定権者が亡くなった場合,この「指定権」は相続されないのが原則です(信託法89条5号)。
そこで,結果的に「受益権のコントロール」はできない状態となります。
これに対しては,信託契約で「受益権指定権者の承継」について規定しておくとベターでしょう。
受益権指定権者が亡くなった時には配偶者(妻)に指定権を承継させる,というのが典型例です。

【議決権を生前に承継させるリスクの回避策(まとめ)】
株式(議決権)を後継者候補に生前に渡すことのリスク回避策としてはどの方法が良いのでしょうか。

→種類株式よりも信託の方が細かい設定の自由度が高いです。信託の設定・設計にもいくつかの種類があります。

生前に株式を後継者候補に渡すということは多くのメリットがあります。
例えば,今後株式評価額が上がると予想される場合,課税額を低く抑えることにつながります。
逆に,後継者から見ると,株式承継後は,株価が上昇する方向にモチベーションを持てるでしょう。
一方で,一定のリスクも想定されます。
<リスクの例>
・財産(株式)を承継した者との関係悪化
・財産(株式)が想定外の者に承継される
 相続が典型例です。遺留分が絡むと特にコントロールが難しくなります。
・会社後継者候補者は,まだ従業員からの人望が不十分
 意図的に,一定の範囲で現経営者(株主)が関与している方が良い段階もあります。

1 種類株式
株式自体に制限が付いている株式を使うのも一定の歯止め(リスク回避)になります。
無議決権株式,取得条項付株式などのことです。
しかし,ある程度硬直的で,自由度がやや低いです。

2 信託
設定・設計の自由度は高いです。
特に,一定の議決権を旧株主(現経営者)に残すなどの設計の自由度は高いです。
信託の種類としては,大きく2種類の方法があります。
(1)受益者連続型信託
 ・受益者が死亡した時の承継先を決めておく方法
 承継した者が亡くなった場合,想定外の者が相続によって財産(株式)を承継する,ということを防ぎます。
(2)受益者指定権者
 ・指定権者の判断で受益者を指定(移動)できるという方法
 承継した者との関係が悪化した場合など,指定権者の判断で財産(株式)を取り戻すことができます。

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