第14話 冠への挑戦 | 虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

虹のふもとに眠る宝は何だと思う?

小説家デビューを目指し地道に執筆活動を続けるyuuma(立花 佑)の日記です。2017年からWebライター始めました&杉山貢大農園のお茶ネット販売&ハーブ畑作り&アルファポリスにて小説掲載中〜!

「昨今即位した執政官は軍閥政権を布く独裁者だ、国の強化と言って主要政策は軍拡ばかりだ、反政府組織と何度も紛争を起こしている、組織と言っても民兵を結集させた連合軍だよ」

 まだ十四歳にもかかわらず哲人のようなしゃべり方をするロインにヴレイは感心してしまった。


 デザートを食べ終えたルピナがナプキンで口を拭くと、機嫌をそこねたような顔つきで続きを話し始めた。
「確かそいつって王族本家の末裔でしょ、シルバーム王族本家は聖冠の力に翻弄されて国を荒廃させた歴史がある、それを阻止したのが分家だったわよね、聖冠は存在してはならないものだと国民に誓約し破壊した。もしかしたら新王ルベンスが政界に伸し上がったのは、聖冠を復活させるためかもしれないわ」


「僕も同感だよ、シルバーム城は新生と共に聖冠を創り出せる。ルベンスがここまで伸し上がれたのも裏で政府の協力がなければなしえない、そしてその見返りとして確実な地位と、金を払うって魂胆だよ、単純にね」


 二人が真剣に話し合っているのを見ながら、ヴレイは会話が途切れたことを確認すると戸惑いながら口を開いた。
「と、ところで二人が話してる意味が分からないんだけど、セイカンってなに」


「これだからインジョリックの人間ってのは頭固いんだから、つまりシルバーム特有の力なのよ、聖冠を手中に納めて国を統治するわけ」
「でも力を私利私欲に使うと安寧はもたらされず、国は荒廃し破滅への道を向かうってことだよ、インジョリックとは違ってグランドラインは昔からの古い力が眠っているからね」


「ふうん、つまり封印された冠を今の新王が復活させようとしているってことだろ、それには城の再生が必要だって言ってるのか」
「そうよ、何度も言ってるじゃない」

 簡単な数式を組み立てるように整理しながら言葉をつむいだヴレイに対して、ロインは浮かない顔で答えた。

「あんな奴が聖冠を持ったらシルバーム国はますます荒廃してしまう、聖冠の復活と軍拡には何か関係があるんじゃ」
「つまり城を再生させるには今ある城を破壊させる必要がある、だろ」
「多分そうだと思うけど」


 非常識話に怪訝しながらも、ふと自分の管轄内であろう知識をひねり出した。
「そいつは軍備を強化しているんだろ、それに反対して民衆の反発を受ける理由と言ったら、国に軍資金がなくなり始めてるってことだ、物造りで金がなくなり国民から資金を徴収しても間に合わなくなってきたんだ、それだけの軍資金を使って造っている物、城を崩すとなると主砲を搭載した船が必要だ」


「なるほど船か、理に適った正論だね」
「たまにはまともなことも言うのね」
 ルピナとヴレイの眼光が鋭く重なると、二人は同時にそっぽを向いた。


「ルベンスを失脚させることができれば、新たに王を即位させることができる。裁判が駄目なら直接本人の元へ赴くしかない、国を正しく統治できるは王族分家の末裔だ。歴史上では王族から国民になったけど、血は今でも受け継がれている、本人とは会談済みだよ」
 大義名分を背負うかのようにロインの瞳は怖いぐらいに精悍としていた。


「合法的なやり方じゃないけど、やってみる価値はありそうね。話を聞いてしまった以上付き合うしかないじゃない」
 拳に力を込めたルピナは一戦交える際に表れる鋭利な眼差しを見せて、笑んだ。


「シルバーム新王政権に僕らが反旗を翻すんだ、しかも他国の王族が内乱に加わるんだからリスクは大きいよ、本当は許可のない戦の干渉は許されていないんだ」
 ロインは剣呑な笑みをヴレイに見せた。


「お前達もしかしなくても、オウゾクってやつ」
 二人の放つ雰囲気が突然自分とは異質的なものに感じられて、漂ってくる崇高さに身を引いてしまった。

「「そうだよ」」
 
 二人から言われて、黙然するしかないヴレイは冷めてしまったコーヒーを飲み干し、思い立ったようにイスから立ち上がった。
「俺は別行動を取らせてもらうよ、世界が違うみたいだから、こっちはあるかないか分からない船を探してみる、もしかしたら城内にあるかもしれないし、もしあるとしたらその造船資材はどこから調達していると思う」
 
 んーっと数秒考えてからロインは答えてくれた。
「シルバームは鉱物や宝石が採れるんだ、だがら玉と交換に資材を調達している可能性があると僕は思う、だから軍資金もここまでもったんだ」
「じゃあその取引先は直接インジョリックか、それとも他国から」

「僕もそこまでは、他国からだとすれば造船技術や機械化が進んだロマノ国、あそこは軍事国家だから可能性は高いよ、他大陸とも貿易が盛んだからあの国は、どれがどうかした」
 ロインとルピナは慎重な面持ちでヴレイに視線を投げた。

「いや、グランドラインの技術だけで軍艦を造るのはさすがに難しいのかなって、些細な疑問だよ」
 怪しまれない程度に返答したヴレイは「おやすみ」と言って、その場から退散した。


 二人と行動を共にしなくともシルバームに行けばどうにかなりそうだと思ったのだ。しかもこの二人と組んだ挙句、戦にでも巻き込まれたら厄介だ、と判断した結果だった。


* * *


 ヴレイが退席してから二人は自室に戻った。

 二人部屋の船室は狭い。ロフト付きの二段ベッドと、おまけのように付いているテーブルで部屋はいっぱいだ。
 いくら幼馴染の仲とはいえ、着替えるにもベッドのカーテンを閉めてそこで着替えるしかなかった。


 シャワーを浴びた後、枕を腕に抱いたロインがロフトから顔を出した。
「あのさ、僕考えたんだけど」

 窓際のイスに腰掛けて刃を手入れしていたルピナが手を止めた。

「聡明な王子が何か思いつきましたか?」
 剣を鞘に納めてると、イスから立ち上がり、もう一度抜いて凛と構えた。
 天井を仰いだ刃先には痛く光を宿していた。


「新王軍を制圧するにベフェナの軍を動かすことはできない、だからと言って各地域に散っている連合軍が首都リベロットに到着するまで一ヶ月以上はかかる、ルベンスを落とすには一ヶ月では心許さない、だからこちらから先手を打とうと思う、それには召喚獣の精鋭部隊でシルバーム城を直接攻撃するほかないと思う」


「召喚獣ってそんなにたくさん召喚できるわけ」
「裏技かな、召喚術の専門書に載ってるからそれに習って召喚力を高めれば、三百体ぐらいは同時に召喚できる」
「すごいじゃない、いけるかもしれないわね」
 ルピナは紺碧の瞳を輝かせて、剣を握る手に力を入れた。


 大きな期待に反してロインは枕を抱く腕に震えが走った。
 瞬間的に召喚力を大量に消費するため、大きな反動が返ってくるに違いなかった。その反動に体が耐えられなければ、召喚能力を一生使うことができなくなる、それ以前にこの決断が本当に正しかったのかさえ分からなくなりそうで、ロインは不安に駆られた。


「念のため首都圏で固まっている連合軍だけは集めさせたいわね」
「大丈夫、それは手はず済みだよ」

 自慢げなロインの笑みに、ルピナは完敗の笑みを返すので精一杯だった。

 自分のベッドに上がったルピナはふと思った疑問を投げかけた。
「そういえば、さっきあいつが言ってた造船材料のこと、何であいつが気にするの? 所詮他大陸の人間でしょ」


 ベッドに横になって、頭の下で指を組んだロインは眠そうな声で答えた。
「だからじゃないかな、グランドラインの機械文明が進歩すれば、それだけインジョリックの脅威になるかもしれないしね」
「だとしたら、そんなこと心配しに大陸を渡って来たあいつって何者」


「何か企んでいるような人には見えなかったけど」
「私だってそう思うわよ、でもただの観光客があそこまでするわけないじゃない、それに見たでしょ、あいつは魔力でもない力を使って護衛獣を倒したのよ、そもそもなんで私達の協力者みたいになってるわけ」


「まあ、でもさ今のところ僕らに危害はないわけだし、様子見ようよ」
「甘いわね、ロインは」
「ルピナは手厳しいな……」と言いながらロインの声は寝息へと変わってしまった。


 明かりを消すと部屋は船体に打ちつける波の音に支配され、長くて深い夜に包まれた。




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