実は山頭火のことをよく知らない。
なんとなく、凄い詩人、俳人らしい、という知識がある程度。
そこにこの本を読んでしまった。
町田康さんの、べらんめえというか、話し言葉というか、思ったまま書くというか、
すぐどこかに飛んで行ってしまう技法のもとで、山頭火の生涯を知る。

薄い知識では哲学的な人のようなイメージがあった山頭火。
町田さんの前でもろくもそのイメージは崩れました。
ただの酒飲み、放蕩息子。そもそも親もダメ。財産潰しで息子山頭火も大学中退。
九州に逃げ、家族を持つも、一念発起?家族を置いて東京に戻る。
でもカネに困り、、、そう、このひと常に金には苦労している。
そんななかついに仏門に入り、托鉢みたいなもんで凌ぐようになるが、
それも続かない。
今度は庵を構えようとするが、ここでもカネがいる。支援者を頼り、会費を頼るも
会報を出すカネすらない、、、

ぐだぐだ。
そんな中で彼の詩は生まれる。

人間、そんなもんだ。それでいい。

 

 

第一部
解くすべもない惑ひを背負うて

分け入つても分け入つても 6
分け入らなければならなかったのはなぜか 12
親、ボンクラで 18
切っても切れぬ文芸と銭 25
落ち延びて熊本 36
百%非文人的行為 43
妻子置き去り、東京へ 51
句のために苦を求め 60
つきまとう銭の苦労 71
「僕ニ不治の宿痾あり」 80
離婚離婚離婚 89
自殺した母の記憶 96
弟・二郎までが…… 105
関東大震災に遭う 113
文学の根底にあるもの 122
もうひとりの救世主 128
堂守のマージン 144
「尊敬してきよんねん」 153
惑ひの正体 162

第二部
読み解き山頭火

「分け入つても分け入つても青い山」 追い込まれて行く先 174
「まつすぐな道でさみしい」㊀ 人間の完成を目指して 186
「まつすぐな道でさみしい」 ㊁ なにがさほどにさみしいのか 198
「どうしようもないわたしが歩いてゐる」 ㊀ かなりしんどくなって 207
「どうしようもないわたしが歩いてゐる」 ㊁ 空しさ覚える 219
「酔うてこほろぎと寝てゐたよ」 ㊀ 酔中野宿 229
「酔うてこほろぎと寝てゐたよ」 ㊁ 俳句、澄んでいるか、濁っているか 240
「うしろ姿のしぐれてゆくか」 ㊀ 朽ちた法衣 249
「うしろ姿のしぐれてゆくか」 ㊁ 行乞の天国と地獄 259
「うしろ姿のしぐれてゆくか」 ㊂ 歩くのがいやになった 271
「うしろ姿のしぐれてゆくか」 ㊃ 自嘲 284

後書きにかえて 「行乞記」「其中日記」 301
略年譜 306
本文掲載俳句索引 311

種田山頭火(たねだ・さんとうか)
自由律俳句の俳人。俳句雑誌『層雲』主宰の荻原井泉水門下。明治1 5( 1 8 8 2 )年1 2月3日、山口県佐波郡( 現在の防府市)に種田竹治郎、フサの長男として生れる。本名、正一。父竹治郎は約千坪の土地を持つ大地主だった。母フサは山頭火1 0 歳の時に自殺。大正1 4( 1 9 2 5 )年、熊本市・ 曹洞宗報恩寺で出家得度。耕畝(こうほ)と改名。その後、各地を行乞し、万二千余りの句を詠む。 昭和1 5( 1 9 4 0 )年1 0月1 1日、午前4時( 推定) 、愛媛県松山市の一草庵で死亡。5 7 歳。(参考:新編 山頭火全集)