車椅子 de 推し活③ 〜ひとり旅編〜 | めもり*ブログ

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ライター・きたのまゆみのブログです。
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大阪駅でハイジ(車椅子を押してくれていた友人)と別れ、いざホテルへ。

Googleマップによれば徒歩11分、平地だというので、タクシーは使わず車椅子で向かうことにした。

 

▼広島出発〜ハイジとバイバイするまでは、こちら▼

 

 

出発してすぐ気づいたのは、歩道には、左右(道路側と建物側)が低くなった「かまぼこ状」の傾斜があること。徒歩や自転車では気づかない程度のわずかな落差なんだけど、これが車椅子にはツラい。

前後の傾斜も怖いけど、横の傾斜がここまで負担だとは。両手均等に漕いでいるつもりでも、右に左に車体が振られてしまうから、腕の力も必要になるし休めないし、とにかくストレスフル。

 

ナビを見るため膝に乗せていたスマホが振動で地面に落ち、「うわっ、届かない」と困っていたら、ちょっと離れたところを歩いていた会社員風の男性が「拾いますよ!大丈夫、そのままで!!」と小走りに寄ってきてくれた。そんな親切に励まされて、またちょっと頑張れる気がする。

 

その少し先では、傾斜がつらいよー腕が疲れたよーと半泣きになりながら超スローペースで進んでいると、チラチラこちらを振り返っていた男性が、意を決したように近づいてきて「Push you?」。大きな交差点を渡りきるところまで押していただきながら聞けば香港からの旅行者で、京都に7日間滞在したあと今日・明日の2日間は大阪に滞在予定だという。「電動車椅子にした方がいいよ」とのアドバイスをいただき、「Have a good trip!」とお互いの楽しい旅を祈って別れた。

 

一難去ってまた一難。

香港紳士と別れた後、突如現れたとんでもない激坂を上って下りて、涙目になりながらも「これでもう坂道マスターだぜ」と強がっていると、今度は行き止まりに遭遇…。おい、Googleマップ(怒)

仕方ないのでぐるーーーっと回り道をして、コンビニ経由でホテルへ。

 

▼青丸+白矢印の場所から撮った、「梅田料金所」の文字あたりの眺め。徒歩なら通れるかもしれないけど、それでもその先の歩道はない

 

コンビニ手前には夕方降っていた雨で濡れたマンホールがあり、うっかり乗ってしまったら滑ってタイヤが空転。なるほど…こりゃ避けなきゃいけなかった案件か…。

F-1とかは雨用タイヤとかあるけど、車椅子にはないよね。きっと。あったらいいのになぁ。

 

元気な右足で地面をチョコチョコ蹴りながらマンホールを切り抜け、たどり着いたコンビニは広島駅で入った店とは違って、狭い!

まずは入り口の段差に引っかかって入店できずにいたら、通りすがりの学生風な若者が「押しましょうか」と店内に入れてくれた。狭い店内を90度旋回しながら進むと、通路のあちこちに「おすすめ商品」的な小さいラックがいくつもあって、その度に引っかかる。先ほどの学生さん(たぶん)が「邪魔ですよねぇ。どけますね」とラックをずらしてくれたりして、めちゃくちゃ助かったけど、欲しかった商品を探す気は失せて、お茶だけ買って退散…。コンビニは行ける🎵と思ってたけど、店によるんだな…。

 

ホテルは、車椅子を置くスペースさえあればいいから…と思い、事前に車椅子での来館について連絡をしていなかった。到着すると、フロントの方はまったく動じることなく笑顔で迎えてくれ、「そちらへ参りましょうか」と、ロビーで車椅子のままの対応を打診してくれた。たしかに、ホテルのフロントデスクって高いもんね。

チェックアウト時には「初めての車椅子旅なんです♡」と記念写真をお願いし、「お気をつけて。またお待ちしております」と最高の笑顔もいただいた。お世話になりました。

▲ホテルロビーにて。上着の袖を捲っているのは、袖口がタイヤに擦って鬱陶しいから

 

さて、大阪に来たら行きたいと思っていたのは、①鶴橋 ②イェソン氏が訪れた喫茶店、珈琲工房URAさん。このURAさんは、店主さんがインスタグラムでイェソン氏やそのファンとの触れ合いについて発信されていて、とても素敵な方だなと感じていたので、お店にも店主さんにも惹かれて行ってみたいと思っていた。

 

お店オープンが11時?11時半??ということなので、朝早めに鶴橋に行って、帰りにURAさんへ寄らせてもらうプランがベストかな。と思ったけれど、ラッシュアワーの電車に車椅子で乗る勇気がなく、チェックアウト時間の10時までホテルに滞在してから出発。

駅まで徒歩7分(Googleマップ調べ)の道のりでは、再び歩道の横傾斜に苦しめられ、昨夜の奮闘(主に激坂)で擦れて痛み出した手のひらをじっと見たりしながら、朝からぐったり…。

 

▼ホテル近くの歩道では、落ち葉掃除中。どこを通れば…?と一時停止した。

(結果的に木の左側は空いていて、自転車の人たちと道を譲り合いながら通った)

▼道端に咲く花と距離が近いのは、車椅子のメリット

▼持ってきてよかった、滑らない軍手

 

すると背後から「押しましょか?どこまで行かはります?」という関西弁が聞こえた。

別れ際までその姿はよく見えなかったけど、スーツにトレンチコート、革の黒バッグだったので、営業マンなのかな。アホの坂田似の、笑顔が優しいおっちゃんだった。

駅まで車椅子を押してもらいながら「せっかく大阪に来たから鶴橋に行きたい」という話をしたら、鶴橋は自分が若い頃はガラの悪いあまり寄りつきたくない場所だったが最近は韓国のスターの店がたくさんできたりして若い人が多い、といった話を教えてくれ、わざわざ駅員さんに「車椅子の方がいらっしゃるんで、サポートお願いします。大阪初めて来られて(そこはちょっと誤解だけどw)鶴橋に行かれたいそうなので」と伝えてくれた。おっちゃん、ほんまにありがとう…

 

駅員さんも優しくて、ちょいちょい会話しながら一緒に電車を待って、スロープで乗車をサポートしてくれた。鶴橋に着くと、そこでもちゃんと駅員さんがスロープを用意して待っていてくれた。

 

来れた…鶴橋。なんかちょっと感慨深い。

水曜日定休の店が多いようで、半分以上の店のシャッターが閉まっている。そのせいか観光客も少なく、ちょっと寂しい雰囲気ではあるけど、車椅子の私にとっては通りやすくてラッキーだった。

 

 

すでに肩〜腕がバキバキのため、まぁまぁ駅から離れているコリアンタウンまで行くのは諦め、商店街でごはんを食べて、安いパックを大量仕入れ(←鶴橋での主目的)することにした。

ごはん屋さんがたくさん並び、コスメショップとかもあるお気に入りのエリアは、わりと駅からすぐだと思っていたけど意外と遠くてびっくり。こんなに遠かったっけ…

 

▼コスメショップ入口の段差がエグかった…前夜のコンビニもそうだったけど、車椅子に限って言えば、マットで段差の越えづらさはまったく解決されない(店を出る時は店員さんが手伝ってくれた。ありがとう♡)

 

ようやく到着したものの、以前来た時(日曜日)と違って閑散として客引きのおばちゃんも少ない。いても、私には声をかけてくれない。シビアやな…。

そんな中、「美味しいごはんたくさんあるよ。車椅子も大丈夫」と声をかけてくれるおばちゃんがいたので、即決。おばちゃんおすすめの、今の時期限定だというどじょうスープに初めて挑戦して大満足。来てよかった。

 

 

再びGoogleマップで調べたところ、フツーに行けば13時頃には到着できるとのことだったから、車椅子で時間がかかっても13時半頃には着けるかな、とURAさんを目指すことに。

 

▲ガラスに映る、お隣のちびっこの「なんで大人なのにベビーカー乗ってんの」的な視線が痛かった(笑)

 

JR福島駅を降り、URAさんまで徒歩7分(Googleマップ調べ)の道のりが、まぁ大変だった。歩道の横傾斜がキツいのと、角では横断歩道へ降りる傾斜が二方向についていて、前に進もうと車体をまっすぐそちらへ向けても、なぜか左に引っ張られるのだ。これがめちゃくちゃ怖い。

進む方向は車が来ていないことを確認しているけど、想定外の方向へ加速しながら進んでしまうから、そっちは車やバイクが通っていてヒヤッとした。

左膝はまだ60〜70度しか曲がらず、ちょっと前に出ているから、前下がりで車道に突っ込みそうになった時、とっさに踏ん張ってしまうのは、痛めている左足。その度に「痛っっ!!」てなるし、心身ともに疲労困憊して「もう諦めて帰ろうかな…」と何度も思った。

 

▲タイヤが直角になるよう気をつけて線路を渡る。この先では、自分もちょっと足を引きずるように歩いているのに「大丈夫ですか。押しましょうか」と声をかけてくれた人がいた。痛みを知る人は他者にも優しいのかもしれない。

▲歩道の角は2方向に傾斜がついていて、超怖かった

 

でもなんかそれだと負けな気がして(一体何と戦っているんだw)、「次の角まで行こう」「あと2分(Googleマップ調べ)なら行けるでしょ」と、ちょいちょい休憩を挟みながら進んだ。「あと2分」の位置で、すでに時計は14時を回っていた。

 

そんな時、背後から女性の声。

 

「すみません…」

 

あ、狭い歩道だから邪魔なのかな、と脇に車椅子を寄せようとしつつ「あ、すみません」と振り返ると、「もしかしてイェソンさんの…カフェに行かれます?よかったら、私も行くので押しましょうか」。

帽子につけていたツアーグッズのピンバッヂを見て、イェペン(イェソン氏のファン。韓国語でファン=ペン)だと気付いたという。

 

奇跡とは、こういうことを言うのか。

まさかここでイェペンさんに出会うとは思わなかったし、声をかけていただけるとは。素通りしたってバチは当たらないのに、わざわざ声をかけてくれるこの優しさよ。

 

お店も、車椅子対応かどうかわからなかったので、入れなければコーヒー豆だけ買って帰ろうと思っていたのに、連れて行ってくれたYoshimiさんと店主さんご夫妻が入り口の段差を越えるのを手伝ってくれて、「2度目に来店されたとき座られた席がこちらです。イェソンさんが見たのと同じ景色をお楽しみください」と最高の席へ案内してくれた。

Yoshimiさんも「私はまた来れるから、どうぞ」と譲ってくださり…なんてみんな優しいんだ。

 

▲イェソン氏ソロコンサートの日程に合わせて、イェペンとELF(スーパージュニアのファン)のためにお店をオープンさせてくれた優しい店主さん

▲イェソン氏が座った席(に乗りつけた車椅子)で、同じ景色を見る幸せ

▲イェソン氏が座ったという椅子には、帽子を座らせて(?)みた

▲イェソン氏も頼んだというアイスコーヒー。深みのある味で、美味しかった!

 

さっき会ったばかりなのに、共通の推しを持つ身、話題が途切れることはなく楽しくおしゃべりできた。居合わせた他のグループの方々ともソンムル交換をさせていただいたり、店主さんからイェソンさん来店時のお話も聞けたり…来てよかった……ほんまに。

Yoshimiさん、店主さんと一緒に写真を撮ってもらった

 

あまりにURAさんでの時間が楽しくて、予定よりだいぶ遅くなってしまったけど、気持ちはポカポカで帰りの新幹線へ。

車椅子席を予約していた便に間に合わないことはわかっていたので、事前に問い合わせたところ「自由席かコンコースでの乗車ならOK」とのことだった。駅へ行くと、駅員さんが車椅子の脇にしゃがんで「11号車(車椅子席がある)のコンコースが広いので、そちらでいかがでしょうか」と勧めてくれた。多目的トイレもあるし、そこでいいなら私も助かる。

そうさせてもらい(帰りはちゃんと改札からホームまでの案内とスロープのサポートに甘えた)、扉部分のくぼみにすっぽりハマって、なかなか快適な旅ができた。

車内販売のお姉さんに声をかけたときは「え、ここで?」みたいな反応ではあったけど、丁寧な接客でコーヒーを渡してくれた。

 

 

そんなこんなで、無事に(?)初めての車椅子旅はゴールに近づいてきた。

1人の時はもちろん、ハイジに押してもらっている間も、段差で引っかかっていたら手を差し伸べてくれる人が何人もいた。本当にたくさんの人の親切に触れて、世の中捨てたもんじゃないなと思ったし、この感謝を次は別の困っている誰かにつないで恩送りをしていきたいと強く思った。

 

 

ちょうど1年くらい前に始まった、私の推し活ライフ。

まさかのケガと車椅子利用で、今まで見えなかった、存在さえ気づいていなかった様々なちっちゃい障害、困難、手間?そんなものたちに気づかせてもらった今回の遠征だった。たくさんの親切や優しさ、愛もいただき、一方で、当然ながら無関心や他者の不便を顧みない自分勝手な振る舞いもちょいちょい目の当たりにした。

いろいろな気づきを得られたことからも、思い切って行ってよかったなと思う。

むちゃくちゃ疲れたし、ご面倒をおかけした皆さんには申し訳なかったけど…。

 

助けてくださった皆さんに、とんでもない幸運がわんさか舞い込みますように。

 

 

〜終わったと見せかけて、まだ続きます。次回は広島の道がマジでヤバかった話〜