龍岡フーズの令嬢と言われている龍岡富士は、六歳上の双子の兄と姉、六歳下の双子の弟と妹の真ん中に挟まれて育つ。
双子に囲まれながら、全く意見の合わない双子同士のなだめ役、まとめ役として親からは使命感の存在扱いされていた
自分一人の場所を求めて、一人で隠れ場所をみつけながら
自分自身を保って生きてきた。
大学卒業直後に、婚約者も就職先も住む場所さえなくなった時
出会ったのは、社会のはみ出し者が集う小さな劇場だった。
劇場の仲間入りした時は、
昨日知り合って今日には、もう引っ越ししてきていて
壊れかかっているシェアハウスだったり、
癖のある人達ばかりで
どんだけお嬢様なのか、怖い者知らずなのかと
危なかっしすぎて、ヒヤヒヤしました。
一人一人がメチャクチャな会話と行動でも
芝居にかける気持ちだけは、本物だなぁと
だんだんと劇団の本質が掴めてきて、
富士が一瞬で心が奪われてしまった真意がなんとなく分かったように感じました。
劇団の窮地に陥った時に、
双子に挟まれて何度も取りなしてきた、経験からくる
富士なりの対処方法があり、兄弟に翻弄されながら育つのも悪いことばかりではないなぁと、感じさせられました。
観客や応援してくれるスタッフの心に、本気度100%の芝居が熱く伝わっていて
読んでいるだけでも
芝居のドツボにはまってしまった一人になった気がしました。