患者さんを診察するとはどういったことでしょうか。

私は、その患者さんの人生に関わりを持つ、大変重い責務を伴うものだと考えています。

 

もちろん、エビデンスに基づいた適切な治療法を提供できることは大切だと思います。

でも実臨床では、特に精神科の場合、治療者の経験と心構えもとても大事だと考えます。

エビデンスだけが求められるのであれば、これからの時代はAIのほうがよっぽど優れた治療者となれるでしょう。

でもたぶん、精神科に関しては、そんな時代は来ないと思います。

患者と治療者、人と人の関わりこそが、回復に最も必要となるからです。

 

 

私は精神科病院にも勤務しており、またクリニックにも勤務しています。

 

精神科病院外来とクリニックでは患者さんの層が異なります。

 

精神科病院の外来は、やはり入院設備があるため、比較的重度の患者さんがいらっしゃいます。

双極性障害、統合失調症、認知症、などなど、社会的なストレスによる反応というよりは、疾病自体の症状、障害が問題となって来院される方が多いです。単独で来院される方もおりますが、ご家族と一緒に来院される患者様も多いです。

 

一方、クリニックの外来では、会社や家庭内の人間関係、仕事の負荷による疲弊など社会的要因をきっかけに反応を生じ、精神的不調を来した方が多くいらっしゃいます。疾患としてはうつ病や適応障害、睡眠障害、不安障害などが多く、単独で来院されることが多いです。

 

どちらの外来も大変は大変なのですが、私にはクリニックで外来をやる方が大変かもしれません。

 

クリニックに通院する患者さんは、社会参加されている方が多いです。つまり仕事をしている方が大半です。それが精神的不調により仕事ができなくなり、収入面でも窮地に立たされている方がいます。家のローン、子供の学費、生活費など、抱えている金銭的負担も多い中、仕事ができず、収入が閉ざされているのです。精神疾患は回復にどうしても時間がかかります。風邪のように短期間で回復するものでもなく、状態改善後も再発が繰り返されることもあります。そういった患者さんの治療は、できるだけ早く、そして再燃をしないように、確実に仕事に復帰できるように、治療をしなければなりません。収入減を絶たれている患者さんから、診療代をいただくわけです。何としても結果を出さなければなりません。でも治療者が焦りを見せると、それは患者さんにも伝わります。ですから、こちらはそれを見せないように努めなければならないのです。実はなかなかのプレッシャーなんです。特にご家族が診察に付き添われる場合は、より一層プレッシャーがかかります。

 

プロとして、診察時にリラックスできる環境を整え、不安に寄り添い、安心して治療に臨めるような空気を作れるか、それが肝です。どの診療科でも同じですが、ほんの一部かもしれませんが、患者さん、あるいは患者さん家族の人生に関わることになるので、改めてなかなか責任の重い仕事だなと感じています。

 

なんだか真面目というか、重いというか、そんな話になってしまいました。

大丈夫か? この人?と感じる方がいらっしゃるかもしれません。

 

大丈夫です!

別に悩んでいるわけではないので、ご心配なく!