■安売り競争で疲弊した牛丼業界
デフレ経済の下で激しい価格競争を展開し、業容の拡大を続けてきた牛丼業界ですが、値下げによる収益力の低下で各社の業績は疲弊してきました。
ここ最近は価格競争も鳴りを潜め、新たな展開を模索しています。
先日、ライブドア元社長の堀江貴文氏がテレビ番組で、「最近すき家もブラック問題で、あれは結局従業員にシワ寄せがくるわけで、最終的にどうにもならなくなる。安売りすることによって利幅は減るじゃないですが、薄利でやっているじゃないですか、そういう構造にあるから、売り上げが下がるとまったく利益がでなくなる」とすき家の急成長の要因となったビジネスモデルを一刀両断し、「安売り競争の行き着く先は破綻しかない」と警笛を鳴らしました。
確かに牛丼業界に限らず、デフレの勝ち組と称されたマクドナルドも最近は安売りの副作用で業績の悪化に悩まされ続けています。
それでは、あなたがもし牛丼チェーンの社長であれば、どのような戦略で値下げ競争で疲弊した業績を立て直すでしょうか?
今回も経営者になった視点で戦略を考えてみて下さい・・・
■“プレミアム”に舵を切った松屋
牛丼御三家の一角である松屋は、それまで1杯280円だった牛めしの販売を終了し、7月から380円のプレミアム牛めしの販売を開始しました。
プレミアム牛めしでは、これまで使用していた冷凍肉から一度も冷凍しないチルド肉を使用し、チルド管理を徹底することによって牛肉本来の旨味と柔らかさを引き出した逸品。タレも新たに開発した、特製タレで仕上げるこだわりようです。さらに、より味わい深さを増すために特製の黒胡麻焙煎七味も併せて提供。プレミアム感をより一層際立たせます。
松屋は国内のほとんどの店舗で従来の牛めしの提供を止め、このプレミアム牛丼に切り替える思い切った決断を行います。
これまで低価格になれた消費者が、一気に100円もの値上げにどのような答えを出すかは実際に商品を提供してみなければわかりませんが、これまで業績を蝕んできた値下げ競争から離脱して差別化の道を歩む決定を下したのです。
この松屋の戦略は、かつてアサヒビールが従来のビールを廃棄して、すべてスーパードライに置き換えて成功した戦略を彷彿とさせます。
実際に松屋の月次売上は8月には顧客数が前年同月比97.2%と若干減少したものの、客単価は106.3%と大幅に上昇し、既存店売上高は103.3%となるなど、一定の成果を収めて松屋のプレミアム化への舵取りが間違いではなかったことを示しています。
■“チョイ飲み”需要を取り込んだ吉野家
一方で吉野家は、松屋とまた違った取り組みで単なる価格競争からの離脱を目指します。
首都圏の2階の店舗で、最近のトレンドである「チョイ飲み」需要を取り込むべくオリジナルのおつまみやアルコール類をお手ごろ価格で提供する「吉呑み」という新たな業態を展開し始めたのです。
「吉呑み」では、吉野家で提供する「牛皿」だけでなく、新鮮な「マグロの刺し身」や「メンチカツ」など約20種類のつまみが100円から500円程度の価格で提供されています。
まさに「吉呑み」は、吉野家同様に「うまい、やすい、はやい」を顧客に提供する居酒屋なのです。
この「吉呑み」のビジネスモデルを可能にしたのは吉野家グループの総力といっても過言ではないでしょう。
「マグロの刺し身」の刺身は寿司店の京樽から、そして人気メニューとなっている「牛すじ煮込み」はステーキ店どんから仕入れています。
このように、グループ内で原材料の調達を行うことにより、仕入れ価格を抑えることが可能になり、安くてうまいおつまみの提供を実現できたのです。
この「吉呑み」を導入した店舗では、宣伝をまったくしていないにも関わらず売上が4割もアップし、それまで赤字だった業績が黒字化を果たすなど、顕著な効果が表れています。
吉野家はこの「吉呑み」スタイルを今後は全国400店舗に導入して、牛丼業界の価格競争に巻き込まれることなく、独自の道を歩んでいく決断を下したのです。
このように破滅に向かって突き進んでいたチキンゲームから離脱し、業績を立て直すためには様々な戦略が考えられます。
差別化でライバル他社が提供できない付加価値の高い商品を開発したり、自社の事業のポートフォリオを見直して、グループのシナジーを活かして需要が見込める新たな領域に踏み込んで行ったりとライバルが容易に追随できない戦略を考え、実行に移すことで、不毛な争いから抜け出して、創造的で健全な本来の競争の領域に引き返すことができるようになるのです。
デフレ経済の下で激しい価格競争を展開し、業容の拡大を続けてきた牛丼業界ですが、値下げによる収益力の低下で各社の業績は疲弊してきました。
ここ最近は価格競争も鳴りを潜め、新たな展開を模索しています。
先日、ライブドア元社長の堀江貴文氏がテレビ番組で、「最近すき家もブラック問題で、あれは結局従業員にシワ寄せがくるわけで、最終的にどうにもならなくなる。安売りすることによって利幅は減るじゃないですが、薄利でやっているじゃないですか、そういう構造にあるから、売り上げが下がるとまったく利益がでなくなる」とすき家の急成長の要因となったビジネスモデルを一刀両断し、「安売り競争の行き着く先は破綻しかない」と警笛を鳴らしました。
確かに牛丼業界に限らず、デフレの勝ち組と称されたマクドナルドも最近は安売りの副作用で業績の悪化に悩まされ続けています。
それでは、あなたがもし牛丼チェーンの社長であれば、どのような戦略で値下げ競争で疲弊した業績を立て直すでしょうか?
今回も経営者になった視点で戦略を考えてみて下さい・・・
■“プレミアム”に舵を切った松屋
牛丼御三家の一角である松屋は、それまで1杯280円だった牛めしの販売を終了し、7月から380円のプレミアム牛めしの販売を開始しました。
プレミアム牛めしでは、これまで使用していた冷凍肉から一度も冷凍しないチルド肉を使用し、チルド管理を徹底することによって牛肉本来の旨味と柔らかさを引き出した逸品。タレも新たに開発した、特製タレで仕上げるこだわりようです。さらに、より味わい深さを増すために特製の黒胡麻焙煎七味も併せて提供。プレミアム感をより一層際立たせます。
松屋は国内のほとんどの店舗で従来の牛めしの提供を止め、このプレミアム牛丼に切り替える思い切った決断を行います。
これまで低価格になれた消費者が、一気に100円もの値上げにどのような答えを出すかは実際に商品を提供してみなければわかりませんが、これまで業績を蝕んできた値下げ競争から離脱して差別化の道を歩む決定を下したのです。
この松屋の戦略は、かつてアサヒビールが従来のビールを廃棄して、すべてスーパードライに置き換えて成功した戦略を彷彿とさせます。
実際に松屋の月次売上は8月には顧客数が前年同月比97.2%と若干減少したものの、客単価は106.3%と大幅に上昇し、既存店売上高は103.3%となるなど、一定の成果を収めて松屋のプレミアム化への舵取りが間違いではなかったことを示しています。
■“チョイ飲み”需要を取り込んだ吉野家
一方で吉野家は、松屋とまた違った取り組みで単なる価格競争からの離脱を目指します。
首都圏の2階の店舗で、最近のトレンドである「チョイ飲み」需要を取り込むべくオリジナルのおつまみやアルコール類をお手ごろ価格で提供する「吉呑み」という新たな業態を展開し始めたのです。
「吉呑み」では、吉野家で提供する「牛皿」だけでなく、新鮮な「マグロの刺し身」や「メンチカツ」など約20種類のつまみが100円から500円程度の価格で提供されています。
まさに「吉呑み」は、吉野家同様に「うまい、やすい、はやい」を顧客に提供する居酒屋なのです。
この「吉呑み」のビジネスモデルを可能にしたのは吉野家グループの総力といっても過言ではないでしょう。
「マグロの刺し身」の刺身は寿司店の京樽から、そして人気メニューとなっている「牛すじ煮込み」はステーキ店どんから仕入れています。
このように、グループ内で原材料の調達を行うことにより、仕入れ価格を抑えることが可能になり、安くてうまいおつまみの提供を実現できたのです。
この「吉呑み」を導入した店舗では、宣伝をまったくしていないにも関わらず売上が4割もアップし、それまで赤字だった業績が黒字化を果たすなど、顕著な効果が表れています。
吉野家はこの「吉呑み」スタイルを今後は全国400店舗に導入して、牛丼業界の価格競争に巻き込まれることなく、独自の道を歩んでいく決断を下したのです。
このように破滅に向かって突き進んでいたチキンゲームから離脱し、業績を立て直すためには様々な戦略が考えられます。
差別化でライバル他社が提供できない付加価値の高い商品を開発したり、自社の事業のポートフォリオを見直して、グループのシナジーを活かして需要が見込める新たな領域に踏み込んで行ったりとライバルが容易に追随できない戦略を考え、実行に移すことで、不毛な争いから抜け出して、創造的で健全な本来の競争の領域に引き返すことができるようになるのです。