※とある映画のネタバレを含むので、映画の名前が出てきたら要注意です。
日経サイエンス記事によれば、とある科学者(医者)が、自身の「手」で、こんな実験をした。
「左手の指の関節を、各指一日に2回以上鳴らす。
対して、右手の指は、比較対象として自然に鳴ってしまう以外は鳴らさない。」
このような実験を50年にわたって行い、自身の左手のみが関節炎に罹患するか否か。
彼曰く。
「幼少のみぎり、私が指の関節を鳴らすことを覚えた。
しかし、それを行うとき、ある権威筋(両親、祖母、教師等)から
執拗に『それを頻回に行うなら関節炎になるだろう』との警告を受けた。
あまりに強く主張されることに反比例して、私の中では『ほんとうにそのようなことが起こるのか』と、
反駁心を主たる動機として、このように検証する方法論を構築した」
彼は立派に目的を果たした。
すなわち、左手の指は関節炎にならなかったのだ!!!
彼は、実験の方法と結果を、ムスコの小学校での講演で自慢気に披露した。
そしたら、ムスコの同級生が、
「老人ホームで、関節炎にかかっているヒトが昔指を鳴らしていたかどうかを聴けばいいんじゃないですか」と言い放った。
費用対効果もよい。一般化も比べて容易である。
いやあ、実に若さのにじむ、明朗な答えである。
でも、50年指を鳴らし続けるこの実験は、この科学者にとって、すなわち復讐である、ということなのだよ。
科学とかいうけど、結局は好奇心とか、復讐とか、まあそんな原始的な感情から始まるのだ。
小学生にはまだ、ヒトのふくよかな単純さはわかるまい!
この科学者にとって、当実験は非常に満足できる結論だった。
だって、彼の身体において、教師や親の警告は反証されたのだから。
一般化?クソ喰らえ!私は関節炎にならなかったではないか!
封切り初日、「サロゲート」という映画を観た。
現在、脳科学の最先端で研究されている、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)という技術は、
脳の活動時に発される微細な電気信号を感知し、人工身体を動かそうというもの。
当初は、身体の不自由なヒトのために、という名目で開発されるのだが(ココまでは、今現在、ほんとうに起きている過程)
そのうち、自分ではないよな美しい人工身体(サロゲート)を提供する会社が現れ、
「あなたは傷つくこともなく、老いることもなく、世界を思うように動けるのです!!」と、そそのかした結果
元気な人もみんな自宅で寝そべって人工身体を動かすようになっちゃう、という世界。
これがまた、ハリウッドらしく、ストーリーが極めてシンプル。
この仕組みを作った本人が後悔して、システム自体を壊そうとする。
その時、動かす側も殺されてしまうという、まあ一種の自爆テロですね。
主人公はブルース・ウィリスで、彼も最初はサロゲートを使っているのだが、
ダイハードみたいにはっちゃきするモンだから、サロゲートがこわれちゃって、
生身でテロを阻止しようとする。
サロゲートよりジョン・マクレーンのほうが強いんだもんねっ。
いろいろあって、人間は救った。
では、サロゲートシステムそのものを存続できるボタンを押すかどうか、選択の数秒。
彼は、コドモを亡くしてひきこもってしまった奥さんを、部屋から出し向き合うために、
「NO」の選択をする。
快適に生きる権利?クソ喰らえ!彼女は部屋から出てきたではないか!
科学の一般化など、正しい使い方など、いとも脆い。
世界は、極めて個人的なある人のある時のある感情で、ごろりと転がる。


