大塚駅を出て、ゆっくりと歩き始める。
このあたりはどこか生活の温度が残っていて、歩き出しとしてちょうどいい。
しばらく進むと、空気が変わる。
雑司ヶ谷霊園に入ると、木漏れ日の中で時間が少しやわらかくなるような感覚になる。
都心にいることを一瞬忘れる場所だ。
そこを抜けると現れるのが、のぞき坂。
何度見ても、この坂の傾斜はちょっとしたインパクトがある。
思わず足を止めて、下の街を見下ろしてしまう。
坂を下りると神田川。
このあたりの川は意外と深く、都市の中に刻まれた“人工の谷”のようにも見える。
かつては水質の問題もあったけれど、今では鮎が戻ってくるほどに回復していると聞くと、少し見方が変わる。
川沿いを歩いていくと、面影橋。
特別な観光地ではないけれど、不思議と立ち止まりたくなる場所だ。
名前の通り、どこか昔の気配が残っていて、時間がゆるむ。
そこから先は一転して、明治通り。
車の音、人の流れ、街のスピードが一気に戻ってくる。さっきまでの静けさが、少し遠くなる。
そして新宿三丁目へ。
人の多さに戻ってきたとき、さっき歩いてきた道の静けさが、ふと余韻として残っているのに気づく。
このルートは、
「静かな東京」と「動いている東京」を短い距離で行き来できる、ちょっと贅沢な散歩コースだった。





