東京MXの「寺島実郎の世界を知る力」は毎回必ず見ているが、
この本はその内容を何年分も集約したような、中身の濃いものになっている。
最大の論点は、「世界のGDPに占める日本の割合、明治維新の時は3%。
それが戦争直前に5%に上がり、敗戦で3%に戻る。
その後経済成長を果たし、1994年に18%とピークを迎え、
2023年に4%に落ち込んだ」という現実。
まさに失われた30年。この現実をどう見るか、これに尽きる。
このまま日本は「一瞬だけ反映した奇妙な国」で終わるのか。
アベノミクスの功罪、というより、安倍晋三という政治家の分析も的を射ている。
はっきり言ってしまえば学がない。学んでいないまま宰相になってしまった。
今日総裁選不出馬を表明した岸田も同じ。何が「新しい資本主義」か。
ミルトン・フリードマンの名前も何度も出てくる。小さな政府。
私はこのこと自体は間違っていないと今も思うが、ただ、再分配は必要。
運で財を成した人は世の中に貢献しなくてはいけないのだ。
かつての人はそれができたが、今の人は税金逃れしか考えていない。せこい。

・・・再生の構想、とあるが、日本再生のヒントはこの本にもあまり描かれていない。描けない現状なのだろう。「分配」がヒントにはなるのだろうが。

寺島氏のような人が政治家になればいいのに、と思う。
学、教養あっての政治。今の政治家にはそれがない。
世襲、エリート官僚しか選挙に勝てない国ではだめだ

 

はじめに 二一世紀システムを生きる日本――全体知の中での構想

◎ 針路 日本再生の構想――進むべき道筋

第1章 二一世紀日本再生の構想――三つの柱
 1 構想の前提となる内外の潮流への基本認識
 2 第一の柱 日米同盟の再設計と柔軟な多次元外交の創造
 3 第二の柱 アベノミクスとの決別とレジリエンス強化の産業創生
 4 第三の柱 戦後民主主義の錬磨――新しい政治改革と高齢者革命の可能性

第2章 前提となる時代認識――歴史的転換点に立つ日本
 1 近現代史の折り返し点に立つ日本
 2 四つの帝国の解体と二つの理念の登場――一〇〇年前の世界
 3 二〇世紀世界システムにおける日本――戦後日本の繁栄とは何だったのか

第3章 二一世紀システムの輪郭
 1 二一世紀システムの宿痾としての金融不安
 2 ロシア・中国の衰退とその意味
 3 米国の衰退とその本質
 4 三人の先人の構想――福沢諭吉、石橋湛山、そして高坂正堯
 5 国家構想なき日本を超えて

◎ 道筋 全体知に立つ――構想に至る思索のプロセス

◯ 考察1 時代認識との格闘――パンデミック、国際関係

第1章 コロナと並走して
 1 新型コロナ危機の本質
 2 コロナ危機の中間総括

第2章 ウクライナ危機とロシアを見つめる眼
 1 プーチンの誤算
 2 ロシア正教の意味
 3 近代史におけるロシアと日本

第3章 対米関係再検討への基軸
 1 バイデンの米国と正対する日本外交の構想力
 2 尖閣問題の本質と外交的解決策の模索

◯ 考察2 民主主義と資本主義の相関性

第1章 民主主義の歴史を考える
 1 中国・国家資本主義という擬制
 2 古代アテネの民主制の基盤
 3 近代民主主義の成立要件と二一世紀における模索

第2章 戦後民主主義を守り抜く覚悟
 1 「与えられた民主主義」を超えて
 2 戦後日本の大衆民主主義 都市新中間層の今
 3 戦後民主主義と安倍政治

◯ 考察3 経済・産業再生への進路

第1章 これからの経済を考え抜く
 1 日本経済・産業再生への道筋
 2 「脱成長」という視界から新たな産業論へ

第2章 「新しい資本主義」か「あるべき資本主義」か
 1 「新しい資本主義」への視界
 2 公正な分配とは何か
 3 新次元のルール形成へ

 おわりに 一九九四シンドロームを超えて