ドローダウン、つまり大気中の温室効果ガスがピークに達し、減少に転じる時点

 

だそうな。

コロナ禍で一時的にスローダウンしたが、地球温暖化はもう不可逆では、

と絶望的な気持ちになる我々人類のふるまい。

しかしこの本は、そんなことはない、人類の叡智でその方向を逆転できる、と、

カラー写真を織り交ぜながら具体的な方法を提示してくれている。

 

これを読むと、ジェットタオル使用再開、なんて言っている場合ではないと思う。

 

Noteに序文が載っている

序文公開:『ドローダウンー地球温暖化を逆転する100の方法』(期間限定)|ドローダウン・ジャパン・コンソーシアム|note

ご興味があればぜひ

 

 

はじまり
ORIGINS
 

プロジェクト・ドローダウンの誕生は、恐れではなく、好奇心からでした。

2001年、私は気候分野や環境分野の専門家たちにこう尋ねました。

「地球温暖化を食い止め、逆転させるために何をするべきか、わかっているのですか? 」

私はてっきり“買い物リスト”をもらえると思っていました。
私が知りたかったのは、すぐにでも実行に移せる最も効果的な解決策、それが普及した場合のインパクトでした。その解決策の実行に必要な費用も知りたいと思いました。
返ってきたのは「そんなリストは存在しない」という答えばかりでした。
同時に、あったらすばらしいチェックリストになるだろうと異口同音に言われました。そしてそのリストを作成するのは自分の専門外だ、という声もありました。

それから数年が経ち、私は尋ねて回るのをやめました。私自身もこの問題の専門家ではないからです。

やがて2013年がやって来ました。高い危機感を抱かせる論文がいくつか発表され、思いもよらないことが囁かれはじめました。

ゲームオーバーだ。

いや、本当にそうでしょうか? 
まだ何とかなるのではないか?本当はどの地点にいるのか?

私がプロジェクト・ドローダウンの結成を決めたのはその時でした。

ドローダウンとは、温室効果ガスがピークに達して、年々減少しはじめる時点のことです。私はこのプロジェクトの目標を、確実な100の解決策を特定、評価、モデル化して、ゲームオーバーまでの30年でどれだけのことを達成できそうか明確にすることに定めました。

 本書のサブタイトル『地球温暖化を逆転させるための、史上最も包括的な行動プラン』は、少々おこがましく聞こえるかもしれません。ですが事実、温暖化を逆転させる詳細な計画は未だ提案されていませんでした。
だからこそ私たちはその表現を選びました。

炭素排出のペースを抑えたり、上限を設けたり、止めたりする方法の合意や提案はあり、世界の気温上昇を摂氏2度未満に抑えるという国際的な公約(パリ協定)もあります。

地球に決定的な文明の危機が迫っていることを認め、195カ国が一致協力して異例の前進を遂げ、各国の行動計画を作成しました。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、人類史上最も意義ある科学的調査を完了し、今も科学的知見を磨き、研究を拡大し、想像できるかぎり最も複雑なシステムの1つ、地球温暖化をさらに理解しようと努めています。

しかし、温暖化ガス排出を遅らせる、止めるという以外のロードマップは今のところありません。

誤解のないようにお伝えすると、私たちがプロジェクトの計画を立てたわけではありません。私たちには、その力も、自ら決める権限もありません。調査を進める過程で、私たちはプランを見つけたのです。
人類の集合知として世界にすでに存在している青写真を見つけたのです

すでに一般的に利用されていて、経済的にも実現性があり、科学的にも妥当な方法、技術を提示しただけなのです。
それらは、世界中の農家やコミュニティ、都市、企業、政府が、この惑星を、そこに住む人々を、そして自分たちの住む土地を気にかけていることの証明でした。
世界中の熱意ある人々が並はずれたことをしているのです。

本書はそんな人々の物語です。

 プロジェクト・ドローダウンを信頼できるものにするために、研究者と科学者のグループの協力が必要でした。予算はちっぽけなのに野心にあふれる私たちは、世界中の学生や学者に研究員にならないかと呼びかけました。科学・公共政策の分野のとびきり優秀な男女からの反応が殺到しました。
現在、ドローダウン・フェローは22カ国の70人で構成されています。40%は女性、半数近くが博士号取得者、それ以外の人たちも少なくとも1つは高度な学位を持っています。フェローたちは、世界屈指の権威ある機関で幅広い学術的・専門的経験を積んでいます。

 私たちは一緒に気候変動の解決策を集めリスト化し、炭素排出を削減する、もしくは大気中の炭素を隔離する効果・可能性が非常に高いものを選別しました。

次に、文献レビューを集め、各解決策の詳細な気候モデルと経済モデルを考えました。さらにこうした分析の結果を外部の専門家がインプット、ソース、そして
計算の各項目にわたって評価するなど、3段階の精査プロセスを持って検証しました。

私たちは120人から成る諮問委員会を作りました。地質学者、エンジニア、農学者、政治家、ライター、気候学者、生物学者、植物学者、エコノミスト、金融アナリスト、建築家、活動家など、卓越したメンバーの多様なコミュニティを形成して、本書の文章を評価・検証してもらいました。

 本書でまとめられ、分析された解決策のほぼすべては、再生力のある経済的成果につながり、安全、雇用、健康の改善、金銭の節約、移動性の向上、飢餓の撲滅、汚染防止、土壌の回復、川の浄化などをもたらします。

それらは確実な解決策ですが、だからといってすべてがベストの解決策というわけではありません。

本書には、少数ながら、その波及効果が明らかに人間と地球の健康に不利益な項目があり、それについては明記するようにしています。
しかし、圧倒的大多数は後悔しない解決策で、最終的に炭素排出や気候に与える影響を脇に置いておいたとしても、私たちがぜひ達成したい取り組みになっています。というのは、どの解決策もさまざまな意味で社会や環境に利益をもたらす方法だからです。

 『ドローダウン』本編の最後のセクションは「今後注目の解決策」というタイトルで、出現しかけている、あるいは実現の日が近い20の解決策を紹介しています。うまくいくものもあれば、失敗するものもあるでしょう。それでも、この20の解決策は、気候変動を解決しようと打ち込む人々が注いできた独創性や情熱の証明です。

本書中には、著名なジャーナリストやライター、そして科学者たちによるエッセイのページもあり、個々の解決策の文脈に豊さと多彩な背景を添えています

私たちは”学習する組織”でありつづけます。私たちの役割は、情報を収集し、それを役に立つ方法で整理して、あらゆる人に配布し、本書やウェブサイトdrawdown.orgの情報を誰でも追加、修正、訂正、補足できる手段を提供することです。専門的なレポートと拡大モデルの結果はそこで閲覧できます。30年間を予測するモデルは、推測の域を出ないものになるでしょう。

しかし、私たちは数字が概ね正しいと信じており、読者のコメントや意見を歓迎します。

 干ばつ、海面上昇、容赦ない気温上昇から難民危機の拡大、紛争、混乱まで、間違いなく、自然や社会のあちこちで遭難信号が点滅しています。

しかし、それは全体像の一部にすぎません。

信念に忠実に、断固として対応に当たっている人がたくさんいることを、私たちは『ドローダウン』で示そうとしてきました。

化石燃料の燃焼と土地利用に由来する二酸化炭素排出は、そうした対応策より2世紀早く始まっていますが、私たちはそれに賭けようと思います。
今日私たちが経験している温室効果ガスの蓄積は、人間の理解がない中で起こりました。私たちの先祖は、自ら与えていた損害について悪意がありませんでした。

だからこそ、地球温暖化は私たちに起きていること、私たちは先人の行動によって定められた運命の犠牲者なのだとつい思いたくなります。

わずかに言い方を変えて、地球温暖化は私たちのために起きていると考えてみたら、つまり、大気の異変は私たちが何をつくり、どう行動するか、すべてを変えなさい、再考しなさいというメッセージなのだと考えてみたら、全く違う世界に住み始められるのではないでしょうか。

私たちは100%の責任を引き受け、誰かを責めるのをやめます。
私たちは地球温暖化を避けがたいことと見ていません。
私たちが建設的になり、革新し、変化を起こすための機会であり、創造性、思いやり、才能を目覚めさせる道への招きだと見ています。
これは、リベラル派のアジェンダでも、保守派のアジェンダでもありません。

人類のアジェンダなのです。

――ポール・ホーケン

 

 

第1章 エネルギー
第2章 食
第3章 女性と女児(女性問題を扱った章です)
第4章 建物と都市
第5章 土地利用
第6章 輸送
第7章 資材(マテリアル一般を扱った章です)
第8章 今後注目の解決策(技術的に発展段階の20の方法を紹介)