アゴをつたって大粒の汗がとめどなく流れる。
鍾乳洞かよ。
の、つづき。
バッグはあった。
従業員のひとが見つけて保管してくれていた。
名前を聞かれたから、バッグの中の財布を確認してくれたのやろう。
つまり財布も無事ということや。
(やれやれ…)
心の底から安堵し、その途端汗は止まった。
すぐに取りに戻ろう。
また高速に乗らなあかんけど。
所在が明らかになれば心は軽い。
こういう事情やから、先にご飯食べといて、とオバアに言うたらイヤそうやった。
どこまでも協力的じゃないこの老人。
追い詰めるようなことをわめいたり、私の嫌がることしか言わないししない。
行動全てに一貫性がある。感心する。
悩み事が消え去った今の私には、いかなる些末なことも受け流せる。
よゆうのヨッちゃん。
ブダブダいうてるオバアを置いて家を出た。
サブスクで中森明菜を聴きながら、ひとりでごきげんサンセットドライブ。
店でカバンを受け取るときはほんとに恥ずかしかったなあ。
小さなロッカーからずしーっとしたバッグをおねえさんが出してきてくれた。
(ロッカー占領しとるやん…)
あー、なんでこんなでかいもん忘れるねんって思われてるんやろな。
恥の多い生涯に、新たなる伝説が加えられた。もう消えたい。
スーパーのカートにカバンをかけて、そのまま返してしまった話を姉から聞いた時は、
「そんなことあんの!ははは」
と、たいそうバカにしてた妹・マユピ。
同じ失敗をしてしまいました。
人の事笑えない。
ヤキがまわってる。
これが老いなのか。
マユショッカーズのみなさん、お先にボケます。
きぃーーー(奇声)
見つかった安堵感と大騒ぎした恥ずかしさで情緒がおかしくなりそうや。
これを書いてる間も、思い出して七転八倒しそうになる。
(もう二度とこんな思いをしたくない)
私は策を講じることにした。
(つづく)