憲法第二問
1 本問において最高裁判所に法律案の提出権を認める規定を設けることは、41条、76条3項に反し違憲となるのではないか。内閣の法律案提出権の場合と比較して論じるに当たり、まず比較対照となる内閣の法律案提出案ついて論じる。
2 内閣の法律案提出権について
(1)  内閣の法律案提出権を認めることは、国会を「唯一」の立法機関とする41条に   反しないか、「唯一」の意味が問題となる。
(2) 思うに41条において国会が唯一の立法機関とされたのは、国民の権利を制約することになる法律の制定につき民主的統制を及ぼすためである。そこで、「唯一」とは法律の制定は国会の手続きのみでなしうるという国会単独立法の原則と、実質的意味の立法は憲法の定めがある場合を除いて国会のみが為しうるという国会中心立法の原則のことであると解する。
(3) 以上を内閣の法律案提出権についてみると、法律の制定は、法案提出、審議、議決という経過をたどるため、その一部である法律案の提出を国会以外の期間である内閣に与えることは、41条に反するとも思える。
    しかし、わが国の国会と内閣の関係は、国会の信任を内閣存立の条件とする議院内閣制(65条、66条3項)がとられている。かかる議院内閣制の元では、法律の作成について、国会と内閣の協働が求められる。また、行政国家の下、内閣の専門、技術的な能力に基づく法律案の作成を認めるべきである。
思うに、内閣に法律案の提出権を認めても、国会が自由に審議、修正し議決できるとすれば、国会単独立法の原則に反するとまではいえない。また、かかる内閣の法律案提出については、「議案」(72条)に含めて考えることができる。
よって、内閣の法律案提出権を認めることは、41条に反することなく、合憲である。
3 最高裁判所の法律案提出権について
(1)  最高裁判所に法律案提出権を認めることは41条、76条3項に反しないか。この点、最高裁判所に法律案の提出を認めても国会が自由に審議、議決できることから、41条には反しないとも思える。しかし、最高裁判所については、内閣と異なり協働が予定されるものではなく、かえって司法権の独立が要請されている(76条3項)。そこで最高裁判所に法律案の提出を認めることは司法権の独立を定めた76条3項に反するのではないか、司法権の独立の意味が問題となる。
(2)  思うに司法権の独立とは個々の裁判官の職権行使の独立と、司法府の独立のことである。このような司法権の独立が定められたのは、少数者の人権保障を確保するという司法権の機能を確保するためのものである。その核心は、個々の裁判官の職権行使の独立を確保するところにあり、司法権の独立はこの裁判官の職権行使の独立を保障するためのものである。
   このように、司法権の独立が人権保障のために重要な機能を果たしていることからすると、司法権の独立を害する虞のあるような法律改正は許されないものと解する。
(3) 以上を本問についてみると、本問の改正案は、「訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律」「司法事務処理に関する事項」についてのものであり、77条1項により規則制定の対象となる事項であることからすると、最高裁判所に法律案の提出権を認める必要があり、かかる改正は認めるべきとも思える。
しかし、最高裁判所に法律案の提出権を認めると、法律案の提出、審議、議決の過程を通じて最高裁判所が国会、内閣などの政治部門と不可避的な関わりを持つことになる。そうすると、政治的な動きにおおきな影響を受けることになり、司法権の独立を保つことが困難になり、ひいては少数者の人権を保障する、という機能を果たせなくなってしまう虞がある。
    また、内閣の法律案提出権については「議案」(72条)に含めて考えることができ、条文上の手がかりがあるのに対して、最高裁判所についてはこのような手がかりとなる条文もない。
    以上より、最高裁判所に法律案の提出権を認める内容の規定を設ける裁判所法の改正は41条、76条3項に反して違憲である。   
     以 上