前回は社会学者だったが、今回は哲学者対AIだ。
こちらの方がページは少ないが、断然読みごたえがある。

そもそもこの全体主義社会に対するスタンスがいい。
安倍晋三を一刀両断するその視点。高市などなおさらだ。
今のアルゴリズム社会を「檻」と表現。
結構哲学的。

はて、私はAIの本を手に取ったはずだが、と思いだした頃に、
ヤキイモ問題が出現。
スクワットの回数を増やすくらいなら、冷蔵庫のヤキイモを捨てよ、というgemini。
さらに、存在しないレストランを、休みの日のレストランを薦めてくるgemini。

スクワットのくだりなど読むと、私のランニングへのアドバイス「ピッチを180に」
など思い出し、結構使いこなしていると感じる。
ただ、気になったのは、檻。
もしやわたしもいつしかgeminiに飼い殺しにあっているのではないかと。
仮説を立てgeminiに投げ、肯定され、しかし疑問があれば突っ込み、修正し、
結論を出し、行動に移す。
今や定年後の人生もかけつつある。
人にも相談するが、自問自答は、実は自問AI答だったりする。
定年後の再雇用の給与と年金の減額、社会保険料、何でもかんでもAIで確認する。
飼い殺されているのか?

そんな気分になったところで、この新書には「補遺」がある。やたら長い。
この新書の原稿をgeminiに読ませ、感想を聞いたり、突っ込んだりしているのだ。
これが面白い。というかこれがメインではないのか。

ここでも檻、飼い殺すことがテーマになる。
著者はもともとヤキイモを捨てるべきと分かっていたのだが

その最終判断をgeminiに委ねた?
背中を押してもらった?
AIの使い方としてそれはどうなの?

この本の著者はかなり自分と近いところにいる気がする。
キーワードにゲーテ、ニーチェ、保守思想が出てくる。
哲学の専門家に対し僭越ではあるが、AIとの向き合い方においては、
先に読んだ社会学者のそれとは違う手ごたえを感じた。

 

■はじめに 人間はすでに負けている

■第一章 平準化という名の暴力

 剥製にされる文化
 リズムの屠殺
 要約で人間は秒速でバカになる
 誤読という暴力
 サンマには骨がある
 気晴らしという牢獄
 わかりやすいことはたいてい嘘
 理性信仰の末路
 コピペ職人の「オリジナリティ」
 著作権ロンダリング装置
 文体という顔貌

■第二章 「心地よい檻」という全体主義

 監視資本主義
 デジタル・カルトの誕生
 「あなたへのおすすめ」という屈辱
 パノプティコンと内なる看守
 バカの勝利
 「本物」の不在

■第三章 家畜による家畜のための民主主義

 買われる「民意」
 繁盛するエセ保守市場
 政治は娯楽になった
 市場化する民主主義
 投票という錯覚
 平等を欲しがる人々

■第四章 身体という砦

 最短距離が奪うもの
 快適さは毒である
 映画『マトリックス』の世界線
 日本人は豚になる
 崩壊する教育現場
 快適さは人間を壊す

■第五章 人間の終焉

 自由意志は必要か
 バカとAIの共犯関係
 Geminiとの対話
 焼き芋を捨てさせられる
 正しさに従った日

■第六章 敗北の系譜学

 人間はなぜ等価になったのか
 Geminiが絶賛する和食屋
 問いという罠
 飼い殺しの完成

■補遺

■おわりに バベルの図書館