またまたpodcastゆる言語ラジオの水野太貴さんの本。
前回は子供のいい間違いで楽しくわかりやすかったが、今回は本格的。
ひとは、たった0.2秒の間に、話し手の言葉を理解し、さらに自分の言葉を用意し、
対話する。そのすごさを分析した本。
難解。
最後のほうのまとめから引用すると、
聞き手は
●文構造の解析 単語の切れ目を解析 語と語の結びつきを分析
●意味の理解 意味の検索
●語用論的な推論 イエスノー疑問か、言語行為か、、、
をして、話し手の発話を理解する。
そこから今度は自分自身が話し手となるために
●ターンテイキングの準備 自分がいつしゃべるタイミングかを計る
●応答内容の整理 フィラー(えーと)やジェスチャーで
●応答内容を文にする 相手を気づつけたり不快にしないよう
●応答 音声産出
となる。ここまでが200ミリ秒。つまり0.2秒というのだ。
普段何気なくかわす対話も、こうして考えると、深い。
フィラー、「えーと」、「あのー」も、場面場面で適切か否かが変わる。
深い。深いぞ。
自閉スペクトラム症(ASD)に話が及ぶのがまた興味深い。
「ASDの子は津軽弁でなく標準語を話す」説。
津軽地方でもTVが発達、標準語がベースとなるが、
子供たちは、相手と近くなると津軽弁で話し出すという。
それがASDの子はいつまでも標準語のままだと。
これは考えさせられる。相手との距離が取りにくい、相手の立場で考えられない
ASDの特性を良く表している。
深いなあ。
まえがき
日々繰り広げられる、0・1秒単位の競争
10分の激論を464ページで解説するように
言語漬けの青春
謎解きの鍵は「文脈」から
第一章 コミュニケーション上手になるための「語用論」
イギリスの裁判所を揺らした発言
大ポカした就職面接「会いたい人は?」
謎まみれの解釈メカニズム
ことばとは、世界への働きかけである
「させていただく」を「食べログ」で研究する
「会話は協調して行なえ」グライスが説いたこと
福本伸行『アカギ』でわかる語用論
「それはそれ、これはこれ」がなぜ成立する?
芸人のボケを語用論してみる
発話の解釈を導き出すには?
発話の解釈はコスパで決まる
コミュニケーションモデルは「暗号解読」から「推論」へ
文脈を科学する3つの知見
第二章 ことばには“奥行き”がある
インドの新聞に躍った見出し「ドナルド・トランプの死」
言語学者が最も注目する「単語の並べ方」
天才ソシュールの言っていたすごいこと
未知の言語の記録に燃えるアメリカ構造主義言語学
引用ランキングトップで唯一存命。言語学者チョムスキーの仕事
難解なのにハマる人が多い「生成文法」
文は何からできている?
樹形図の上がる下がるに興奮する
文の理解には二次元的な情報が必要だ
視覚思考者(ビジュアル・シンカー)が教えてくれること
伝言ゲームにはノイズが入るもの
第三章 あなたは「ネコ」の意味さえ説明できない
君の言っているのとぼくの言うのとは意味が違うんだよ
意味の研究、難解すぎる
「見えないものは扱わない」学派もある
意味は要素を列挙してもわからない
指さしたらあとは「ネコ」の意味なんて知らない
難解で地味だけど重要な形式意味論
類似性を見つけてまとめるカテゴリー化
「言語は比喩でできている」認知意味論
僕たちは「時間」を比喩を通して理解している
日本語の単語の意味も考える
「近づく」と「近寄る」はどう違う?
検索エンジンの予測のように、頭に浮かぶことば
言語はコミュニケーションのツールの一つにすぎない
第四章 言語化の隠れた立役者たち
「なぜサッチャーはこうも頻繁に話を遮られるのか」論文
自殺予防センターで生まれた「会話分析」
雨粒が水面に落ちる過程
会話分析の研究者が最初に注目したこと
会話の順番交替は先読みできる
聞き手の沈黙時間を話し手はどうとらえるか
「はい」より「いいえ」の方が沈黙が長い
沈黙は重要な情報となる
なぜリモート飲み会は定着しなかったのか
まあ、あのー、そのー、こう、えーっと……
「あのー」と「えーと」の違い
「うーん」はどんなときに使うか
僕たちがフィラーを口にするわけ
電話中についしているジェスチャーの正体
ジェスチャーを封じられるとフィラーが増える
ことばとジェスチャー、どっちが先か
あまりに鮮やかな実験
オノマトペは「言語化されたジェスチャー」
言語のサブ的要素が言語化に役立つ
僕らは日々ものすごいことをやっている
終 章 世界は広い! 驚きのコミュニケーション
なんでそうなる? あの国この国
日本でも違う、東北と近畿
自閉スペクトラム症の子どもは津軽弁を話さない?
コミュニケーションの「普通」って?
「彼女は海が好きだ」「彼女は海が好きだった」今も付き合ってるのは?
「ね」と「よ」の違いは難しすぎる
発話における「普通」を考える
発音時の自分の舌、唇、口の動き
自己紹介のたびに気が重くなる吃音当事者
たまたまできる発音という不思議
日本語話者の会話は世界的せっかち
会話の流暢さと能力主義の関係
言語学を学んでわかった、言語の限界
「自分と出会い直す」という希望
あとがき
発酵デザイナーとの散歩
いびつな本です。でも
壮大な問いに挑戦してみる
言語学に携わる方々に感謝を込めて
【後注】
もっと知りたくなった読者のための30冊


