追想・・Ⅲ | ばあちゃんの福袋

ばあちゃんの福袋

ボケ防止のため はじめたブログです。
 なるべく更新できるように 頑張ります。

美鈴は、今から思えば少し謎めいたところがある少女だった。


私達が、「母ちゃんが・・・」とか、「田舎で・・・」とかいう話をしても、

いつも美鈴は聞き役で、自分の事は何も話さなかった。


入社した時からもう美鈴は、化粧をしていた。

大きな瞳に長いまつげ、色白の肌に赤い口紅がよく映えていた。

洋風な顔立ちで、髪の毛も茶色っぽくて、4人の中でも一番垢ぬけて

見えた。


そんな美鈴が、ある日仕事から帰ってくるなり、トイレに駆け込み

泣いていた。


私達の仕事というのは、営業マン達が、新規開店したスーパーや、店

に自社のパンを売り込んだ時とか、また既存のお得意様の売り出し

の日とかに、パンの宣伝をしたり、売り出しの手伝いをしたりする仕事

だった。

売り出しの日が決まると、担当の営業マンと一緒にその店なり、スー

パーなりに行って、パンを売ったり、新製品の説明をしたり、また、

宣伝カーに乗って、マイクで宣伝したりもした。


その日、美鈴が同行したのは、定年を間近に控えた営業マンで、

喫茶店やラブホテルを経営してる、という噂がある見かけもリッチな

人だった。


美鈴の様子がおかしい事に気付いた私達は、美鈴の後を追い、トイレ

に行った。

シクシクと泣いていた美鈴は、「どぉしたん?」と聞いた私達の顔を見た

とたん、声をあげて わぁーわぁーと泣きじゃくった。


「口臭がするって言われた」


しばらくして、美鈴が泣きじゃくりながら、打ち明けてくれた。


その営業マンは、渋くて、上品で、紳士的だといつも美鈴は言っていた

し、その人も売り出しの時はよく美鈴を連れて行ってたから、私達は

ほんとにびっくりした。


「そんな事言われたん」

「許せーへん」

「文句言うてきたる」


「まみは美鈴の側におったって」


そう言って、ともとえっちゃんはその人のところに文句を言いに行った。

10分か15分経ったろうか、その間もずっと美鈴は泣き続けていた。


ともとえっちゃんが、引き返してきた。

笑っていた。


えっちゃんが、笑いながら言った。


「あんた、勘違いだべさぁ」


「?・・・?・・・」


ともも、笑いながら言った。


「口臭じゃなくて、香臭なんだとさ」


あれまぁ・・・


そう言われれば、美鈴が通ったあとはふんわりとしたいい匂いがする

わー。


泣き顔が笑顔に変わった。


トイレでしばらく4人共、笑いが止まらなかった。


その後、美鈴とその人の不倫の噂が流れたが、私達は気にせず、

いつも変わらず、4人 仲良しのままだった。


4人でいると、えっちゃんとともは、行動派、美鈴と私はどっちかと言う

おっとり系だった。


勘違いだべさぁー と言った、えっちゃんは東北出身で、仕事の時は

結構普通に話すのに、4人でいる時は訛りまる出しで、いつも皆を

笑わせてくれた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく・・・・・・・・・・。