原状回復の範囲~退色は光子のしわざ~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

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大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q マンションを借りて住んでいました。
  退去したのですが,オーナーさんから,各種リフォーム・クリーニングなどの費用を請求されています。
  払う必要があるのでしょうか。


有名判例があったりするんです。

誤解ありがち度 2(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 契約書に原状回復について書いてあるかどうか,書いてあったとしたらその内容によって決まります。

場合分けで行きます。

【契約書に「原状回復」について書いてない場合】
→原則として補修費用負担の義務はありません。

民法上「原状回復」という制度はあります(545条1項)。
一方で,家賃の支払に対応して,オーナーが維持・管理を行うという基本構造があります。
そこで,次のように割り振りがされます。
・「経年劣化」「自然損耗」による変化・老朽化→オーナー負担
・それ以上の「破損」→賃借人負担

例えば,故意や過失で建物や建具を破損してしまったような場合は賃借人に補修義務があります。
当然ですね。というか,建造物損壊罪,という犯罪にもなりかねないですね。
しかも,壁・床などなどの「退色」って分かりにくいですよね。
紫外線その他の「光」が色素を分解してまうんです。
「光」は単なる電磁波かと思ったら「粒子」(光子;みつこではなくこうし)でもあって,周波数に比例したエネルギーを持っているんです。
このエナジーを利用しているのが太陽光発電ですが・・・
賃貸借契約との関連性が薄くなったので。
話し,戻ります。


【契約書に「原状回復」の特約がある場合】
→支払義務はあります。
 ただし,一定範囲の補修に限られます。

賃借人が「経年劣化」以上の補修義務を負う,とされている賃貸借契約書は多いです。
原則を修正しているので,そのような条項を「特約」と呼びます。
実際に契約書に「特約」とは書かれていないこともあります。ややこしい!
特約がある以上は,基本的には,そのとおりに賃借人に補修費用負担の義務があります。
しかし,重大な「例外」があります。
賃借人が十分に理解していなかった場合や特約の内容が非常に不合理な場合は特約が無効となります(後で詳しく)。
とにかく「原状回復」というと,日本語的には「新品状態に戻す」と考えてしまうでしょう。
法律的にはそのような解釈とは大きく異なります。注意が必要です。

【原状回復の特約が無効となる場合とは】

→多くの裁判例で基準が作られています。

原状回復の特約の効力が争点となった判例のうち,新しいものを後掲します。
これだけだと全体像が分からないと思います。
多くの裁判例の蓄積による基準のまとめにトライ!

【原状回復特約の有効要件】

1 賃借人に原状回復義務を負わせる必要性・合理性がある
 例;引き換えに家賃を低く設定した→有効方向
2 内容が,著しく賃借人に不利,とは言えない
 例;短期間での退去でも壁紙・床・天井の全面貼り替え→無効方向
3 具体的な修繕費用の範囲が契約書などに明記されている
  + しっかりと説明した
  + 賃借人が十分に認識・了解した
 例;すべて印字された定型契約書で読み合わせせずにサインだけした→無効方向
4 内容が公序良俗に反しない
 例;古い建物なのに「新築同様の状態にリフォームする」→無効方向

【最高裁判所 平成17年12月16日(抜粋)】

建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。

感想として。
「通常損耗補修特約」ってネーミング,すごいですね。
ジヅラだけ見ると,「当たり前やん」と思いませんか。
「通常は損耗補修するのは当然だろ」と。
しかしややこしいんですね。
「賃借人は通常の損耗を補修する必要はない」のが原則でしたね。
おやっ?と思った方は今一度,今日のブログを読み返していただければと思います。

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