生活保護よりも、ベーシックインカムよりも、給付という面では間違いなくすぐれているベーシックサービス。
施しを受けるような精神的苦痛もないし、余計な事務手続きはいらないし、不要な人に給付することもない。
その面においては最高の政策。


しかし。
これは特定分野のサービスにしか適用できない、と私は考える。
著作にも取り上げられている、数年前安倍首相が消費税増税分を充てる、といった保育園サービスだけだ。
大学無償化ですら無理がある。衣食住となれば論外。

その理由は、まさに新自由主義に被ってしまうが、公的サービスの質の低下に直結する、ということだ。
もうひとつ、既得権が幅を利かせることにならざるを得ない、ということだ。

1つ目の公的サービスの低下、、、もしかしたらこれは考えが古いのかもしれないが。
民間サービスの費用を全額国が負担する、ということなのだろうか
その際競争原理は働くのだろうか。
著者は競争はいらない、といっているが、
思い出すのは国鉄とJRの違い、民営化によってサービスがよくなったこと。
国が全額負担するなら、客は二の次、となりはしないか?
では国がサービスのチェックをするのか?まず無理だろう。
そこは競争原理で、いいサービスのところに人が集まる、儲かる、という図式が欲しいところだ。
保育園は、定員待ち解消に必死だから、最低限、子供をしっかり預かってもらえばいい、
ということでさほど問題は起きず、それでなりたつのだろう。バス置き去りは論外だが。
それが高校大学になったとき、無償化はどう作用するのか。
学歴だけもらえればいい大学と、高度な教育を行う大学で、どちらも同じように国が全額負担したらどうなるのか。
悪貨は良貨を駆逐しないか。
この本にはこちらにも言及してほしかった。(もうすぐ著者の別の本を読むのでそこに答えがあるか知りたい)

そして2つめ、既得権。
これは居住サービスのことだ。
なにをして住む権利を保障するか。
どこに住みたいか、という時点で費用は相当変わる。
先祖代々の家に住みたい人もいれば、都心の便利なところに住みたい人もいる。
それをどう保証するというのか?
仮に貧しい人であれ、仕事のためにいい場所で住まないと成り立たない、という人もいよう。
しかしそれをベーシックサービスは認めるのか?その基準は何か?
結局、今住んでいる権利を認める、というのが落としどころになりはしないか?
そうなると、今後人々が引っ越したいときそれをどう認めるのか、、、
わからない。

ということで、総論賛成各論反対、というのではなく、需給側のメリットは認めるが、給付側の負の側面を解決しないと、
到底実現できない制度だと私は感じた。

 


■序章:不条理に怒りを!
「俺のようになったいけんよ」と僕が語るわけ/自分で生きろ!と言われても・・・・/僕が助かると家族が不幸になる社会/政治家のせいだ、はもう聞きあきた
■第1章:政治に負けて生まれたベーシックサービス
まさか、あの自民党が!/いまだから話せる希望の党への合流問題/政治との訣別、そして未練/お金なんかで人間のあつかいを変えてたまるか!
■第2章:私の幸せとあなたの幸せをひとつに
お金持ちが受益者になれば格差は拡大?/疑いのまなざしが支配する社会/信頼したほうが得をする社会/多様性を大事にするために
■第3章:できる大改革 できない大改革
ベーシックインカムなら知ってるけどね/特別定額給付金から見えたこと/「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会/消費増税は景気を悪くするの?/認められたいという欲求を満たす/MMTじゃいけないの?問われる人間観と社会観
■第4章:新型コロナウイルスが教えてくれたこと
感染予防か?経済か?/政府の「強硬な行動」への抗議/自粛という言葉の恐ろしさ/働きかたまで指図する国/全体主義の条件を満たしつつある日本/ベーシックサービスがなぜ重要なのか/歴史の分岐点だからこそ思うこと
■第5章:ベーシックサービス、その先へ
母と叔母の不可解な行動/それは福祉ではなく、自治だ!/ソーシャルワーカーとベーシックサービス/さあ社会を語ろう、そして変えよう