今は花粉症対策でマスクをする人があちこちで見られるが、
コロナ禍の、全員必須、しなければ国賊、というような緊張感はなくなった。
あ、病院だけは相変わらず必須だが。

2020年2月に始まり、2023年5月の5類移行に終わったコロナ禍で
「専門家会議」の会長だった尾身茂氏が、その3年の活動をまとめた本。

基本は記録。
正体不明の新型ウィルス、志村けん、岡江久美子の死で一気に緊張感が高まり、
当時の安倍首相以下政府の迷走が思い出される。
学校の全国一斉臨時休業、緊急事態宣言、アベノマスク、三密、無観客東京オリパラ、、

未知のウイルスに対する試行錯誤は当然ではある。
専門家といっても、未知なものは未知。未来予測はできない。
打つ手が外れることは当然ある。
それでも必死にデータをもとに統計的に科学的に分析し、提言をする。
しかし、、

偏差値優等生の官僚は、正解しか許せない。
世襲政治家は自分の頭で考えない。大局など見ない。
そんな連中に、専門家が提案をしても、
暖簾に腕押しだった様子がこの本からは見て取れる。

その後、統一教会とキックバックが明らかになり、
世襲以外の自民の政治家は自分の当選のことしか考えていないことがばれてしまった。
そして一方世襲議員はやはり考えてない。
そんな連中の施策がまともであるはずがないのだ。
予算を組むなどもってのほか。当時は五輪、今は万博、そして軍備に金を使い、
献金してくれる財界だけを潤すことしか考えられない。
三度の食事も満足にとれない子供を救おうとはしない。
出生75万人、婚姻50万人も当然だ。

それでも民主主義しかない。独裁政治はだめだ。
チャーチルの
「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば」
には納得せざるを得ない。ロシアや中国を見ていると。

であれば、下手を打った政権に退いてもらう、それしかないのだ。
あとはあとだ。

そして結局自分のことは自分で守る。自分で考えなくてはいけない。

任せてブーたれてはいけない。引き受けて考えるのだ!(BY宮台真司)

 

第1部 パンデミックと専門家
 第1章 葛藤の始まり
 (1―1)武漢の第一報、そのとき何を考えたか?
 (1―2)ルビコン川を渡る
 第2章 専門家とは?
 (2―1)正解のない中での勉強会
 (2―2)私を含むメンバー同士の衝突
 (2―3)私の風変わりな経歴と与えられた役割
 (2―4)役割の異なる専門家組織
 (2―5)専門家集団が直面した壁
 第3章 専門家の最も重要な役割
 (3―1)なぜ100を超える提言を出すことになったのか
 (3―2)政府の諮問にどのような心構えで臨んだか
 (3―3)“エビデンス”を得る困難さの中で

第2部 提言の裏にあった葛藤
 第1章 試行錯誤
 第2章 長期戦の覚悟
 第3章 緊急事態宣言の発出を避けたい。しかし……
 第4章 史上初の無観客五輪を提言
 第5章 八方ふさがり
 第6章 これまでと全く異なるオミクロン株の出現
 第7章 日常に戻す議論
 第8章 異なる景色
 第9章 日本はエンデミック化に向かうか

第3部 新型コロナが投げかけた問い
 第1章 未知の感染症ゆえの苦労
 (1-1)したたかな感染症
 (1-2)なぜクラスター対策?
 (1-3)専門家は検査を抑制しようとしたのか
 (1-4)なぜ医療の逼迫が頻繁に起こったか
 第2章 政府との関係における難しさ
 (2-1)政府とどんな交渉をしたのか
 囲み 諸外国の専門家組織について
 (2-2)提言に対する政府の6つの対応パターン
 (2-3)各政権期における提言の採否
 第3章 誰が市民に伝えるのか
 (3-1)専門家が「前のめり」に見えた理由
 (3-2)新型コロナ対策におけるリスコミの難しさ
 (3-3)専門家が「前のめり」になったために起きた問題
 第4章 葛藤の果てに
 (4-1)皆が大変な思いをした
  囲み 諸外国との累積死亡者数の比較
 (4-2)社会は許容できる死亡者数を決められるか
 (4-3)パンデミックが引き起こした「分断」
 (4-4)葛藤のもう一つの意味
 (4-5)感染症危機に強い社会へ

付表1:専門家助言組織や勉強会に参加した専門家リスト
付表2:新型コロナ対策分科会やアドバイザリーボードなどに出した主な提言、および、基本的対処方針分科会などにおける様々な意見の概要
提言に根拠はあったのか
グラフ:日本の新型コロナ感染者数、死亡者数の推移