39度に設定。湯量は120リットル。
タオル地のヘアターバンと薄手のタオルを準備する。
薄手のタオルには、田中正明商店と書いてある。
この粗品のタオルの薄さが浴室で使うのには丁度良い。
明るいうちにお風呂に入る。
そして髪を洗う。
うつむいて髪を洗う時には目を閉じる。セミロングの髪が保護膜みたいになって外の世界からのバリアになってくれる。
無防備な姿なのに護られているような気持ちになる。
シャンプーの花のような少し甘い香りに包まれる。
髪を洗っていると、不思議なことに考えがネガティヴなほうに流れていくことなく、時折、啓示のような気づきを手に入れられるように感じる。
「わたしが選んでいたんだな」
この気づきは、どこからやってくるのか。頭の上のほうからなのか、わたしの中からなのか。
トリートメントを優しく髪に撫でつけ、また丁寧に洗い流す。
湯船に浸り まずは右腕をそっと撫でる。
そして左腕。わたしには左肩から左手にかけて大きな痣がある。この痣を隠して生きてきた「娘さん」と呼ばれる時代。
お洒落したい、でも隠したい。その二つの願いの折り合いのつく所を探しながら服を選んできた。
海には近づかなかった。
そろそろ、この痣のある左腕を受け入れなきゃな。と 無理矢理 晒したこともあった。居心地の悪さと、他人の視線を意識し過ぎて 帰宅後 ひどく疲れを感じた。
この痣が無かったら
と 何度 思っただろうか。
この痣が無かったら
どうしてた?
背中の大きく開いた ワンピースを着ただろうか。真っ赤なタンクトップを選んだだろうか。海にも行ったかな。
痣のせいにして 出来なかったと思っていた。
あたたかいお湯に浸かり、何度も左腕を撫でながら、痣のせいにして、やらなかったんだな…と 思い到った。
わたしが選んでいたんだな。
鼻の奥がツンとなった。
ぽちゃん という 自分が立てた水音を合図に 湯船から上がる。
投稿するの怖かったけれど
わたしのために 書きました。
読んでくださって ありがとうございました。

