『GODZILLA』(2014)感想。ゴジラの理想像。 | まじさんの映画自由研究帳

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「僕らのゴジラ」が帰って来た!

今年一番の期待作だけに、極力情報は入れず努めた。特報と第二弾予告編は途中まで見てしまったが、劇場へ行けば、本編が始まるまでヘッドホンを付けて眼を伏せて予告編を見ず、Twitterは「ゴジラ」をミュートワードにし、出来るだけ情報をシャットアウトした。

そして劇場は14.0m×25.5m日本最大級の巨大スクリーンを持つ、成田HUMAXシネマズのIMAX3Dで鑑賞。
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なんせ身長120m史上最大のゴジラを観るのである。このスクリーンであっても、ゴジラの頭部が入り切るかどうかのサイズだ。だが、巨大感を堪能するには充分なサイズであった。

1998年版のニセモノとは全く違う、ホンモノのゴジラ映画であった!擬獣化された原子力の逆襲と、自然への畏敬というゴジラの本質が、そこに描かれていた。

原作へのリスペクトが数多く見られ、渡辺謙が演じる博士のフルネームが芹沢猪四郎ってだけで、ご飯三杯は行ける。
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芹沢博士と言えば、初代『ゴジラ』で、悪魔の発明オキシジェン・デストロイヤーを作った博士であり、その『ゴジラ』の監督が本多猪四郎である事は、言うまでもない。今回は芹沢博士に、初代で志村喬が演じた山根恭平博士の役どころ=観測者の立場で見せている。

ストーリーのツッコミ所など、本家東宝ゴジラにも多々あるわけで、そんな細かい事を気にしてたら怪獣映画は見てられない。正直、好みだけで言えば、ウェタのクリーチャーは好きになれない。あの節のある脚が出た時は、「カマキラスか!?」と高まったが、残念ながら違ったようだ。だがそんな細かい事は、あのゴジラの咆哮が、全ての不満を吹き飛ばした。劇場いっぱいに響くあの咆哮が聞けたらもう、それだけで満足だ!
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そんな中「この映画はゴジラよりも、平成ガメラに似ている」と云う批判を目にした。それは確かにオイラも思った。だが、それは批判的な思いではなく、オイラは肯定的に受け取った。

若きギャレス・エドワーズ監督はゴジラだけではなく、ガメラまで研究していた訳だ。平成ガメラシリーズは、ゴジラが最もダメだった時期に、ゴジラにはこうあって欲しいと願う者たちに作り上げられた。

当時のゴジラは子供向けにし過ぎて、安易なアイデアの作品が多く、娯楽性と作品のテーマのバランスが取れていない作品を連発していた。
特に復活版『ゴジラ』(1984)以降、鳴かず飛ばずの作品が多かった。

東宝は、怪獣の戦闘シーンの撮影で効率化を図り、着ぐるみをミニチュアセットで闘わせ、何台ものカメラで撮り、それらを繋ぎ合わせた編集で見せる手法が取られて来た。撮影プランのない戦闘シーンは、現場での思い付きで撮られ、良くも悪くも数々の迷シーン、珍シーンを生み出した。
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内輪もめするゴジラ。

だが平成ガメラは、そのゴジラの撮り方にまでNOを突き付けた。平成ガメラには、全編に絵コンテが存在する。その絵コンテも、あえて映画の撮り方を知らないアニメ畑のスタッフに描かせ、絵作りに力を入れた。それから実写でどう撮るかを検討し、映像化したという。CGIが高額な時代に、ギャオスが吐く眼に見えない「超音波カッター」を映像で表現するのは、並々ならぬ試行錯誤があったに違いない。カットも人間からの視点で描写され、徹底的に見上げる目線で撮っているのも大きな特徴だ。

また、人間の味方だったガメラの設定を、ゼロから作り直し、自然の脅威とした。そして地球の守護者としての役割を持たせた。ガメラが来ても、人間を助けるのではなく、敵を倒す為に現れる。それはつまり、ゴジラの本来の姿である。

あの頃、予算ばかりつぎ込み、駄作を量産した本家ゴジラに対し、反骨精神で挑んだのが『ガメラ/大怪獣空中決戦』だ。金子修介監督は、それを製作費6億円で実現した。悪名高い、製作費15億円をかけた『ゴジラvsキングギドラ』の半分にも満たない予算である。

ガメラは、自然の調和が取れなくなった時に現れ、その原因を殲滅し、そして海に帰る。それは、本来のゴジラの姿を投影し、真のヒーロー像を見せた。平成ガメラシリーズは「ゴジラには、こうあって欲しい」と願うスタッフたちの熱い思いが込められていたのだ。

そして今回のハリウッド版『GODZILLA』は、それをゴジラでやってくれたのだ。

自然災害のように人類にはなす術もない存在としてのゴジラをハリウッドが描いた事は、とても重要だ。なぜなら、ハリウッドは、常に世界秩序を護るのは、アメリカの役割りとして描いて来たからだ。よって、1998年の『GODZILLA』は、ゴジラをただの害獣として描き、米軍が倒した。だが9・11以降、アメリカの神話は脆くも崩れ去った。今、必要なのは誰もが憧れる絶対的強者のヒーローだ。地球上で最も強いヒーロー、それがゴジラなのである。真のゴジラは害獣ではない。地球の守護神なのだ。

つまり、ゴジラの理想像を追求すると平成ガメラに至るのは必然なのだ。
そして、ハリウッドが反核の思想をも受け継いだゴジラを作ると言うのは驚きだ。巨大な怪獣に対してアメリカらしく、核兵器で殲滅しようとするのだが、結局それが原因となり、危機的状況に陥る事になる。
広島の原爆投下時間8時15分で止まった時計が登場し、原子力が人類の過ちであると諭すのである。原爆肯定論者が多いアメリカでは珍しく、ここで原爆否定を見せているのである。

視点も面白い。米軍の兵士の視点で描かれているのだが、任務を描くのではなく、非番中の出来事としている。父親との確執を持つ一般人と変わりない。彼の軍人としての行動を見せるのは、映画の終盤からで、それまでは兵士というよりも、民間人の視点なのである。
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そんなフォードを演じるのは『キック・アス』の主人公デイヴ役で、憧れからヒーローへと成長するオタクを見せたアーロン・テイラー=ジョンソンである。あのナヨナヨしていた彼が、ここでは見事に鍛え上げた身体で、若き軍人らしい、自分への厳しさを持つ男を演じている。

妻の死の真相を追うフォードの父親を、名優のブライアン・クランストンが演じている。妻の死を目の当たりにして変貌してしまう、悲しみを背負う男を見事に演じていた。

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オイラの大好きなデビッド・ストラザーンが、米軍を指揮する海軍の提督を演じているのも見逃せない。出てくるだけで緊張感が高まる彼が、相変わらずの美声で誇り高い指揮官を厳格に魅せてくれる。

そして、タイトルロールを演じているのは、やはりと言うべきか、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム、『キングコング』、『猿の惑星/創世記』のシーザーなど、数々のCGキャラクターに命を吹き込んで来た新世代のデジタル着ぐるみ俳優=アンディ・サーキスである。ゴジラの大見得「咆哮」の前に見せる「睨みの溜め」は、キングコングでも見せたサーキスお得意の間の取り方だ。
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映画はCGになった事で、ミニチュアや特撮の時代は終焉した。特撮ファンとしては少し寂しいが、映画ファンとしてはどうやって撮ったとか、そういう部分が気にならなくなった事は大きな利点である。撮影方法ではなく、作品の持つ本来のテーマに集中して鑑賞できるからだ。そう云う意味でも、フルCGのゴジラは大きな意味を持つ。

我々日本人の持つ宗教観は、自然の下に人類があるが、キリスト教の宗教観では、自然は人類のために神が作ったものとなっている。自然への畏敬の念は、長い間、西洋では理解されなかった。だが近年、地球の環境汚染や温暖化によって、人類のエゴによって変わってしまった地球の環境が問題になり、西洋の意識も変わって来た。特にアメリカでは、新世代の若手の方が、その危機的意識は強いという。ギャレス・エドワーズ監督も、そうした世代の1人だ。怪獣をただの破壊者としてではなく、神格化された存在として描けたのは、そうした理由からだろう。
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若くして160億円のメガバジェット作品を任された、21世紀のスピルバーグとの呼び声も高いエドワーズ監督の今後の作品も、我々映画ファンは期待せずにはいられない。こんなワクワクする監督は久しぶりだ!続編も決まり、今度は、ラドン、モスラ、キングギドラも登場すると発表された。つまりコレは、ゴジラを含む地球の三大怪獣が宇宙からやって来たキングギドラと闘う『三大怪獣/地球最大の決戦』のリメイクという訳だ!次はどんな話になるのか、今から楽しみである。

追記:
予告を見ずに鑑賞したので、後から予告編も鑑賞したが、予告のカットと本編が意図的に差し替えているのは驚いた。予告用のCGに差し替えて、あるものを見せないようにしている。特に予告編でシェルターの扉が閉まるシーンでは、ゴジラの咆哮が印象的に映るのだが、本編ではそんなシーンにはなっていなかった。意図的にあるものを見せずに予告編を製作している。
予告で見せたシーンが本編でカットされた例はいくらかあったが、予告用に撮影されたシーンを流すのも珍しい。だが、予告用にハイエンドCGを製作し、合成部分を差し替えた例は聞いたことがない。予告にまで予算をかける見せ方も、この映画が革新的な面のひとつかも知れない。



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