傷病休職・退職~労使と夫婦を比較?~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 会社経営者です。
  欠勤・早退・遅刻が激しい従業員が居ます。
  客観的にどのような対処法が考えられますか。


「労使」を「夫婦」になぞらえたりしましょう。

誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

お陰様でランキング1位継続中!
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
人気ブログランキングへ
↑文系弁護士のブログも見てみよう!↑
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 欠勤の理由によっては休職,またその程度によっては解雇という手段があります。

【従業員に落ち度あり】

まず,従業員の落ち度による場合は,当然,就業規則に則り,各種ペナルティを課すことができます。
単純な寝坊による遅刻などが典型例です。
このような場合は,職場の秩序維持という意味では,適切なペナルティを課すのは雇用主の義務とも考えられます。

【従業員に落ち度なし(傷病)】

次に,従業員に落ち度がない場合はどうでしょうか。
精神疾患,持病などが典型例です。
この場合は,「傷病休職」を適用するのが通例です。
その期間によっては,「解雇」「退職」とできるよう就業規則や労使協定で定めておくと良いです。

【持病のことを聞いてないよ!】
→勿論,採用時に虚偽申告があれば,解雇を含めた対処が可能ということはあります。

採用時に,明確に心身のコンディションについて質問して,回答・説明した内容が虚偽であれば,当然,「従業員の落ち度」と言えます。
内容によっては解雇を含めて懲戒処分の対象となります。

【病気の内容を聞ける?】
プライバシーへの配慮も気になりますね。

→必要な範囲で聞くことは問題ありません。

雇用主が従業員の心身のコンディションを把握するのは義務の1つです。
就業規則に,心身の故障についての申告について規定しておくのがベストです。

実際に,従業員の心身のコンディションによって,業務遂行に影響が出るわけです。
雇用主が把握しておくのは当然です。
また,仮に従業員のコンディションによっては,休職その他の適切な措置を取る義務もあります。
例えば,逆に従業員過度のストレスを抱えていることを気付かず,症状が悪化した場合,雇用主として責任を追及されることもあります。
従業員のコンディションの把握は権利というよりも義務と言えます。
より明確化するために,就業規則に,心身の故障による欠勤時に診断書を提出するルールを明記しておくのがベストです。

【休職期間の給与や社会保険など】
→傷病休職については,給与支払の義務はありません。
 社会保険の負担は継続します。
 これを従業員に求めることもできます。

念のため,休業期間の金銭的な扱いについては,就業規則に明記しておくと良いです。
社会保険については,雇用主が負担することは続きます。
いわば「立て替えている」状態になります。
法律的には,この分を従業員に求めることは可能です。
これもやはり,就業規則に明記しておくと良いです。

【休職期間の決め方】
→個別的な事情による調整が可能なようにしておくとベターです。

まさに,従業員の個別的な事情によって,どのように扱いたいか,は変わってくるでしょう。
要は,「重要な人材だから何年でも待っていたい」と思うか,「他の人を雇って安定的に業務を進めて欲しい」と思うか,です。
雇用主としても,業務を円滑に進めるということは非常に重要です。
社会的にも,職場のメンバーからの要請という意味からも。
そこで,就業規則上,傷病休職の期間は柔軟性を持たせておくと良いです。
一定期間を規定しつつ,延長も可能なようにしておくのです。

この点!「夫婦」と比較。
夫婦の片方が精神疾患になった場合。
もう片方は最大限協力すべきです。
条文に書いてます。


【民法770条1項4号】(離婚原因)
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

そう,「強度」かつ「回復見込なし」の場合だけ解放されるのです。
精神疾患の方のパートナーも苦しいですが,その程度は
「婚姻という契約の想定されるリスクの範囲内」
とされているのです。
「まさにそんな困った時に協力するためのパートナーじゃないか」
という教えです。
ちなみにこの条文「削除しよう」「削除しよう」という声が高まっているのが現状です。
時代の流れによる価値観の変化の兆しです。

という「夫婦のルール」を考えると,「労使」の場合は「やや緩い」ということになります。
「夫婦」と「労使」の違いは。
「夫婦」→感情・愛情に基づく。
     「恋愛とは違って,現物主義」という考えもあるようですが・・・これは別の話し。
「労使」→あくまでも事業継続が前提課題。PFドラッカーの教えにもありましたね。
     もしドラも良いし,あっちゃんも良いんだけど,組み合わせはアカンかったと思うのは・・・別の話し。


【具体的な休職期間の例】
→3~6か月という規定が多いです。
 また,勤続年数によって変動するという決め方もあります。

個別的な事情によって,延長できるようにしておくと都合が良いこともあります。

【休職期間満了時は「退職」or「解雇」?】
→「解雇」だと,解雇予告手続,解雇権濫用の法理の適用があることになります。

「解雇」の場合,どんなに就業規則や労使協定があっても,「解雇無効」と主張されるリスクが残ります。
自動的に「退職」するルールになっていれば,解雇予告手続は不要ですし,また,解雇権濫用の法理の適用もありません(東京地裁昭和30年9月22日)。

【「退職」ルールの注意点】
→医師の診断書提出を求めるとベターです。
 また,公平に運用すべきです。

「退職」という扱いについては,万が一にも,事後的に争いになることを防止すると良いです。
具体的には,医師の診断書提出を就業規則でルール化しておくことです。
細かいですが,雇用主指定の医師による診断書をもらえるようにしておくのも1つのアイデアです。
というのは,争いになる点の典型例は,「復職できた可能性」だからです。
また,医師によって診断内容が異なると言うことも少なくないのです。
次に,「別の従業員については,休職期間を長期間延長している」という主張をされるケースもあります。
このような場合は,「休職→退職 というルールが形骸化している」として効力がないと判断される裁判例もあります。
個別的な事情により休職期間を延長させるのは良いルールですが,運用には気を付けないといけません。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害

お陰様でランキング1位継続中!
にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
人気ブログランキングへ
↑文系弁護士のブログも見てみよう!↑
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

震災関連法律相談Q&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
個別的ご相談,助成金申請に関するお問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
03-5368-6030
050-5538-5030