尾崎雅比古の母親は、東北で津波から家がなくなり、原発事故も重なり、避難生活を強いられていた

その後、病気で亡くなる

東京で一人暮らしをしていた雅比古は、家族は母親だけなのに、全く親孝行をしなかったことに

後悔が先にたち、自分に苛立っていた。



原発を引き起こした原因が東電にあると思い込んでストに参加する


そこにいた二人と連れになり

三人で原爆の責任者である東電の社長の謝罪を目的にして拉致を計画し、実行する

偶然にも死に追いやってしまう。


自首をする前に

母親が大事にしていた羆の木彫りの置き物が気になり

木彫りの出所のルーツを辿る為に

北海道にある木彫り作家でアイヌ人の平野敬蔵と中学三年生の孫娘、悠の所に行き

弟子入りをする


北海道の大地を背景に

敬蔵師匠の生き様を通して

成長する若者達がこれからの未来をどう生きて行くべきかという

心温まる内容です。






最初、木彫り作家の敬蔵さんの気難しさと頑固な性格が強くて

雅比古が途中で挫折しないかなぁとか心配になったり


孫の悠がお爺さんを嫌う理由として、アイヌという血筋の為に学校でいじめを受けていることが分かり

同情をする気持ちが先にたち辛くなりました。



敬蔵の頑固さはアイヌの生き方そのもので

山に生きる動物達、神(カムイ)と呼ばれている羆達の尊さを分かった上での行動があり

よく理解できました。



雅比古は敬蔵の振る舞いや生活習慣を見ているうちに

誠実、照れからくる頑固さ、孫娘を一番に考えて自分を殺して生活している様子から

アイヌ人としての誇りを持ち続ける信念からなんだなと、

なんとなく受け止めるようになり


今度は、悠にアイヌの良さをさりげなく北海道の自然の素晴らしさを通して伝えて行く行動を起こす。


悠は、少しずつ毛嫌いしていたアイヌ人という自分の身体に流れている血筋を憎む気持ちに変化があり



最後の方の内容は、東電の社長殺しの仲間の行動もヒヤヒヤしましたが


何事にも「許す」、「感謝」、「祈る」という気持ちの大事さが伝わってきます。


雅比古、敬蔵、悠の3人の絆がとても温かくて、

涙腺が緩みぱなしでした。



アイヌの生き様を思わせる

「キムカイン」山の神羆、エゾジシカ、キタキツネ、フクロウ

動物の生息域に足を踏み入れた後の

覚悟や尊さのような気持ちが偉大すぎて、

知らないことばかりで勉強になりました。


北海道の屈斜湖の日の出や霧の摩周湖の絶景が頭に残り、まだ一度も行ったことがないのに

読んでいるだけで自然の素晴らしさが伝わってきます。