鉄十字・その愛(前篇) | ロボットヒロイン大好き!

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ロボットアニメに登場したヒロイン話を中心に、いろいろな事を書き散らかしていきたいと思います。

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Pic by 魔天狼さん


機械獣との戦いで傷つき、倒れた兜甲児。
傷を癒すため、ここ数日光子力研究所の医務室で安静にしている。
「甲児くん、まだ痛む?胸の傷は」
つきっきりで看病する弓さやか。
リンゴを剥いて切り分け小皿に盛り、甲児に渡す。
「ああ。全然平気だぜ。…っ…いててて…」
起き上がろうとする瞬間に激痛が走り、苦痛に顔を歪める。
「大丈夫?無理しちゃだめよ」
さやかはそう言いながら甲児の肩を抱き、ベッドに横たえる。
「でも…もし今機械獣が現れたら研究所は…」
「大丈夫。そのためにわたしとビューナスがいるのよ」
アフロダイAに代わって建造されたビューナスAは完全な戦闘用ロボットだ。
マジンガーZとの抜群のコンビネーションで、幾多の機械獣を倒してきた。
「でも…さやかさんだけを危険な目にあわしたくないぜ…」
「心配してくれてありがとう。でも、平気よ。ビューナスは機械獣なんかには負けないわ」
にっこりとほほ笑むさやか。
その時。研究所に機械獣の襲来を告げる警報が鳴り響いた。
「来たわね、機械獣」
立ち上がり、ヘルメットを手にするさやか。
「甲児くん、ぱぱっと片づけてすぐ帰ってくるわ。今日の晩ごはんは甲児くんの好きなコロッケよ」
格納庫に向かい駈け出して行く。


格納庫の小型飛行艇・クインスターに飛び乗るさやか。
発進し、付近の滝に接近するクインスター。
「ビューナスA、ゴーッ!」
滝壷からせり出してくる巨大なレディロボット。
水しぶきが夏の日差しを反射してて光り輝く。
その姿はさやかそっくりで、神々しいまでに美しい。
「クインスター、イーン!」
頭部のカチューシャの部分にクインスターが合体。
瞳が眩しく光り輝き、頭部のアンテナが飛び出す。
さやかと一体になったビューナスに生命が吹き込まれたのだ。


市街地に向かう森を進撃する機械獣。
ナチスの兵士のような姿の人間型だ。
「お待ちなさい」
その進路にビューナスが立ちはだかる。
「ここから先は一歩も通さないわ。ビューナスAが相手になってあげるわ」
立ち止まる機械獣。胸元に鉄十字の紋章が輝いている。
「どけ。お前に用はない。マジンガーZは、兜甲児はどうした?」
「えっ・・・機械獣がしゃべった・・・」
パイロットがいないはずの機械獣からパイロットの声が響く。
「右目をよく見てみろ」
機械獣のパイロットがそう言うと、右目のフードが開いた。
そこには鉄十字軍団のコスチュームに身を包んだ兵士の姿が。
「このハーケンシュミットX9はマジンガーZと同じ。人の頭脳を加えた鉄十字軍団最強の機械獣だ」
「ふん、なにさ。あんたなんかがマジンガーZにかなうわけないでしょ。ビューナスAを怖がってるくせに」
「いや。無駄な戦いを避けたいだけだ。それに、女を相手にするのは俺の趣味ではないのでな」
さやかの挑発に、落ち着いた態度で応えるパイロット。
「ビューナスを相手にするのは時間のムダだってわけ?失礼しちゃうわね!」
「さあ、そこをどいてくれ」
「嫌よ。バカにされて黙ってちゃ女がすたるわ。光子力ビーム!」
「はっ!」
ビューナスの両目から発射されたビームを、腕の盾で受け止めるハーケンシュミット。
「なかなかやるな。しかし、その程度の攻撃では効かないな」
「まだまだこれからよ!光子力ミサイル!」
ジャンプして両胸から発射されたミサイルをかわし、ビューナスの目の前に着地するハーケンシュミット。
「悪く思うなよ。少し静かにしてほしいだけだ」
そう言い残して、ビューナスの腹部に強烈なパンチを。
「くっ・・・」
強い衝撃を受け、クインスターの中で意識を失うさやか。


「うっ・・・う~ん・・・」
「気が付いたか?」
ベッドの上で目を覚ましたさやか。
その前にはさやかと同年代の、見知らぬ金髪碧眼の美男子が鉄十字の軍服に身を包んで立っていた。
「あなたは?ここはどこ?ビューナスは?まさか・・・なにか変なことしなかったでしょうね!」
ベッドの上で起き上がってまくし立てるさやか。
コスチュームを身に着けたままだったので、内心ほっとしてる。
「そう一度に聞かれても答えられないな。まず・・・」
男が窓の横に歩み寄り、外を指差す。
「ビューナスAはあそこだ」
窓の外は格納庫。ビューナスAは、ハーケンシュミットと並んで無傷で立っていた。
「次に・・・わたしの名はマテウス。鉄十字軍団の戦士だ。ここは飛行要塞グールの内部。そして・・・」
再びベッドのさやかに近づく。
「君には一切なにもしていない。ビューナスAのコクピットからここまで運んできたこと以外は。これでいいかな?」
「ふん。悪党のくせに紳士ぶらないでよね」
そう言いながら立ち上がるさやか。
「で、これからわたしとビューナスをどうするの?」
再び無言で窓際へ向かうマテウス。
「君が意識を失っていた間に、ビューナスAのことを調べさせてもらった」
窓の外を眺めながら言う。
「それで?」
「素晴らしい基本性能だ。われわれの手で時間をかけて改良すれば、今より遥かに強くなる。それに・・・美しいその姿。まさに愛と美の戦女神だ」
「ビューナスを機械獣に改造しようってわけ?そんなことさせないわよ!」
かっとなるさやかに振り向くマテウス。


「そして、弓さやか・・・」
「なによ!」
「勇敢で恐れを知らず、どんなに強い敵にも立ち向かっていく・・・ビューナスAのパイロットにふさわしい、美しき戦乙女」
「あたりまえでしょ。わたしとビューナスは一心同体なんだから。悪の手先にに褒めてもらったって嬉しくなんてないわ」
さやかに近づき、目の前に立つマテウス。
「われわれの仲間になって、一緒に戦ってほしい」
「本気でそんなこと言ってるの?」
「本気だ」
しばし無言で対峙する二人。
「お断りよ」
「予想通りの答えだな・・・」
ポケットから針状の物体を取り出すマテウス。
さやかを抱き寄せてその物体を耳の後ろに突き刺す。
「ちょっと!何するのよ、このエッチ!」
パチンとさやかの平手打ちがマテウスの頬に炸裂する。
「脳波コントロール装置を付けさせてもらった」
「うっ・・・」
崩れ落ち、がくっと膝を付くさやか。
マテウスがさやかを優しく抱え上げて立たせる。
さっきまでの険しい表情が柔和なものに変わっている。まるで仲のよい恋人を見るかのような。
「弓さやか。君の使命を言ってくれるかな?」
「わたしの使命は、マジンガーZを倒し、光子力研究所を破壊して、日本、そして世界を征服すること。そして・・・」
「そして?」
「そして、マテウス。あなたのパートナーとしてずっと一緒に、側にいること・・・」
「ああ、そうだ。世界征服が完了したら、ずっと二人で暮らそう・・・」
さやかを抱き寄せ、そっと包み込むマテウス。
マテウスの背中に両腕を添えるさやか。


それから数日。
脳波コントロール装置のおかげで、さやかはまるで恋人のようにマテウスに接していた。
しかしその関係は、あくまでも一方通行。
マテウスが何か要求しない限り、さやかの方から能動的にアクションを起こすことは決してない。
また、ある一線を超えたリクエストには決して応えようとしない。
さやかが心の底からマテウスを愛していない、という当たり前の事実が彼を苛立たせた。
そして、マジンガーZと兜甲児を倒し、さやかを完全に自分のものにすべく、ハーケンシュミットとともに光子力研究所に向かう。
愛するさやかとビューナスと一緒に・・・


【続く】


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