さてさて、今日もバングラデシュなど発展途上国でバッグなどを生産し、最貧国で暮らす人々の生活水準を高めながらもビジネスで成功を収めているマザーハウス山口絵理子社長のお話を続けましょう。

 

今日は山口社長の半生とマザーハウスでのサクセスストーリーを紹介し、成功の秘訣について感じたところをお伝えしていきたいと思います。


■ マザーハウス山口絵理子社長の波乱万丈の半生とは? 

 

マザーハウスの山口絵理子社長は1981年生まれ。

 

小学生の時にはいじめに遭って不登校となり、その反動で中学時代は非行に走ったそうです。

 

そんな荒れた生活を一変させたのが柔道との出会い。

 

たまたま通りすがった柔道場の前で、女の子が男の子を投げ飛ばす姿を見て、自分もいじめられないように強くなりたいという思いから、非行の道を抜け柔道に真面目に取り組むようになったのです。

 

その後メキメキと力を付けた山口さんは、さらに柔道に打ち込むため、埼玉県下で強豪の大宮工業に進学。そこでは、たった一人の女性部員という環境にもめげずに、男性部員との厳しい練習に明け暮れ、最終的には全国で7位という輝かしい成績を収めるまでに・・・

 

柔道で燃え尽きた山口さんですが、今度は必死で猛勉強して、なんと慶応大学に合格。

 

そして、大学時代に今のビジネスへとつながる運命的な出来事が起こったのです。

 

ある時、経済学の授業で、世界には教育を受けられない貧しい人々が何億人もいて、そのような発展途上国には国際協力が必要だという先生の言葉が心に突き刺さります。

 

小学生の時にいじめが影響して教育に関心を持っていた山口さんは、この授業で貧しい人々への国際貢献への興味が芽生え、大学4年生の時には途上国を支援するアメリカの国際機関でインターンとして働くことに。

 

そして益々国際貢献の必要性を肌で感じると、ネットで検索して世界最貧国であるバングラデシュの現状を自分の目で確かめたいと単身バングラデシュに渡ったのです。


2週間の滞在で、国際援助が隅々まで行き渡らず、貧しい暮らしから抜け出せない人々の生活を目の当たりにすると、より発展途上国での生活を実体験したいという思いが強まり思い切った決断を下します。

 

現地の言葉もままならない中、バングラデシュの大学院の門を叩くと、編入すべく入学試験を受けさせてもらったのです。

 

結果は、見事合格。日本で大学を卒業すると、2年間バングラデシュの大学院で学ぶことになるのです。

 

山口さんはこのバングラデシュの現地生活を通して今のビジネスにつながるヒントを得ます。

 

バングラデシュでは、『ジュート』と呼ばれる素材でできた麻袋の生産が盛んで、世界の9割のシェアを占めるほどですが、この『ジュート』で麻袋を作るのではなく、女性向けのかわいらしいバッグを作れば売れると直感したのです。

 

思い立ったらすぐに行動に移す性格の山口さん。今度は独学でデザインを学び、バッグを自分でデザインするとバングラデシュの工場に依頼して160個のバッグを生産します。

 

出来上がったバッグを日本に持ち帰って販売したところ、160個すべてが完売。

 

この成功で事業化への確信が強まった2006年、山口さんはマザーハウスを設立し、本格的なビジネスに取り組む決断を下します。


ただ、問題は開業資金です。

 

融資の当てや手持ちのなかった山口さんは、焼き肉店や量販店でのアルバイトで資金作りに奔走します。

 

そして、苦労してようやく貯めたお金を元手に再びバングラデシュに渡り、バッグを生産してくれる工場を探す日々。

 

ところが、「バングラデシュの人々が豊かに暮らせるために貢献したい」という強い想いで現地生産にこだわる山口さんに数々の問題が降りかかります。

 

最初に見つけた工場では、バッグの生産を委託した際に、前金として半分の代金を支払っていたものの、納期に工場を訪れてみると、なんと工場はもぬけの殻。手付金を持ち逃げされてしまったのです。

 

また、他の工場に依頼した際には、送られてきた商品がすべて不良品で売り物にならなかったという事態に見舞われたこともあったそうです。

 

ただ、山口さんはこのような試練にも心が折れることはありませんでした。

 

委託生産がだめなら、自社工場を作ろうと2008年にわずか3人でバッグの生産工場をバングラデシュに立ち上げるのです。

 

そして、今では工場は200人が働くまでに規模を拡大。

 

社員の給料はバングラデシュの一般的な給与の5割増しで支給することに加えて、医療保険や社員向けローンなど福利厚生も充実させて、まさに学生時代に描いた国際貢献という夢を実現させたのです。

 

■ 『成功=行動力+信念』

 

このようなマザーハウスの山口社長のサクセスストーリーを見てみると、成功とは決してスマートではなく、平坦な道を歩くようなものではないことがわかります。

 

傍から見れば、成功者はいとも簡単に成功を収めたような印象を受けますが、澄ました白鳥が水面下では足をばたつかせているように、見えないところで努力を積み重ねたり、数々の失敗を繰り返したりして、それでも諦めずに夢に向かって進み続けた結果として成功という“果実”を手にしているのです。

 

山口社長の成功譚に触れて感じたことは、当たり前ですが『行動しなければ結果は出ない。ただ、行動しても信念がなければ成功までたどり着けない。』ということです。

 

行動を起こせば失敗はつきものです。そこでほとんどの人は「失敗したらどうしよう」と不安が先に立って動けなくなってしまうものです。


ただ、成功までたどり着くには、いかに失敗を恐れずに一歩を踏み出せるか、そしてたとえ失敗しても夢の実現を信じて諦めずに何度も何度も挑戦し続けられるか、ということではないでしょうか。