フランスの同時多発テロ事件で、私たちは様々なことを突きつけられた気がする。

 なぜこんな残忍なテロが起こるのか。
 実行犯や組織の意図は何か。
 イラクやシリアでのテロや虐殺にはほぼ無関心なのに、なぜパリでテロが起こるとこんなにも関心を示すのか。
 「テロとの戦い」に勝利はあるのか。そもそも、誰が誰に「勝つ」のか。もしその戦いに勝利があるとして、勝利後はテロが根絶されるのか。

 重く難しい問いで、簡単には答えられそうにない。
 アメリカの9・11後、自分なりにちょっとだけイスラムについて勉強して、わかったことがある。イスラム原理主義には、聖戦(ジハード)や殉教(シャヒード)を基礎づける思想があるということだ。たとえば「ジャーヒリーヤ論」によれば、暴政を「無明(ジャーヒリーヤ)」だと見なし、ジハードで打倒することが正当化される。ジハードで死んだ者は殉教者であり、天国(楽園)への道が約束されている。
 これは適切な例えではないかもしれないが、2008年の秋葉原通り魔事件を思い出してみてほしい。実行犯の加藤智大の凶行について、彼の成育歴や人格、彼が置かれていた状況や社会的背景などから、それらしい説明をすることはできるだろう。しかし、その行為に「大義」を見出す者などいないはずだ。
 だが、イスラム原理主義のテロは、ときにジハードと呼ばれ、それを肯定するような宗教的思想がある。もちろん、穏健派のムスリムは非難するだろう。しかし、一部にでも、ジハードという「大義」によって、テロを称賛する者たちがいる。これをどう考えるべきだろうか。

 ひとつ言えることは、私たち人間は、どんな恐ろしいことでも「言語」や「論理」や「思想」で正当化できてしまえる存在だということだ。
 イスラム原理主義は、私たちと無関係な「悪」ではない。
 そんなことを考えた。


  (参照)
「テロ」について考えるための断章http://togetter.com/li/900581



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