家賃を上げたいのですが,賃借人は反対しています。
家賃を上げるべきかどうか,どうやって計算すべきですか。
難しいですよ。斬り込みます!
※建物・土地ともに賃貸借なら基本的に共通です。
誤解ありがち度 3(5段階)
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A 社会・経済事情の変動を広く考慮して増額すべきかどうかを判断します。
【賃料増減額請求】
賃料を増額すべきかどうかの理論は科学的(法律的)に決まっています。
借地借家法11条(借地の場合),32条(借家の場合)に規定されています。
賃料増減額についてまとめると次のようになります。
<賃料増減額の判断要素>
1 不動産に対する租税その他の負担の増減
→公租公課,維持修繕費などの必要経費の変動
2 不動産の価格(評価額)の上昇若しくは低下
→客観的な対象不動産の評価額の変動(「賃料は不動産の『利回り』」という考え方)
3 その他の経済事情の変動
→物価指数,国民所得,賃金指数などの統計的データとのバランス
4 近傍同種の不動産賃料に比較して不相当となったとき
→近隣の「賃料相場」とのバランス
【借地借家法11条(地代等増減請求権)】
1 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
【借地借家法32条(借賃増減請求権)】
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
【継続賃料の鑑定】
具体的に,適正な賃料を算定するにはどうしたら良いのでしょうか。
→算定は容易ではありません。正確に算定する場合は,不動産鑑定士による「鑑定評価」が必要となります。
借地借家法で定められている4つの要素について計算するのは単純ではありません。
不動産鑑定士が「継続賃料の鑑定」として評価(計算)する,というのが最も正式・正確です。
不動産鑑定士の鑑定では,「不動産鑑定理論」に基いた科学的な考察,算定がなされます。
しかし,当然ながら,計算上「主観要素」が入ります。
実際に,鑑定する不動産鑑定士によって結果が異なることは多いです。
現実的に,「継続賃料の鑑定」については,あまり扱っていない不動産鑑定士がほとんどです。
信頼できる不動産鑑定士に依頼することがポイントです。
【継続賃料の簡易的算定】
適正な賃料について,不動産鑑定士に頼まなくても概算で計算できないでしょうか。
→概算であれば,「物価スライド方式」に近い算定方法で計算できます。
<簡易算定方法>
適正賃料(概算) = 直近の賃料設定(初回or増減額時) × その後の物価変動率
なお,「物価変動率」についても,より簡易に,対象不動産の固定資産税評価額の変動率を用いたり,路線価の変動率を用いることも便利です。
ただし,これはあくまでも,正式・正確な算定方法ではありません。
「簡易」「概算」「目安」という性質の算定方法です。
【物価スライド方式の特約】
賃貸借契約書に,最初から,「賃料は物価スライド方式で変動する」という約束を入れておけば賃料の増減額が明確になるのではないですか。
→非常に便利で公平だと思えます。しかし,物価スライド方式の特約が「無効」とされるリスクもあります。
物価スライド方式は,客観的なデータを元に賃料を算定するというものです。
これ自体は,無用な主張の齟齬を防ぎ,主観を入れない科学的計算なので公平・公正だと思えます。
さらに,借地借家法に規定される「4要件で計算するべき」というのは強行法規ではありません(借地借家法16条,37条(強行法規)で,11条,32条は除外されている)。
※強行法規=「法律上の規定を特約で排除できない」というルール
ただし,「不合理な程度が著しい」という極端な例では「公序良俗違反」(民法90条)などの一般的なルールにより無効とされる可能性があります。
裁判例でも,物価スライド方式の有効性が争われた例はありますが,概ね「有効」とされています。
【賃料自動改定特約の有効性】
賃料の変動についての特約が無効とされる例はどのようなものでしょうか。
→増額の幅が大きいケース,増額があっても減額はないケースなどが無効とされる典型例です。
最高裁の判例を2つ挙げておきます。
<ケース1 最高裁平成15年6月12日(後掲)>
・当初の地代=更地評価額の8%相当額(高い)
・特約=「但し,本賃料は3年毎に見直すこととし,第1回目の見直し時は当初賃料の15%増,次回以降は3年毎に10%増額する。」
↓
この特約は無効であり,結果として,賃借人は「賃料減額請求」が可能
<ケース2 最高裁平成16年6月29日(後掲)>
・特約=「3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降したとしても,それに応じて賃料の減額をすることはない」
↓
この特約は無効であり,結果として,賃借人は「賃料減額請求」が可能
難しいお話しを最後まで聞いて(読んで)いただき,ありがとうございました。
実は,実際の解決!において重要なのは,この前提を踏まえて「手続き」です。
おもしろい落とし穴?があったりするんです!
これはまた別の話し。
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【最高裁判所第1小法廷平成14年(受)第689号土地賃料改定請求事件平成15年6月12日(抜粋)】
(4) これを本件についてみると,本件各土地の地代がもともと本件各土地の価格の8%相当額の12分の1として定められたこと,また,本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は,いわゆるバブル経済の崩壊前であって,本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併せて考えると,土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で,時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として,3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は,そのような経済情勢の下においては,相当な地代改定基準を定めたものとして,その効力を否定することはできない。しかし,土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては,上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより,本件増額特約によって地代の額を定めることは,借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。したがって,土地の価格の動向が既に下落に転じ,当初の半額以下になった平成9年7月1日の時点においては,本件増額特約の適用を争う上告人は,もはや同特約に拘束されず,これを適用して地代増額の効果が生じたということはできない。また,このような事情の下では,同年12月24日の時点において,上告人は,借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権を行使することに妨げはないものというべきである。
【最高裁判所第3小法廷平成15年(受)第751号地代減額確認請求事件平成16年6月29日 (抜粋)】
本件各賃貸借契約の当事者は,本件特約が存することにより上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使を妨げられるものではないと解すべきである