地震大国日本で原発を持つ理由、私は、原爆を作る能力を保持したいから、
だと思っていた。この新書でも自民党石破さんらがそう言っている。
北朝鮮中国ロシアアメリカと、核保有国に囲まれた日本として、
下手な軍事力よりも抑止力がある、という見方には一理はある。
しかし同時に、原子力発電所にミサイルを撃ち込まれたら原爆を落とされるより
遥かに甚大な被害になることは、福島原発の事故で証明済み。
要は論理破綻しているのだ。

しかしことはそんな単純ではない。
原子力発電所利権がしっかり日本経済に組み込まれている。
もちろんその主役は電力会社。官僚。議員。
我々市民から吸い上げる電力料金が、パーティ券に化ける。
さらに官僚の天下りの報酬、退職金に化ける。
結局今の世の中の図式そのものになる。
議員、官僚、大企業。
原発であれ、武器であれ、五輪であれ、万博であれ、神宮再開発であれ、
何か大きなことをしでかして国の金、国民からの血税を動かし、
その甘い汁を吸うのは議員であり、官僚であり、大企業になってしまっている。

日本が成長しているうちはそれでもよかった。みながそれぞれ恩恵にあずかれた。
しかし、衰退国、沈みゆく国に日本がなってしまってからは、パイの奪い合い。
一般の国民はどんどん貧困化する。
・・・私は数年前、「夏休みになると痩せる子供たちがいる」という話を
地元の関係者から聞いた時には信じられなかった。
この日本でそんなことがあるのかと。
あるのだ。今や子ども食堂は当たり前。満足に食事がとれない子が、いや大人も、
大勢いるのだ。7人に一人が相対的貧困。
もちろん、スマホだなんだと、生活が快適になっている部分は多々ある。
しかし、基本的な衣食住が十分でない国民が増えてしまっているのだ。

そんな状況の中で、軍事力倍増、原発増設、万博開催などと、
国民から金を吸い上げてよいのだろうか?


メディアを3社移って、あくまで個人の活動としてこの新書を出版したこの記者に
敬意を表する。

 

第1章 「復興」の現状は
第2章 原子力専門家の疑問
第3章 原発はなぜ始まったか
第4章 原子力ムラの人々
第5章 原発と核兵器
第6章 作られる新たな「安全神話」
第7章 原発ゼロで生きる方法