こんにちは。アダルトチルドレン専門カウンセラーの、松山功子です。
前回、「距離を置くことが、(現時点での)唯一の解決法ということもある。」と書きました。
家族でも、距離を置くしかない場合があるとは、どういうことでしょう?
これには、アダルトチルドレンの特徴のひとつ、「自分と他人の境界が混乱している」が、大きく関わっています。
自分と他人の境界が混乱していると、不快になったり、他人に振り回されたり、自分の感情や意志がわからなくなったりすることが、よく起こります。
他人の感情や期待に、過剰に反応してしまうことはありませんか?
相手を優先しすぎて、自分が疲れてしまうことは?
この記事では、境界とは何か?なぜ必要か? なぜ自他の境界が混乱するのか、その影響と対策について解説します。
境界とは何か?なぜ必要か?
わたしとあなたは、別の人間。
別の身体。別の感情。別の考え。別の人生がある。
そして、どちらも、かけがえのない、大切なもの。
これが、境界の基本です。
自分と他人の境界とは、「わたし」と「あなた」の間に引いた、ラインのようなもの。
たとえば、
・どんなに親しくても、スマホを勝手に見てほしくない。
・わたしが望んでいない時に、わたしの体を触ってほしくない。
・わたしが決めたことを、とやかく言ってほしくない。
境界を侵食されると、わたしたちは、不快になったり、危険を感じたり、落ち着かない気持ちになります。
境界がきちんと守られていると、わたしたちは、安全で心地よく感じます。自分自身を大切にできている。周囲がわたしを尊重してくれている。と感じます。
境界が混乱していると、自分の境界が侵食されていることに、気づけません。
同時に、自分が他人の境界を侵食していることにも、気づけないものです。
それは、誰かに支配されやすい・誰かを支配しようとする、不健康な関係につながります。
自分の境界を大切にできる人は、他人の境界も大切にできるもの。
自分と相手、双方にとって心地よい境界を、作っていくことができます。
自他の境界が混乱するとは?
アダルトチルドレンは、しばしば、境界が混乱しています。
それは、子どもの時に、いつも自分の境界が侵されていたり、相手の感情に巻き込まれたりしていたからです。
境界が混乱している家族の中では、子どもは健康な境界を学べません。その結果、大人になってからも、自分と他人の間に、健全な境界線を引くのが難しくなるのです。
原因
・厳格すぎる家庭で、親の期待に応えなければならなかった。
・親の機嫌次第で、家庭が振り回されていた。
・親が配偶者との問題を子どもに愚痴り、感情的に子どもに依存していた。
具体例
・人の意見に過剰に影響され、自分の判断に自信が持てない。
・自分の意見や感情を主張すると罪悪感を感じる。
・常に、相手を優先して、自分のニーズや感情を抑え込んでしまう。
自他の境界が混乱することで起こる影響
人間関係の問題
境界が混乱していると、人間関係に大きな問題を引き起こします。
・過剰に相手に合わせてしまい、自己犠牲的な関係に陥る。
・他人の機嫌や反応に過敏になり、共依存的な関係を形成する。
(共依存とは、自分自身に焦点が当たっていない状態。他人の評価だけで、自分の価値を判断する。自分がどうしたいかではなく、他人の期待に応えるのに必死。他人の問題を解決することに一生懸命。でも、やればやるほど苦しくなり、状況も悪化。)
自分自身への影響
自分の感情や意思を無視し続けると、自己否定感・無力感・無価値感が強化されます。
・自分が何を感じているのか分からなくなる。
・ストレスや燃え尽き症候群になりやすい。
社会的な影響
職場や友人関係でも困難が生じます。
・自分の意見を言えないため、周囲に利用されやすい。
・責任を過剰に引き受けてしまい、負担が大きくなる。
しかし、原家族で学べなかったのなら、今から学べばいいのです。
私にとっての境界には、どんなものがある?
まず、私の境界をはっきりさせることからです。私にとっての境界には、どんなものがあるでしょうか?
尊厳の境界
わたしには、誰にも侵せない尊厳と「人としての価値」がある。
身体の境界
わたしの身体はわたしのもの。他人がどこまで近づいていいか、触れていいかは、わたしが決める。わたしは、身体を危険や極度の消耗から守る。誰かがわたしの身体を乱暴に扱ったり、外見を批判したりするべきではない。
感情の境界
わたしの感情はわたしのもの。どう感じるかは、わたしの自由。他人に指図されるものではない。
思考・価値観の境界
わたしの考えはわたしのもの。何を信じるか、何を優先するかは、自分で選ぶ。価値観を強要されたり、考え方を否定されたりしない。
責任の境界
わたしのこと(わたしの感情・考え方・選択・決断・行動・問題解決)については、わたしは責任を負うことができる。自分の問題を他人のせいにしない。他人のこと(感情・考え方・選択・決断・行動・問題解決)については、わたしが責任を負うことはできない。
持ち物・お金の境界
わたしの持ち物やお金を、許可なく、他人が使うことはできない。わたしの持ち物やお金を、どのように使うかは、わたしが決めること。他人の指図は受けない。
時間・空間の境界
わたしの時間をどう使うかは、わたしが決める。わたしのプライベートな時間や空間に、許可なく、他人が立ち入ることはできない。
性的な境界
わたしの性はわたしのもの。他人の道具にされたりしない。誰と、いつ、どこで、どこまでの性的な関係を持っていいかは、わたしが決める。
・境界の設定は、拒絶ではありません。
・境界は、いったん線を引いた後でも、お互いの話し合いで、より適切な線を引き直すこともできます。
・相手によって、状況によって、境界は変わります。境界とは、柔軟で、融通性のあるものです。
・暴力、不本意な性関係の強要、心身の健康を害するほどの身体の酷使は、ひどい境界の侵食です。
「その場から立ち去る」「きっぱりノーを言う」「関係を切る」など、断固阻止する態度をとることが必要です。
・疲れたら休む。
・あなたが心地いいかどうか?を大切にする。
・あなたを自分のモノのように扱う・安全やプライバシーを脅かす人には、近づかない。距離を置く。関係を切る。
境界が侵されたシグナル
気づかないうちに、境界が侵されることもあります。次の2つのシグナルに気づいたら、境界をチェックしましょう。
感情のシグナル
適切な境界が設定できなかったり、境界が侵されている時、次のような感情が出てきます。
怒り、不安、漠然とした恨み、疲れ、むなしさ・・・。
こんな感情を感じたら、立ち止まって、境界を確認する時です。
「境界を設定する必要がありますよ」というシグナルの可能性があります。
関係のシグナル
相手とは、フェアな関係でしょうか?
(感情・労力・時間・お金など)与えると、受け取るのバランスは、取れていますか?
いつも与えるばかりだとしたら、自分の生活や人生を、侵食されていることになります。
逆に、甘えすぎていたり、要求しすぎていたりしたら、相手は、あなたとの関係を、重荷に感じているかもしれません。
関係を続けたいのなら、自他の境界を確認し、尊重しあうことが必要でしょう。
自他の適切な境界を設けるための対策
では、どうすれば自分と他人の間に、適切な境界を設定し、保つことができるのでしょうか?
以下に実践的な方法を紹介します。
1. 自分の感情に気づく練習
自分の感情を理解することは、適切な境界を設ける第一歩です。
感情の記録: 1日の終わりに、その日を振り返って、何か気持ちが大きく動いたことを思い返し、記録をとっていきます。
感情の名前をつける: 「悲しい」「怒っている」など、自分の感情に具体的な名前をつけてみます。
初めはざっくりで大丈夫。「あの時、わたしは何を感じていたんだろう?」と自分に聞いてみます。
嬉しい・わくわく・楽しい・ドキドキ・愛おしい・心地よい・ほのぼの・期待・喜び・感謝・安心・尊敬・誇らしい・さわやか・落ち着いている
がっかり・イライラ・もやもや・ザワザワ・不安・動揺・怖い・怒り・いやだ・疲れた・悲しい・さびしい・心配・焦り・落ち込み・ドン引き・退屈
色々な感情の言葉がありますね。
続けるうちに、どんな時に、どんな気持ちになるのか、自分のパターンが見えてきます。
自分が何を大切にしているのか、そんなことも見えてきたりします。
2. 境界を設定するスキルを学ぶ
境界を設定するスキルを身につけることで、自分を守ることができます。
「ノー」と言う練習: 小さなことからでも良いので、無理なお願いを断る練習をする。
3. 境界を越えられたときの対処法
他人が自分の境界を越えてきたときに、適切に対処することも重要です。
分析: 自分がいつ、何を不快に感じたのかを考える。
適切な伝え方: 「私はこう感じた」「私はこうしたいと思っている」と、「わたし」を主語にして、自分の感情・望みを伝える。
4. 専門的なサポートを受ける
感情が噴出して、苦痛が大きい場合など、アダルトチルドレン専門カウンセラーのサポートを受けながら、心の整理を進めていく必要性が出てくる場合もあるかと思います。
境界に関しては、
1. 潜在意識のブロック解除:やはり潜在意識に強力なブロックがあるので、これを先に外した方が早いです。何より、本人がラクですし、効果の持続性も高まります。
2. 潜在意識に健全な境界の概念をダウンロード:潜在意識の方が10〜20倍強力なので、潜在意識にも学んで貰うと、早いしラクだし、定着がいいです。
3.ノーを言う練習:しんどい練習をしなくても、ノーを言えるようになります。めちゃくちゃ簡単で、負担が少なくて、効果的な方法を採用しています。
などのメリットがあります。
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まとめとメッセージ
境界への侵入に対してノーと言ったり、相手の境界に侵入するのをやめることで、
・安全安心と快適さ
・過剰な負担を負わなくてよい
・相手の問題に巻き込まれない
・強制されたり、圧迫されない
・相手に強制したり、圧迫を与えずにすむ
・精神的な健康を保てる
・自分の感情や望みを大切にできる
・お互いを尊重する関係
などのメリットが、得られます。
自分と他人の境界を取り戻すことは、心の健康や人間関係を良くするための重要なステップです。
一度に完璧にできる必要はありません。
少しずつ練習を重ねていくことで、確実に変化が訪れます。
「まずは自分の感情に気づくことから始めてみましょう。」
「そして、小さな一歩を積み重ねて、安全で、快適で、お互いを尊重しあう関係を作っていきましょう。」
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

洞爺湖。中島に向かう遊覧船から