これは刺激的な新書だった。
「買い負け」の言葉は知っていた。
日本が海外から調達しようとしても、中国などに買い負ける現象。
私はこれは単に経済力の差、かと思っていた。
急成長で金回りのいい中国などが、失われた30年で疲弊した日本よりも豊かになり、
金にものを言わせて半導体でもマグロでもじゃんじゃん買う、
そのことだと思ってた。
外国人留学生の数が増えない、減っているのは、日本の経済力を反映した円安もあり、
日本の賃金が諸外国と比べ安くなってしまったから、、、。
そういう面は確かにある。それは間違ってない。

ただ、それだけではなかった。
2章が肝。

商社経由で買うこと、直接交渉しないことで、相手の顔が見えない
こちらの要望、熱意が伝わらない。
なるほど。これは英語アレルギー、交渉下手な日本であれば確かにある。
でも今に始まったことじゃない。高度成長のときからそうったのでは?

ここからだ。
品質追求。
品質に対するこだわりが強すぎ。
他国が気にしないことも気に留めて、
交渉が進まない。歩留まりが悪くなる。
・・・・そうなればそんなことを気にせず買ってくれる国のほうが
売り手としては都合がいい。
これは買い負けではなく買い渋りみたいなもんだろう。
そうしないと日本で売れない、、、
そんなこと言ってるうちに日本にものが来なくなる。
クレーマーの増加が遠因ってことか。

さらに、
意思決定の遅さ。
その場で即決できなければ、すぐ決めてくれる方になびくのは当たり前。
無駄な値引き交渉をして結局できず時間だけがかかり、ものがなくなる。
昔役所のたらいまわしが問題になっていたが、
今や私企業にもこれが蔓延している、ということだ。

そういえば、、、私は大企業から中小企業に転職を繰り返したが、
スピードが全く違った。
特に前職はワンマンオーナー社長の脅威のスピード決裁で、
中小企業から1兆円企業にのし上がった。

品質へのこだわりと意思決定の遅さ、、、

そういえば、最近実施したOBOG会。
私も幹事の一角に入れさせてもらったのだが、
他の幹事はまだ現役。グループ売上3兆円の大企業。
会の実施へのこだわりがすごかった。
なかなか決まらなかった。
おかげでいい会が実施できたが、なお「あれはこうすべきだった」
と反省していた。
こだわり、、
私がいい加減なのだろうが、
この新書を読んで、なるほど、という感があった。

失われた30年にいてなお高度成長、バブル時代から
変わろうとしない日本。
いや、むしろ今の政府自民党は保守、右翼という名のもと、
変化することに抵抗しているように見える。

堕ちるところまで堕ちるしかないのか、、、

 


第1章 売ってもらえない国、日本
(半導体を売ってもらえない;
木材を売ってもらえない;
貿易船に寄ってもらえない;
LNG(液化天然ガス)を売ってもらえない
食料を売ってもらえない
労働力を売ってもらえない)

第2章 日本はなぜ「売ってもらえない」国になったのか
    ―買い負けニッポンの印象的なエピソード
(上部構造:日本産業の没落;
下部構造:多層構造;
下部構造:品質追求;
下部構造:全員参加主義・全員納得主義)

第3章 日本が「売ってもらえない」国になるまでの歴史的系譜

第4章 「売ってもらえない国」から脱出するための12の提言 。