「くっ・・・」
まるでタコかイカのような触手がダイアナンの足にからみついて離れない。
その触手はすさまじい力でダイアナンを海底に引きずり込もうとしている。
「このぉ・・・スクリュークラッシャーミサイル!」
ダイアナンの胸部からスクリュー形のミサイルが発射され、からみついた触手をズタズタに引き裂いた。
「ふぅ・・・びっくりした」
ひかるは一息ついて通信回路を開いた。
「こちらダイアナン、ひかるです。すみません、ご心配かけて・・・もう大丈夫です」
『ふー・・・驚かすな。一体何があったんだ?』
「巨大な触手に襲われたんです。タコみたいだったけどそんな大きなタコなんているのかしら?」
『深海はまだまだ未知の世界だから、何がいるかわからないわ。気をつけなさい』
さやかはそう言ってから、ふと甲児の受け売りだったことを思い出した。
さやかはひとつコホンと咳をした。
『・・・って誰かも言ってたわ』
「とにかく急いで浮上します。SJ-2のことも心配だし・・・」
『了解。気をつけろ』
ひかるは急いでダイアナンを急浮上させた。
先に浮上していたSJ-2の船体が目に入った。
特に変わった異常は見られない。
ひかるがホッとしたのもつかの間、SJ-2にからみつく触手を発見した。
「くっ・・・いつの間に!」
その怪物はようやく姿を現した。
巨大なクラゲのように身体は透き通っているが、触手の先はヘビのような不気味な顔を持つものもある。
ひかるはグロテスクな海獣をモニターに映した。
『博士、SJ-2がっ!』
「これは・・・」
『ジュンさん!』
『そうよこいつは---』
さやかとジュンには見覚えがあった。
2年ほど前、ロボット軍団が苦戦した海の怪物、ドラゴノザウルス!
あの時倒したドラゴノザウルスよりはまだ身体の大きさもそれほどではなく、触手の数も多くはなかった。
「博士、これはドラゴノザウルスよ」
『ドラゴノザウルス?』
さやかの声にひかるが訊き返した。
「ああ、俺も知っている。古代の生物が石油を喰って巨大化した怪物だ」
『でもあいつはロボット軍団が倒したはずなのに・・・』
ジュンが驚いたように言う。
「でもあの時のドラゴノザウルスとはちょっと違うようだ。もしかしたら新たなドラゴノザウルスが放射能かなんかで突然変異したんじゃないか?」
「とにかく、SJ-2を援護します!SJ-2、大丈夫ですか?」
『こちらSJ-2、電流を流され操作不能・・・うわぁーーーーーーっ!』
「ええぃこの怪物!」
ひかるはSJ-2にからみついている触手をエクシードスピアで切り刻んだ。
しかし触手はバラバラになるが、ヘビのような頭は切ったあとから再生してくる。
『こいつ・・・切っても切っても再生してくる・・・ああっ!』
「どうしたひかる?」
ドラゴノザウルスはSJ-2から離れ、ダイアナンに襲いかかった。
様々な方向から同時に触手がダイアナンを捕らえようとうごめいて攻撃してくる。
ひかるは抜群の操縦でダイアナンを操り、触手と触手の間をすり抜けた。
「ダイアナンミサイルッ!」
ミサイルを食らってドラゴノザウルスがひるんだ。
『今のうちです、ここはダイアナンに任せて急いで浮上してください!』
『了解!』
SJ-2は正常に戻った機器を操作して急旋回、浮上し始めた。
それをドラゴノザウルスが猛スピードで追いかけようとする。
「---させるかっ!」
ダイアナンはスカーレットビームでドラゴノザウルスの目を狙った。
視界を妨げられたドラゴノザウルスがひるんだ隙にダイアナンも急浮上を試みる。
しかし触手がダイアナンの足にからみついた。
ダイアナンに高圧電流が流れる。
「ああぁ~っ!」
再びひかるの悲鳴がスピーカーから流れてくる。
『ひかる、計器がイカれて正常に作動しなくなるぞ!何とか抜け出すんだ!』
「ひかる、気をしっかり持って!ブリザードスマッシュで身動きとれないようにするのよ」
ジュンの声がひかるのコックピットに響いた。
「くっ・・・」
痺れる手をなんとか動かし、ブリザードスマッシュのボタンを押した。
ドラゴノザウルスの一部が凍り、ダイアナンにからみついていた触手が抜け落ちた。
「今だ!ダイアナンA、GO!」
ひかるはダイアナンを垂直浮上させた。
しかし意識がもうろうとして操縦桿を握る手に力が入らない。
ひかるはそのまま意識を失い、ダイアナンは操縦不能となって海底に沈んでいった。
「ひかる、応答しろっひかる!」
「ひかる?しっかりして!」
さやか、ジュン、野中が呼び続けたが、ひかるからの応答はいっさい無かった。