映画「ふるさと」をご存じでしょうか?
1983年に制作された日本映画ですが、そこまでメジャーではないかもしれません。
これがすごい映画なんです。役者の演技力が卓越しているのです。
主人公は、認知症(当時は痴呆症と呼ばれていました)のおじいちゃんなのですが、それを演じる加藤嘉さんの演技が
、まるで本当の認知症の方のように自然なんです。圧巻でした。彼以外の役者さんも、皆さん素晴らしく、演技ということを完全に忘れその世界に没入してしまいました。
ダム開発により近い将来消滅してしまう村の中で物語は進みます。
加藤嘉さん演じる認知症を患った老年期の男性は、妻との死別をきっかけに症状が進行し、正常な面と病的な面とが目まぐるしく移り変わり、本人も家族もそれに振り回されます。その男性を軸として、村の生活を描きます。
人間の心も、生活環境も、時代も、変わっていくものです。でも、そこには変わらないものもきっとある。
何が正しいのか、何が正しくないのかなどの二極化思考、あるいはコスパなどの合理的思考に囚われがちな私は、
それにより失っているものも大きいと改め認識しました。
ネタバレになってしまうため、ストーリーについてはここでは触れません。
刺激に富み、テンポが速く、あるいはファンタジー的なもの、過激な表現など慣れている人には、もしかしたら退屈に感じてしまうかもしれません。はっきりした結論もありません。そこにある日常が過ぎ去っていく様を見届ける類の映画です。
しかしながら、複雑に入り混じる感情、圧倒的に美しい日本の山村の原風景、卓越した表現力、それだけでも十分に見る価値がある作品です。
観た人が何を感じるか、それもきっと自由なのです。
感情が揺さぶられ、言葉にできに余韻が残りました。