野球のメジャーリーグで活躍するイチロー選手が遂に“野球の神様”と称されるベーブ・ルースの通算安打記録を抜き、メジャーリーグで歴代42位に浮上しました。
ベーブ・ルースといえば、日本でもホームラン王としてよく知られた野球選手なので、その偉大な記録を抜き去ったイチロー選手のすごさを改めて感じずにはいられません。
ただ、イチロー選手はこの大記録に浮かれることなくインタビューに次のように淡々と答えています。
「ベーブ・ルースはその名前自体にインパクトがあるような存在ですから、うれしいのはもちろんです。ただ、ベーブ・ルースと僕では全くタイプが違いますからね。もし、僕がホームラン数で並んだのなら、それはスゴイ話ですが、『僕らは同じ本数のヒットを打ちましたよ』なんて言うのは、ある意味、失礼に当たると感じます。全然違うプレーヤーですから。それに、ベーブ・ルースの時代と今では全然環境も違いますし」
ホームランバッターとして数々の偉業を成し遂げてきたベーブ・ルースと“安打製造機”として驚異的な記録を積み重ねてきたイチローでは比較の対象にもならないと謙虚な姿勢で大先輩をリスペクトする姿勢は人格の高さが伺え、非常に好感が持てます。
ただ、イチロー選手の“プロ中のプロ”たる所以は達成した数字よりもその考え方にあるといえるでしょう。たとえば、イチロー選手は同じインタビューで次のようなことも語っています。
「僕にとって最も大切なのは、常に自分の技を磨き続け、いろんな手段で多くのヒットを打っていくことです。どうやればもっとヒットを打てるか。いつもそういうことに努めていると、自然にヒットが生まれ、また生まれ、そしてまた生まれる。そうやって徐々に現在の数字に至ったんです。でも今は、誰の通算安打数を抜くとか、そういうことには関心がありません。僕が関心を持っていることは、もっとヒットを打つためにどうすれば自分のスキルを改善できるか、自分の技を磨き上げることができるか、そしてそれを継続するには何が必要か、そういったことです。それこそ、僕がずっと集中してきたことで、今も集中していることです。将来もそうです。ここまで来れたのも、ずっとそうやってきたからです」
この考え方はビジネスパーソンにとっても、成果を上げるうえでとても参考になるのではないでしょうか。
通常、我々ビジネスパーソンはライバル企業やライバル社員の数字を意識しながら、「必ず超えてやる」という意識で仕事をしていることも多いと思います。
ただ、本来やるべきことは、ライバルの数字を強く意識することではなく、常に自分のスキルを磨き続け、いろいろな方法を試しながら自身の成長を志向し、今日よりも明日、明日よりも明後日と、より高い成果を積み重ねていくことなのです。
明確なビジョンを描き、一心不乱に“今だけに集中する”ことにより、最高のアウトプットが実現され、それが積み重なって“自然に”偉大な成果につながっていくというわけです。
『極めて尚、より高みを目指す』
“完璧”というものがこの世に存在しないことを踏まえれば、ビジネスのプロフェッショナルである我々もイチロー選手の道を究めるストイックな姿勢から学ぶことは多いのではないでしょうか。