(つづき)
私:大きい病院です。ふたりは看護師です。
主任は当時、ベテランの看護師です。面倒見のいい、姉御肌的な。テキパキ仕事もできて頼もしい存在。
Bさんは彼女の下にいる後輩という感じがします。
入ってきて三年とか? まだ駆け出しという感じ。
Gさんも、そこにいますね。
経験は十年ちょっとぐらいかな。
ここは軍の関係者だけが来る病院みたい。
本当に忙しくて、みんなテキパキ働いてるんですけど、仲が良くてうまくまとまってる。
患者もそうだけど、看護師さんたちも「お国のため」と思って一生懸命働いてるので、みんなの心が一つになってるからかな。
Bさんはひたむきに頑張る子だったから、主任は「この子、絶対いい看護師になる」と思って、目をかけてすごく可愛がってたんです。一生懸命仕事を教えて。
BさんはBさんで、期待に応えようとする。 仕事を覚えなきゃ。早く一人前にならなきゃって。
だから、少しでも手が空くと、主任の邪魔にならないように気を配りながら、そっと後ろについて歩いて、仕事を目で見て覚えようとしている。
ある日、主任は薬品庫で薬品の入れ替えか何かをしていて。
薬品庫は新米の看護師が入れるような場所ではなかったんですよ。劇薬も置いてあるし。
Bさんはこっそり主任の後をつけて、すぐ後ろに立って気づかれないように仕事を見ていた。
そんなこととは知らない主任は、薬品を入れ替えようと、手に持ったまま振り向いたら、そこにいたBさんにぶつかって。
その瞬間、薬品(液体)がBさんの肩から腕にパーッとかかっちゃった。
すっごいたくさんかかったわけではないんですよ。
パパパッって飛び散った感じ。
でも、劇薬だったので、ピリピリって焼けつくような痛みで。
後遺症として、軽い腕の痺れが残った。
手が動かないとか、そういう不自由さじゃないんですけど。
でも、ぎこちなくなってる感じがする。
Gさん:今、それ聞いていて、腕がピリピリします
私:うん、当時の状況が再現されているんだと思います。
私:薬品をかけた主任さんにも罪悪感が残ってるけど、Bさんは勝手にそばへ行って見ていたわけで…。だから、「事故を起こさせたのは自分のせいだ」って彼女にもまた罪悪感がある。
Bさんはその病院で仕事を続けたけど、手先を使う細かい作業はできなくなったから、できる仕事は限定されちゃった。
主任はそのことを不憫に思っている。
自分のせいだ、って。
Bさんがここで働けるように 一生面倒を見るって、自分に課した感じですね。
その重さを背負ったまま転生してるから、今世でもきっとその人を大事にしなきゃって思ってるんじゃないかな。
Gさん: 今ちょっと落ち着きました。でもまだ痛い。
私:どんな風に痛い?
Gさん:手先がピリピリしてて。腕はずんずんずんずんってくる。なんか鈍いのがずーっと。
私:じゃあ、指先にも液体がかかったんだね。
二人の罪悪感を解放するために、今から書き換えはするんだけど、ちょっと不思議なのが、たったそれだけのことを解放するのかな?って。
こういうことって、よくあるわけじゃないですか。
なんかまだあるのかな…
Gさん:あの、職場でもう一人、気になる人(Cさん)が浮かびました。最近、中途採用で入ってきた人なんですけど。
いつもその人の目を見ると落ち着かない気分になる。
Gさん:普通に礼儀正しくていい人なんだけど、目が怖いっていうか、暗いっていうか。無表情というか、を見ると怖い。
ああ、この人は心に闇がある…
こっそり隠れて悪いことをやっていた気がします…
Cさんも当時の看護師です。
当時、「自分の正義」に基づいてとんでもないことをやっていた。
それは…
(つづく)