支払猶予の要請を受けたら~債務名義の種類と弾性限界~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 会社の法務部の者です。
  取引先からの支払が遅れています。
  先方は,もうちょっと期限を延ばして欲しいと言っています。
  仕方ないですが,できるだけ支払を確実にさせたいです。
  どのような対策がありますか。

誤解ありがち度 2(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

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A 「債務名義」と呼ばれる,「強制執行できるもの」を作っておくと良いです。

またこれ,へぼいネーミングですね。
中身が,語感からの想像力を超える状態。
というのは置いといて。
ちょっと前提から行きます。

仮に取引先が支払いをしてくれない場合→強制的に回収することを考えます。
強制執行と言います。

強制執行をするためには何が必要か。

強制的に債権を回収するには,判決などの債務名義を取得しなければなりません。
裁判所に債務名義を提出すると,強制執行(差押など)をしてくれます。

債権の回収方法にもいくつかありますが,相手の財産を競売して回収するには,債務名義が必要になります。
債務名義とは,強制執行を開始するための書類の総称ですが,その典型例は判決です。
売掛金の支払いを命じる裁判を起こし,勝訴すると,裁判所が支払いを命じる判決をしてくれます。
裁判で勝訴するためにも,日常的に取引の証拠を残しておくことが重要なのです。

まだ前提が続きます。

判決を取得した後,どうやって強制執行するのでしょう。

判決を取得したら,対象財産を決めて,裁判所に強制執行の申立をします。
強制執行の対象として典型的なものは次のとおりです。
1 不動産
2 預貯金
  →どこまで特定すべきか,はこちら
3 売掛債権
逆に言えば,取引先の財産状況を把握していることが前提となります。
資産の探し方はこちら

もうちょっと前提というかおさらいは続きます。

判決以外の債務名義の種類。

訴訟をしなくても取得できる債務名義は数種類あります。
1 仮執行宣言付支払督促
2 和解調書・調停調書
3 執行認諾文言の付いた公正証書(いわゆる「執行証書」)
  ただし,これは金銭の支払(または有価証券の引渡)に限られます。

予防法務的な観点から言えば,回収リスクの高い取引先からは,あらかじめ執行証書を取りつけておくのがよいでしょう。
取引先の代表者(または委任された者)と一緒に公証役場に行き,公証人に作成してもらいます。
その文面の中に「支払いを怠ったときは強制執行して構いません」といった文言を付しておくことが必要です。
「強制執行認諾文言」とか呼ばれています。
執行証書を作成しておくことで「支払いをしないと強制執行される」という心理的な強制がはたらき,任意の支払いが期待できます。
当然ですが,相手方としては「退路を断たれた」という感覚になります。どのような場面でも好ましいやり方とは限りません。

程度が過ぎると壊れる。過ぎたるはまた及ばざるがごとし。昔の人はこれ,うまいこと言うなぁ。(話し,戻ります,までスキップ推奨
バネは引っ張り過ぎると戻らなくなる。ネジは回し過ぎるとスカスカになる。
材料力学的に言い換え。
弾性限界点(降伏点)を超えると塑性変形が生じる。
バネやネジは分かりやすいけど,工場の機械などはミクロの世界で塑性変形が生じます。
結果的に「目に見える損傷はないけど脆くなっている」となります。
そう!小さな地震を経験した原発,にこの疑惑がかかっています。
想定した揺れ未満でも壊れる,ということがあるかも。
ほなら,力を掛けてテストしよう=ストレステスト
話し,戻ります。

本題に近づきます。

友好的な取引関係を続けたいので,事前に強い書面を取り付けることが難しいこともありましょう。
事後的に,相手方が支払猶予を求めてきた場面で執行証書などを作成する,ということならば「関係を悪化させる」ということにはならないでしょう。
つまり,次善の策として,取引先が支払いを怠り,又は支払いの猶予を求めてきた時に,強力な書面を取り付けるということが考えられます。
具体的には,支払いを猶予する代わりに債務名義の取得に協力するよう求めることです。
取得する債務名義は執行証書でもよいですし,訴え提起前の和解による和解調書,民事調停による調停調書でも構いません。

ようやく本題。

取引先からの支払が遅れ,猶予を申し入れてきた場合。
どんな債務名義を作成したら良いでしょうか。

請求権の内容,要するスピード,主張の相違の有無などによって適する手続きは変わってきます。

1 執行証書
金銭の支払(または有価証券の引渡)にしか使えません。
明渡・商品の引渡,については債務名義としては使えません。
公証役場に予約を入れて,行くことになります。
当日に予約が入れられることも多いです。
金銭の場合はこれが良いでしょう。

2 訴え提起前の和解
金銭の支払以外にも使えます。
オールマイティーなのですが,予約(期日)が数週間先になってしまうことも多いです。
合意管轄を用いた短縮法もあります。

3 調停(調書)
双方の言い分が食い違うなど,紛争性がある場合に適しています。
場合によっては,すぐに債務名義(調停成立)ができないこともあります。
このようなことを避けるために,極力証拠(記録)を出来る範囲で残しておくべきです。

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