いきなり事件の現場の描写から始まったときは、
一体これは何の小説なのか、私はこれから何を読もうとしているのか、
不安になった。
表紙には若い女性の顔と、不思議なタイトル。
なぜこれを読もうとしたのかは全く思い出せない。

拉致された婚約者を探す40歳絡みのイケてる中小企業社長が最初は主人公。
ストーカーに遭ったという連絡を残して35歳の婚約者は消えてしまった。
スマホも通じない。
手掛かりを追って彼女の実家のある前橋に向かう。
お母さんの話を聴く。
・・・ここでひとつわかった。
この物語の主人公は実はお母さんだと。
娘を支配する母親だと。
狭い常識の中で、自分の現状を肯定し、娘は何もできないと思い込み、
なんでも決めてしまう。進学も、就職も、見合い相手も。
その結果が主体性のない、自立、自律できない娘になったと。
自分の身近な人間にもそれが当てはまる、と直感した。
その人間にこの本を読ませるべきではないのかと。

結婚紹介所の女性、失踪した娘の姉、元同僚、見合いの相手、
関係者の話を聴き、少しずつ、今まで知らなかったその女性の姿が見えてくる。
自己評価は低いのに、自己愛が強い。プライドも高い。
見下す相手には傲慢に見下す。見合い相手もそれで断る。

彼の既婚女友達から「あの娘のストーカーは嘘」「偶然会って本人に確認した」
と明かされ、愕然となる。
しかし彼は自身に結婚に対する甘い考えがあったことを悟り、
はじめて結婚相手として彼女に向き合うようになる。

後半の主役は彼女。
ストーカーは嘘。
それが彼の女友達にばれた。
しかも彼が自分を70点と言っていたことを知った。酷い!もう会えない。
まず親元に戻ろうとしたが、それでは何にもならないことに思い至る。
断った見合い相手が東北のボランティアをしたと話をしていたのを思い出し、
行ってみる。見合い相手が幸せな結婚をしているのを見かけ、どこか心に残っていた。
行った先で様々な事情を持つ人に触れあい、心が開けていく。
スマホの電源は落としていたが、たまたまインスタをやっていた話になり、
見たところ、彼のメッセージを見つける。
探してくれていた、待っていてくれていた。
会うことになった。改めてプロポーズされた。
予約していた結婚式場、キャンセルしてといった。
・・・

途中でハッピーエンドになるのだろうなと気づいた。
それが最後、のちょっと手前でキャンセル!?
一人で生きていくことにしたのか??
と思ったら、納まるところに納まった。
彼女は東北で成長したのだ。

それにしても、
世間知らずの親に育てられれば子供も世間知らずになる。
親に従い続ければ。
どこかで親から巣立たなくてはいけない。
昔と違って今の親は元気だし暇だから、
いつまでたっても親のつもりでいる。それができる。
そこから抜け出さなくてはいけないのだ。

やはり身近な人間に読ませよう。