トランプ大統領の誕生は市場変革の大チャンス | マーケットバンクのブログ

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トランプ氏勝利で日経平均は暴落・米ダウ平均は急騰の謎

米経済や国際金融・資本市場の波乱要因とされてきた共和党のトランプ大統領の誕生が日本時間の11月9日の取引時間中に現実のものとなった。市場ではトランプ氏勝利の報道が伝わると一斉にリスク回避の動きが広がり、日経平均株価は一時、1,059円安の16111円を付けた。終値は919円急落し、16251円(5.36%)で終えた。為替市場では「低リスク」の円が急上昇し対ドル相場は一時1ドル=10119銭近辺と9月30日以来の円高となった。日経平均日足チャート(2016726日~119日)とドル・円日足チャート(201682日~119日)を参照。ではトランプ勝利が決まった9日の米国市場はどうなったのか。何と大方の予想に反して大幅上昇となったのである。ダウ平均の上げ幅は一時、317ドルに達し、815日に付けた終値ベースの過去最高値(1万8637ドル)を上回った。終値は前日比256ドル(1.4%)高の1万8589ドルと8月18日以来ほぼ2カ月半ぶりの高値で終えた。ダウ平均日足チャート(201681日~119日)を参照。

 

 日経平均日足チャート(2016726日~119日) QUICK提供

米ダウ平均日足チャート(201681日~119日) QUICK提供

ドル・円日足チャート(201682日~119日) QUICK提供

 

米大統領選でトランプ氏勝利が伝わった日本株式市場は暴落し、米国株式市場は急上昇するといった正反対の動きがどうして起きたのであろうか。

特に日本株式市場の下落率は他のアジア諸国よりも明らかにに大きかった。大幅な下げを主導したのは外国人投機筋による高速高頻度取引(High Frequency TradingHFT)である。投機筋は日経225先物を利用してアルゴリズムを組み、HFTによる自動売買を頻繁に繰り返している。

9日の日経225先物12月限は大幅続落し、950円安の16250円で終えた。売買高は268420枚に膨らみ、チャイナ・ブラックマンデーで大荒れとなった2015825(285398)以来の大商いとなった。値幅も1360円と広く、下げ率は5.52%と624日の英国のEU離脱(Brexit)相場で記録した7.54%安以来の大きさとなった。この日の先物手口をみると、超高速プログラム売買を中心にトレードを行うABNアムロCLの短期売買が13万枚にも膨らんだ。取引金額は約2,200億円にもなる。ABNアムロCLの短期売買は殆どが日計り決済でアルゴリズム自動売買システムを用いて高頻度取引(HFT)を繰り返している。投機筋のアルゴリズムは一方通行的に売りを繰り返すようなプログラムが組み込まれているものがある。僅か数分で日経平均を1000円以上暴落させることも簡単にできてしまうのだ。トランプ氏が米大統領選で勝利というニュースは投資家にとって非常にネガティブな材料となることを利用して売りを浴びせたのである。

では、どうして米国株式市場が急上昇したのか。トランプ氏が勝利すれば当然米国株式市場も政局不安から大幅に下落するであろうと言われてきた。それを先取って日本が暴落したというのに真逆の動きとなった理由に9日、米国株式市場が始まる前の勝利宣言でのトランプ氏の振る舞いが上品だったこと。暴言を繰り返した選挙戦時の態度を改めて大統領らしく振る舞ったことで、ビジネスの世界で成功したトランプ氏の戦略家としての側面が意識された。トランプ氏の経済政策は不透明感も残るが、勝利宣言の後には先行きへの期待が高まったという。勝利宣言のスピーチで紳士的な振る舞いをしただけでマーケットの捉え方が変わってしまうのであろうか。もともとHFT取引を用いた自動プログラム売買は米国で始まったものである。米国株式市場でも乱高下が激しくなっているのは全てHFT取引が要因だ。多額の資金を投資できる投機筋は一つの材料を自分の都合の良い捉え方をする。今回の場合、大統領選においてトランプ氏が勝利した場合、政治の混乱からマイナスと捉えるか、逆に大胆な財政政策をプラスに捉えることもできる。投機筋は勝利宣言のスピーチをきっかけにプラスに捉えたアルゴリズムを組み込んだものと考えられる。

9日の日本株式の暴落は明らかに人為的なものだ。日経225先物の売買高は268420枚と前日の約9倍に膨らみ、その中でABNアムロCLの取引が13万枚と全体の約45%を占める。この会社1社で日経平均を暴落させることも急騰させることもできてしまうのだ。9日の下落で多くの投資家が損失を被ったと考えられる。先行きの下落に売りヘッジを行った投資家も多かったに違いない。翌日10日の日経平均は何と前日比109288銭(6.72%)高の1万734442銭で終えた。上げ幅は今年最大で、2015年9月9日(134343銭)以来およそ1年2カ月ぶりの大きさとなった。前日にヘッジで売った投資家は損失がさらに拡大し、株を手放した投資家は新たに株を買う気持ちにはならないだろう。

225先物によるHFT取引が株式市場に大きな弊害をもたらしている。ではどのようにすれば健全な株式市場を構築できるのか。無謀な225先物取引を抑制するためにはシカゴCME市場とシンガポールSGX市場に上場している日経225先物を廃止することである。日本以外の国で日経225先物が投機筋に都合の良いように取引されている。このような不平等な仕組みは世界中で日本だけだ。

さらに、一社による先物取引の売買高に上限を設けることだ。

 

トランプ大統領の誕生は市場の改革の大チャンス

トランプ氏はグローバリゼーションに批判的である。ウォール街への規制を強化するともいっている。金融自由化とミルトン・フリードマンの新自由主義が貧富の差をもたらし、日本においては巨額な欧米資本を用いた投機筋による225先物取引で日本株式市場が暴落し、長期間続いたデフレが日本経済の疲弊につながり失われた20年となったのである。トランプ大統領の誕生は金融自由化の弊害を見直すまたとないチャンスである。市場の改革ができれば日本に明るい希望が生まれ、国民が安心して暮らせる豊かな国に変貌できる。