僕が大学に入った頃、冷戦は終結し、ソ連は崩壊していた。フランシス・フクヤマは『歴史の終わり』を書いて、リベラル陣営の勝利を宣言した。だからキャンパスで「新左翼」を名乗る人たちと話したとき、僕は思わず「左翼は消滅したと思ってました」と言ったものだった。
 歴史は終わっていない。グローバリゼーションの進展で格差が拡大し、鬱屈を抱えた人々は反動的に狭隘なナショナリズムにすがるようになった。映画『帰ってきたヒトラー』のラストで、現代にタイムスリップしてきたヒトラーはつぶやく。「好機到来だ」と。
 日本の学生運動のメルクマールは、やはり「全共闘」なのだ。これはいつまでたっても更新されない。だから本書も「全共闘以後」の歴史をえぐり出す。
 最近は「~くずれの◯◯」という言い方を聞かなくなった。たとえばルーシー・モノストーンなら「ミュージシャンくずれの革命家(笑)」(『多重人格探偵サイコ』)とか。外山恒一さんをこの言い方で表すと「左翼くずれのファシスト」か?
 おかしい。「くずれ」どころか「あがり」ではないのか?
 外山さんがバーの雇われ店長をしていたとき、福岡の西新のその店に飲みに行って、「デモ論とか書かないんですか?」と訊いたことがあった。本書はその「デモ論」の基礎資料にあたるのかもしれない。

 

 

 

 

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