えっちゃんは東北出身で、訛りがあったけど、その訛りが可愛くて
いつも皆なの人気者だった。
メガネをかけていて、長身で見た目はインテリ風だったけど、
することは結構、はちゃめちゃだった。
部屋の中にロープを渡して、洗濯物を干したり、脱いだ服を掛けたり
して、部屋の先輩や、寮母さんによく怒られていたけど、えっちゃんは
「これが、生活ってもんだべ」
とあっけらかんとしていた。
そんな、えっちゃんがとても大切にしている物があった。
それは・・・布団・・・。
就職する時に、親が買ってくれた物だからと・・・。
私達が、えっちゃんの部屋に遊びに行ってその布団に乗ったり、座っ
たりしようもんなら、もう爆発したみたいな勢いで怒ってきた。
金襴緞子の花嫁衣装のように綺麗なその布団は、えっちゃんが就職
する時、唯一、親が買ってくれた物だという。
「普通じゃないの」って思ったけど、そうじゃなかった。
「金も無いのに無理して買ってくれたのさ」
ポツンと短く言ったえっちゃんの言葉を聞いてからもう誰も、えっちゃん
の布団に座ることはしなくなった。
えっちゃんは、「ウチはほーんと貧乏なのさ」・・と言いながら、給料の
ほとんどを、仕送りしていた。
ともは、4人の中では一番目立たない存在だったけど、彼氏が出来た
のは、ともが最初だった。
ともは、日焼けしていて活発なイメージの子だった。
さっぱりとした性格で、何事もテキパキと決めていった。
付き合おう・・・って言われて。 いいよ・・・って答えたのだという。
結婚するわけじゃないから、いいじゃん・・・っていうのが、ともの考え方
らしい。
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一年ほどして、私はこの会社を辞めたが、親の腕の中から飛び立って
はじめて出会った、 知らない他人 ・・・・・・・・・・・・。
皆な、みんな、元気でいるのかな?
えっちゃん、とも、美鈴・・・・・・私達、もう還暦だよ・・・・・・・・・・・・・・・。